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皆で
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「カメリア姉様!」
インファーナ司教を捕まえたのはカメリア姉様だった。
「おまたせ、リリー。この人、こそこそしていたから捕まえといたわよ」
「カメリア姉様、ナイスよ」
「やっぱり?もっと褒めて」
「もう、そんな場合じゃないでしょ」
ローズ姉様が、グルグル巻きになっているインファーナ司教の首根っこを捕まえて涼しい顔をして引きずってきた。
「とりあえずこの辺に括りつけておきましょうか」
そのまま石柱に括りつける。
「よし、これでいいわね」
捕らえられたインファーナ司教は、ローズ姉様に引きずられたせいなのか、もう逃げる気力もないようだ。
「さあ、三人揃ったところで、やりますか?」
「リリーはずっとここで戦っていたのでしょう。魔力は大丈夫?」
「ええ、このくらいでどうこうなる魔力ではないわ」
「そうね。カメリアはヘマしないでね」
「なんで私だけ?」
およそ緊張感のない会話をしていると、誰かが空の向こうを指差しながら叫んだ。
「ワイバーンの群れだ!」
皆で空を見上げると、帯びただしい数のワイバーンの群れがこちらに向かってくるのが見えた。瘴気を感じてやって来たのだろうか。
「流石にあの数はマズイわね」
ローズ姉様が呟く。
すぐそこまで迫ってきたワイバーンの群れに攻めあぐねていると、上空に咆哮が轟いた。先頭の何頭かのワイバーンが気絶して地上に落ちてきた。
「お父様達だわ!」
真上に竜騎士たちがやって来た。先頭を飛んでいるのはレジナルドとシュバルツだった。シュバルツは迷わずワイバーンの群れの中に飛び込み、口から炎を吐いた。シュバルツの炎に焼かれたワイバーンは骨すら残らず燃え尽き灰になる。
その後ろではお父様とジルヴァラがワイバーンを迎え撃つ。ジルヴァラは氷のブレスを吐いて一瞬のうちに数頭のワイバーンを凍らせた。完全に凍ったワイバーンが、地面に落ちきる前に他の竜がワイバーンごと氷を砕く。素晴らしい連携だ。
思わず見入ってしまっていた私に声が掛けられた。
「リリー、ここは俺たちに任せて行け!」
「あ、レジナルド、貴様ぁ。私が娘たちに一番に声を掛けようと思っていたのに、この野郎!私の天使たち。ここは任せて行っておいで」
相変わらずお父様とレジナルドは仲良しだ。
地上からも私たちを呼ぶ声がした。
「カメリア、ローズ、リリー。地上は私たちに任せて」
「ザック」
カメリア姉様が花開いたような笑みを浮かべた。
「リリー嬢?へえ、初めて見た。冒険者の格好も似合うな」
アーロン様だった。
「ちょっと!こっちにもいるんだけど?」
アーチー様たち魔術師団と、なんとオスカー殿下もいた。
「これでも剣術はその辺の騎士より強いからな。他の奴らばかりがカッコいい所を見せるなんて許せん」
華麗に魔物を切りながら走り抜けている。
「オスカー殿下。あまり飛ばし過ぎると、後で身体が動かなくなりますよ」
アーロン様が心配そうに剣を振るいながら殿下に言った。そう、アーロン様は純粋に心配しているのだ。嫌味でなんでもなく。それでもオスカー殿下はカチンときたらしい。
「アーロン、隊長クラスだからって上から言いやがって。俺はおまえより若いんだ。そんな簡単に動かなくなるわけないだろうが」
「若いって……でも、日頃動いていない殿下は」
「うるさいから。ホントマジで」
押し問答を繰り広げているが、魔物を切る手は止まらない。
「リリー嬢、見て見て。私の勇姿。あんな黒い奴なんかよりカッコいいでしょお」
こちらに手を振りながら風魔法で魔物を切り刻んでいるアーチー様。
「なにかしら?街は本当に大変な事になっているはずなのに……緊張感が皆無ね」
ローズ姉様が笑う。
「まあ、私たちもないしね」
