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殿下の色で
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「自分のものアピールが半端ないわね」
ドレス姿の私を見て苦笑するお母様。
白を基調としたドレスに、金糸をふんだんに使った刺繍が施されている。スカートの下の部分には金糸で作られたレースが縫い込まれておりキラキラしていた。しかも首元にはイエローダイヤの粒が連なったネックスレス。
もうどこから見てもアダルベルト殿下の色だ。
「小賢しい」
お父様はドレスが贈られた時からずっと不機嫌。
あれから2年経った。
アダルベルト殿下は学園の卒業と同時に王太子になった。マグラーニ公爵は、やっと国王様の素の姿に慣れたようで、お父様に叱られた後のフォローを買って出ているらしい。
トンマーゾは、目を見張るほどの成長を遂げた。甘えた態度はなくなり、自主的になんでもこなすようになった。今ではしっかり、殿下の側近候補になっている。一時は評判がガタ落ちになり、結婚なんて出来ないのではと噂されていたが、目覚ましい成長を見せた今は、ひそかに人気があるようだ。
パルマーロ子爵を騙っていた親子はそれぞれ異なる結末を迎えた。父親は処刑。母親は自分の夫がやっていた事を知っているにも関わらず、贅沢三昧、勝手に資産を食い潰していたという事で北の果てにある、この国一番の戒律の厳しい修道院へ入れられた。
娘のマリーアは、そこまで厳しくはないが、そこそこに厳しい修道院へ入れられたのだが、そのすぐ後、妊娠していることが発覚。しかし、誰も父親だと名乗り出る者がいなかったので、そのまま修道院で子供を産む羽目になったらしい。
私は初めての社交界、王家主催の舞踏会に出席するためにドレスを着た所だ。
「姉様、すごく綺麗だ」
最近、すっかりおませさんになった弟のエルコレが褒めてくれた。10歳になった時から剣の稽古に勤しんで、まだ1年しか経っていないというのに、稽古を見てくれていた騎士団の団長から将来が楽しみだと太鼓判を押されたとか。流石、お父様の血を引いている。将来は殿下の護衛騎士かもしれない。
「ありがとう。行ってくるわね」
「うん、行ってらっしゃい」
私の頬にチュッとキスをしたエルコレ。もう可愛すぎる。
お父様のエスコートで馬車から降りると、たくさんの人々が城内へ吸い込まれるように進んで行くのが見えた。会場への入場は、家格の低い方から順に呼ばれるので、私たちはまだ時間がある為、控室に行く事にした。
「サーラ、待ったいたよ」
そこで待っていたのはアダルベルト殿下。
「殿下は陛下たちと一緒に入場だろうが」
早速、威圧的なお父様。どうして不敬にならないのか不思議なくらいだ。
「ちゃんと父上たちには許可を取ったよ。サーラ、入場する時は私にエスコートさせてね」
「えっと……はい?」
「どうして疑問形?」
だって、お父様の視線が怖い。
そんなお父様にお母様が微笑みを向ける。途端に雰囲気が柔らかくなるお父様。
「殿下、こんな素敵なドレスを娘に贈っていただいて、本当にありがとうございます」
にこやかな微笑み。社交界の華は衰え知らずだ。
「最初の舞踏会では、絶対に私の色に染め上げようと思っていたんだ」
「ケッ」
お父様の機嫌が再び下降。そんなお父様を見て殿下がニヤついた。
「すまないね。全て私の色にしてしまって」
「別に構わない。そうでもしなければサーラを繋ぎとめる自信がないのだろう」
「……」
「……」
お母様と私は溜息を吐いてしまう。
すると、順番がきたようでお呼びがかかった。
「さ、あなた。参りましょう」
するりとお父様の腕に自分の腕を絡ませるお母様。お父様の機嫌、上昇中です。
「よし、私たちも行こう」
殿下が腕を私の方に向けたので、そっと腕を絡ませた。
煌びやかな会場へ入ると、一斉に注目を浴びる。
「やっとサーラと踊る事が出来るね」
「はい」
「今日はずっと一緒に踊ろうね」
「お父様に殺されますよ」
「サーラの為なら私は死なないよ」
自信満々に言い切る殿下に思わず笑ってしまった。会場がどよめいた気がしたが気にしない。
「もう、殿下ったら」
「それはそうと、もう成人したんだしいい加減、名前で呼ばない?なかなか寂しいんだよ」
実は私もいつか殿下をそう呼びたくて、密かに練習していた。絶対に殿下には言わないけれど。
「……アダルベルト」
意を決して殿下の名を呼ぶ。恥ずかしいけれど嬉しい。
「……ゾクッとした。名前で呼ばれるってたまらないんだな」
何やらブツブツと呟いているけれど、イマイチ聞き取れない。
「ゾクッてなんですか?」
「え?あ、ううん。なんでもないよ。凄く嬉しいって言ったんだ」
「そうですか?」
なんだか汗かいていますけれど?
