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高熱
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なんとかトンマーゾと別れ、もう何もする気力のなくなった私は早退して屋敷に帰った。頭痛でクラクラする。
「サーラ?一体どうしたの?」
エントランスでは、お母様が出迎えてくれた。エルコレも嬉しそうに走ってきた。しかし、私の様子に何かを感じたようだ。心配そうな顔で私を見た。
「お、か、さま。たす、け」
頭の痛みで上手く言葉が紡げず、ハクハクしてしまう。そのまま私の世界は真っ暗になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「一体どうしたというのだ!?」
「わからないの。私を呼んで……助けてって言ったのだと思う。そのまま倒れてしまって」
カタカタ震えている妻を抱きしめる。
「熱が高いまま、全然下がらないのよ。エルコレも何かを感じているのか大泣きして……」
「エルコレは?」
「泣き疲れて眠ってしまったわ」
暫くすると、知らせを受けてアダルベルト殿下がやって来た。
「サーラは!?」
「熱が全く下がりません。逆に上がってすらいるようで」
「一体どうしたんだ?」
サーラの部屋に私と殿下。妻は無理矢理休ませた。
「影は?影から何か報告は?」
「それが図書室に向かったのを確認して、その場を離れたらしい。司書がいたし、他にも数人生徒がいたからと、他の場所の偵察のために離れてしまった」
悔しそうに話す殿下。
「間違いなく図書室、もしくはその後で何かがあったのでしょう」
何かを起こしたのは……
「トンマーゾは?」
殿下に聞けば、鬼の形相になる。
「普通に過ごしていた。なんなら機嫌がいいくらいだった。てっきりあの令嬢と何かあったのだと思っていた」
今回は関係していないのかと、一瞬だけ思ったが、私の勘がそうではないと言っている。
「絶対にクソ息子に何か言われたか、されたかでしょう。それしか考えられない」
「公爵がそう言うならそうなのだろう」
私の勘はほとんど外れない。この勘があるからこそ、陛下の御身を守る事が出来るのだ。それは殿下も良く知っている事だ。
「サーラ」
アダルベルト殿下が寝ているサーラの額にそっと触れた。
「シッ!」
気配を感じ殿下を黙らせる。
「影か?」
すると、上から影が飛び降りた。
「申し訳ありません。至急、お耳に入れたいことが」
「どうした?」
「トンマーゾが友人数人に、あの子爵令嬢を養子にしてくれないかと頼んでいたと報告が入りました」
「養子に?」
「はい」
「それは全員に断られたんじゃないのか?」
「そのようです」
見えた。身体中の血が、怒りで逆流したように感じた。殿下もすぐに結びついたようだ。
「まさか、サーラにその話を持って行ったのか!?」
「多分」
「アイツ……どこまでサーラを馬鹿にすれば気が済むんだ!」
アダルベルト殿下の金色の瞳の色が濃くなった。相当怒っているに違いない。今にもクソ息子を殴りに行きそうな雰囲気の殿下を諭す。
「落ち着いてください、殿下。私より怒りに満ち溢れてどうするんです?」
「これが落ち着いていられるかっ!」
「殿下、まだ事実かどうかわからないのです。今はとにかく、サーラが無事に回復するために動く。それが先です」
殿下の手を取り、握りしめていた手をほどく。爪が食い込み、血が滲んでいた。
「まずはサーラを見守りましょう」
穏やかな口調で諭すと、殿下がふうっと息を吐いた。
「そうだな……サーラが回復するまで、傍にいさせてくれないか?」
殿下は本当に、本気で娘を想ってくれているようだ。
「仕方ないですね。陛下には私から伝えましょう。部屋を用意させます」
殿下の肩を一度叩き、私は部屋を出た。
「影はまだいるか?」
「は、ここに」
上から返事が返って来る。
「クソ息子が頼んだであろう友人たちの証言を全て取れ。それと、子爵令嬢の交友関係を洗え」
「はっ」
影の気配が消えた。冷静にはなったが、怒りが静まったわけではない。
「マグラーニ公爵には悪いが、もうクソ息子を許す事は出来ないな」