カメリア姉様も笑う。
「とっとと片付けちゃおう」
私たちは森へと向かった。
インファーナ司教を捕まえたのはカメリア姉様だった。
「おまたせ、リリー。この人、こそこそしていたから捕まえといたわよ」
「カメリア姉様、ナイスよ」
「やっぱり?もっと褒めて」
「もう、そんな場合じゃないでしょ」
ローズ姉様が、グルグル巻きになっているインファーナ司教の首根っこを捕まえて涼しい顔をして引きずってきた。
「とりあえずこの辺に括りつけておきましょうか」
そのまま石柱に括りつける。
「よし、これでいいわね」
捕らえられたインファーナ司教は、ローズ姉様に引きずられたせいなのか、もう逃げる気力もないようだ。
「さあ、三人揃ったところで、やりますか?」
「リリーはずっとここで戦っていたのでしょう。魔力は大丈夫?」
「ええ、このくらいでどうこうなる魔力ではないわ」
「そうね。カメリアはヘマしないでね」
「なんで私だけ?」
およそ緊張感のない会話をしていると、誰かが空の向こうを指差しながら叫んだ。
「ワイバーンの群れだ!」
皆で空を見上げると、帯びただしい数のワイバーンの群れがこちらに向かってくるのが見えた。瘴気を感じてやって来たのだろうか。
「流石にあの数はマズイわね」
ローズ姉様が呟く。
すぐそこまで迫ってきたワイバーンの群れに攻めあぐねていると、上空に咆哮が轟いた。先頭の何頭かのワイバーンが気絶して地上に落ちてきた。
「お父様達だわ!」
真上に竜騎士たちがやって来た。先頭を飛んでいるのはレジナルドとシュバルツだった。シュバルツは迷わずワイバーンの群れの中に飛び込み、口から炎を吐いた。シュバルツの炎に焼かれたワイバーンは骨すら残らず燃え尽き灰になる。
その後ろではお父様とジルヴァラがワイバーンを迎え撃つ。ジルヴァラは氷のブレスを吐いて一瞬のうちに数頭のワイバーンを凍らせた。完全に凍ったワイバーンが、地面に落ちきる前に他の竜がワイバーンごと氷を砕く。素晴らしい連携だ。
思わず見入ってしまっていた私に声が掛けられた。
「リリー、ここは俺たちに任せて行け!」
「あ、レジナルド、貴様ぁ。私が娘たちに一番に声を掛けようと思っていたのに、この野郎!私の天使たち。ここは任せて行っておいで」
相変わらずお父様とレジナルドは仲良しだ。
地上からも私たちを呼ぶ声がした。
「カメリア、ローズ、リリー。地上は私たちに任せて」
「ザック」
カメリア姉様が花開いたような笑みを浮かべた。
「リリー嬢?へえ、初めて見た。冒険者の格好も似合うな」
アーロン様だった。
「ちょっと!こっちにもいるんだけど?」
アーチー様たち魔術師団と、なんとオスカー殿下もいた。
「これでも剣術はその辺の騎士より強いからな。他の奴らばかりがカッコいい所を見せるなんて許せん」
華麗に魔物を切りながら走り抜けている。
「オスカー殿下。あまり飛ばし過ぎると、後で身体が動かなくなりますよ」
アーロン様が心配そうに剣を振るいながら殿下に言った。そう、アーロン様は純粋に心配しているのだ。嫌味でなんでもなく。それでもオスカー殿下はカチンときたらしい。
「アーロン、隊長クラスだからって上から言いやがって。俺はおまえより若いんだ。そんな簡単に動かなくなるわけないだろうが」
「若いって……でも、日頃動いていない殿下は」
「うるさいから。ホントマジで」
押し問答を繰り広げているが、魔物を切る手は止まらない。
「リリー嬢、見て見て。私の勇姿。あんな黒い奴なんかよりカッコいいでしょお」
こちらに手を振りながら風魔法で魔物を切り刻んでいるアーチー様。
「なにかしら?街は本当に大変な事になっているはずなのに……緊張感が皆無ね」
ローズ姉様が笑う。
「まあ、私たちもないしね」
カメリア姉様も笑う。
「とっとと片付けちゃおう」
私たちは森へと向かった。
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