「ねえサーラ」
少し声が甘くなった。
「はい」
「愛してるよ」
いきなりの告白。殿下をジッと見つめてしまう。
「心の底から愛してる。これからもずっと」
顔が熱いけれど、嬉し過ぎて涙が出そうだけれど、ぐっと堪えて私もちゃんと口にする。
「アダルベルト。私も愛しています」
目を見開いた殿下は、一瞬キョロキョロと辺りを見回すと、早業で、だけれど優しいキスを唇に落としたのだった。
ドレス姿の私を見て苦笑するお母様。
白を基調としたドレスに、金糸をふんだんに使った刺繍が施されている。スカートの下の部分には金糸で作られたレースが縫い込まれておりキラキラしていた。しかも首元にはイエローダイヤの粒が連なったネックスレス。
もうどこから見てもアダルベルト殿下の色だ。
「小賢しい」
お父様はドレスが贈られた時からずっと不機嫌。
あれから2年経った。
アダルベルト殿下は学園の卒業と同時に王太子になった。マグラーニ公爵は、やっと国王様の素の姿に慣れたようで、お父様に叱られた後のフォローを買って出ているらしい。
トンマーゾは、目を見張るほどの成長を遂げた。甘えた態度はなくなり、自主的になんでもこなすようになった。今ではしっかり、殿下の側近候補になっている。一時は評判がガタ落ちになり、結婚なんて出来ないのではと噂されていたが、目覚ましい成長を見せた今は、ひそかに人気があるようだ。
パルマーロ子爵を騙っていた親子はそれぞれ異なる結末を迎えた。父親は処刑。母親は自分の夫がやっていた事を知っているにも関わらず、贅沢三昧、勝手に資産を食い潰していたという事で北の果てにある、この国一番の戒律の厳しい修道院へ入れられた。
娘のマリーアは、そこまで厳しくはないが、そこそこに厳しい修道院へ入れられたのだが、そのすぐ後、妊娠していることが発覚。しかし、誰も父親だと名乗り出る者がいなかったので、そのまま修道院で子供を産む羽目になったらしい。
私は初めての社交界、王家主催の舞踏会に出席するためにドレスを着た所だ。
「姉様、すごく綺麗だ」
最近、すっかりおませさんになった弟のエルコレが褒めてくれた。10歳になった時から剣の稽古に勤しんで、まだ1年しか経っていないというのに、稽古を見てくれていた騎士団の団長から将来が楽しみだと太鼓判を押されたとか。流石、お父様の血を引いている。将来は殿下の護衛騎士かもしれない。
「ありがとう。行ってくるわね」
「うん、行ってらっしゃい」
私の頬にチュッとキスをしたエルコレ。もう可愛すぎる。
お父様のエスコートで馬車から降りると、たくさんの人々が城内へ吸い込まれるように進んで行くのが見えた。会場への入場は、家格の低い方から順に呼ばれるので、私たちはまだ時間がある為、控室に行く事にした。
「サーラ、待ったいたよ」
そこで待っていたのはアダルベルト殿下。
「殿下は陛下たちと一緒に入場だろうが」
早速、威圧的なお父様。どうして不敬にならないのか不思議なくらいだ。
「ちゃんと父上たちには許可を取ったよ。サーラ、入場する時は私にエスコートさせてね」
「えっと……はい?」
「どうして疑問形?」
だって、お父様の視線が怖い。
そんなお父様にお母様が微笑みを向ける。途端に雰囲気が柔らかくなるお父様。
「殿下、こんな素敵なドレスを娘に贈っていただいて、本当にありがとうございます」
にこやかな微笑み。社交界の華は衰え知らずだ。
「最初の舞踏会では、絶対に私の色に染め上げようと思っていたんだ」
「ケッ」
お父様の機嫌が再び下降。そんなお父様を見て殿下がニヤついた。
「すまないね。全て私の色にしてしまって」
「別に構わない。そうでもしなければサーラを繋ぎとめる自信がないのだろう」
「……」
「……」
お母様と私は溜息を吐いてしまう。
すると、順番がきたようでお呼びがかかった。
「さ、あなた。参りましょう」
するりとお父様の腕に自分の腕を絡ませるお母様。お父様の機嫌、上昇中です。
「よし、私たちも行こう」
殿下が腕を私の方に向けたので、そっと腕を絡ませた。
煌びやかな会場へ入ると、一斉に注目を浴びる。
「やっとサーラと踊る事が出来るね」
「はい」
「今日はずっと一緒に踊ろうね」
「お父様に殺されますよ」
「サーラの為なら私は死なないよ」
自信満々に言い切る殿下に思わず笑ってしまった。会場がどよめいた気がしたが気にしない。
「もう、殿下ったら」
「それはそうと、もう成人したんだしいい加減、名前で呼ばない?なかなか寂しいんだよ」
実は私もいつか殿下をそう呼びたくて、密かに練習していた。絶対に殿下には言わないけれど。
「……アダルベルト」
意を決して殿下の名を呼ぶ。恥ずかしいけれど嬉しい。
「……ゾクッとした。名前で呼ばれるってたまらないんだな」
何やらブツブツと呟いているけれど、イマイチ聞き取れない。
「ゾクッてなんですか?」
「え?あ、ううん。なんでもないよ。凄く嬉しいって言ったんだ」
「そうですか?」
なんだか汗かいていますけれど?
「ねえサーラ」
少し声が甘くなった。
「はい」
「愛してるよ」
いきなりの告白。殿下をジッと見つめてしまう。
「心の底から愛してる。これからもずっと」
顔が熱いけれど、嬉し過ぎて涙が出そうだけれど、ぐっと堪えて私もちゃんと口にする。
「アダルベルト。私も愛しています」
目を見開いた殿下は、一瞬キョロキョロと辺りを見回すと、早業で、だけれど優しいキスを唇に落としたのだった。
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