私は殿下の部屋を用意させると、妻と息子の様子を見るために自室へと向かった。
「サーラ?一体どうしたの?」
エントランスでは、お母様が出迎えてくれた。エルコレも嬉しそうに走ってきた。しかし、私の様子に何かを感じたようだ。心配そうな顔で私を見た。
「お、か、さま。たす、け」
頭の痛みで上手く言葉が紡げず、ハクハクしてしまう。そのまま私の世界は真っ暗になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「一体どうしたというのだ!?」
「わからないの。私を呼んで……助けてって言ったのだと思う。そのまま倒れてしまって」
カタカタ震えている妻を抱きしめる。
「熱が高いまま、全然下がらないのよ。エルコレも何かを感じているのか大泣きして……」
「エルコレは?」
「泣き疲れて眠ってしまったわ」
暫くすると、知らせを受けてアダルベルト殿下がやって来た。
「サーラは!?」
「熱が全く下がりません。逆に上がってすらいるようで」
「一体どうしたんだ?」
サーラの部屋に私と殿下。妻は無理矢理休ませた。
「影は?影から何か報告は?」
「それが図書室に向かったのを確認して、その場を離れたらしい。司書がいたし、他にも数人生徒がいたからと、他の場所の偵察のために離れてしまった」
悔しそうに話す殿下。
「間違いなく図書室、もしくはその後で何かがあったのでしょう」
何かを起こしたのは……
「トンマーゾは?」
殿下に聞けば、鬼の形相になる。
「普通に過ごしていた。なんなら機嫌がいいくらいだった。てっきりあの令嬢と何かあったのだと思っていた」
今回は関係していないのかと、一瞬だけ思ったが、私の勘がそうではないと言っている。
「絶対にクソ息子に何か言われたか、されたかでしょう。それしか考えられない」
「公爵がそう言うならそうなのだろう」
私の勘はほとんど外れない。この勘があるからこそ、陛下の御身を守る事が出来るのだ。それは殿下も良く知っている事だ。
「サーラ」
アダルベルト殿下が寝ているサーラの額にそっと触れた。
「シッ!」
気配を感じ殿下を黙らせる。
「影か?」
すると、上から影が飛び降りた。
「申し訳ありません。至急、お耳に入れたいことが」
「どうした?」
「トンマーゾが友人数人に、あの子爵令嬢を養子にしてくれないかと頼んでいたと報告が入りました」
「養子に?」
「はい」
「それは全員に断られたんじゃないのか?」
「そのようです」
見えた。身体中の血が、怒りで逆流したように感じた。殿下もすぐに結びついたようだ。
「まさか、サーラにその話を持って行ったのか!?」
「多分」
「アイツ……どこまでサーラを馬鹿にすれば気が済むんだ!」
アダルベルト殿下の金色の瞳の色が濃くなった。相当怒っているに違いない。今にもクソ息子を殴りに行きそうな雰囲気の殿下を諭す。
「落ち着いてください、殿下。私より怒りに満ち溢れてどうするんです?」
「これが落ち着いていられるかっ!」
「殿下、まだ事実かどうかわからないのです。今はとにかく、サーラが無事に回復するために動く。それが先です」
殿下の手を取り、握りしめていた手をほどく。爪が食い込み、血が滲んでいた。
「まずはサーラを見守りましょう」
穏やかな口調で諭すと、殿下がふうっと息を吐いた。
「そうだな……サーラが回復するまで、傍にいさせてくれないか?」
殿下は本当に、本気で娘を想ってくれているようだ。
「仕方ないですね。陛下には私から伝えましょう。部屋を用意させます」
殿下の肩を一度叩き、私は部屋を出た。
「影はまだいるか?」
「は、ここに」
上から返事が返って来る。
「クソ息子が頼んだであろう友人たちの証言を全て取れ。それと、子爵令嬢の交友関係を洗え」
「はっ」
影の気配が消えた。冷静にはなったが、怒りが静まったわけではない。
「マグラーニ公爵には悪いが、もうクソ息子を許す事は出来ないな」
私は殿下の部屋を用意させると、妻と息子の様子を見るために自室へと向かった。
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