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王子との出会い
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「本来ならトンマーゾもここに招待されているはずなのじゃなくて?」
「トンマーゾたち同級生は、学園で盛大に送別会をしたのですって」
第一王子とトンマーゾは、スプレンドーレ学園の同級生。仲もいいらしい。お茶会に同級生が集まると、大騒ぎになりかねないので学園で済ませたのだそうだ。
「なるほどね。だから男性陣が少ないのね」
「そうね。それに、アダルベルト殿下は女性に凄い人気らしいから、必然的に男性よりも女性の方が多くなるのではないかしら?」
そんな話をしていると、第一王子殿下と王妃様が会場にやって来た。
少し長めの美しい金の髪をなびかせ、にこやかに微笑んで歩く姿は、ここにいる全ての女性を一瞬のうちに魅了したに違いない。そう断言できるほど美しい王子だった。髪の色よりも濃い金の瞳は意思の強さを象徴するように煌いていた。
会場の中心に設えてある席に着いた第一王子殿下は、周囲をぐるっと見てから声をあげた。
「今日は、私の出発を見送るために、たくさんの方々に集まっていただけたことを嬉しく思います。1年、もしくは2年、隣国の文化や経済を学んで、この国に役立てたいと思っています。その後は再びスプレンドーレ学園に戻る事になるので、その時はまたよろしく」
最後はとびきりの笑顔。会場中から溜息が零れた。
「今ので完全に全員落ちたわね」
「そうね。年齢関係なく落ちたわ」
第一王子殿下の話が終わり、各々自由に動き出す。私とお母様は席で再びお茶をしながらそんな会話をしていると後ろから笑う声が聞こえた。
「あなたたちは落ちていないようね」
声の主を確かめれば、ニッコリと微笑んだ王妃様だった。
「ふふ、だって私は旦那様一筋ですし、この子は婚約者がいますもの」
驚いた様子もなくお母様が答えている。私も表には出さない。出さないが、突然の王妃様の登場に心の中ではドキドキだ。
「やっと会えたわね、サーラ嬢。あなたに会えるのをずっと楽しみに待っていたのよ」
動揺していることはおくびにも出さず、立ち上がりカーテシーで挨拶をした。
「初めてお目にかかります。グリマルディ公爵家、長女のサーラ・グリマルディでございます。以後、お見知りおきを」
「あなたのお母様から常々話は聞いていたの。だからずっと会いたいって言っていたのに彼女ったら出し惜しみするんですもの」
可愛らしく口を尖らせる王妃様。
「あら、出し惜しみしていたわけじゃないですわ。完璧な淑女として振舞えるようになるまではって申し上げていましたわよ」
……この二人が揃うと大輪の花が咲いたようだ。とても美しい。とても10代半ばの子持ちには見えない。お母様は勿論、王妃様も美しい金の髪に翡翠色の瞳で見目麗しい。王妃という立場でなかったら、お母様と社交界の華として競い合っていただろう。
「流石、此の親にして此の子ありだわ」
「それは誰の事かな?」
私の独り言をすくいあげた人がいた。
声のした方を見ると、第一王子殿下がニコニコとした笑顔で私を見ていた。あまりに突然の事で驚いて固まってしまう。この親子は突然現れるのが好きなのか。
「あら、アダルベルト。どうしたの?」
「いやあ、ちょっと避難をと……」
第一王子殿下の後ろには、おびただしい……は言い過ぎだが、たくさんのご令嬢方が声を掛けようと待ち構えていた。
「まぁ、モテモテでいいじゃない。この中にあなたの未来のお嫁さんがいるかもしれないのだから、精々愛想を振りまいておきなさい」
王妃様はコロコロと笑いながら、自分の息子をからかっていた。
「積極的すぎる方はちょっと遠慮したいですね」
寒いのか腕をさすりながら第一王子殿下が苦笑いを浮かべた。そして私を見る。
「失礼レディ。グリマルディ家の方ですか?」
お母様がいるからか、そう質問して来た。
「はい、グリマルディ公爵家長女、サーラ・グリマルディでございます」
カーテシーで挨拶をすれば、第一王子殿下の声のトーンが上がった。
「ああ、あなたが。母上がずっとあなたに会いたがっていたんですよ。グリマルディ公爵夫人が隠して見せてくれないって」
その時の王妃様を思い出したのだろう。ククっと笑いながら言う。上辺の笑顔ではない素の笑顔が、なんだか年相応の感じでとても好ましく思えた。
「第一王子のアダルベルト・ロヴィーナです。留学から帰ったら是非仲良くして欲しいな」
私の手を取り、甲にキスを落とす。後ろから小さな悲鳴が聞こえた。
「あらあら、残念だけどサーラ嬢は婚約者がいる身よ」
王妃様が少し悪い顔で笑った。
「え?本当に?」
目を大きく見開いて私を見つめるその瞳がキラリと光ったように見えた。
「トンマーゾたち同級生は、学園で盛大に送別会をしたのですって」
第一王子とトンマーゾは、スプレンドーレ学園の同級生。仲もいいらしい。お茶会に同級生が集まると、大騒ぎになりかねないので学園で済ませたのだそうだ。
「なるほどね。だから男性陣が少ないのね」
「そうね。それに、アダルベルト殿下は女性に凄い人気らしいから、必然的に男性よりも女性の方が多くなるのではないかしら?」
そんな話をしていると、第一王子殿下と王妃様が会場にやって来た。
少し長めの美しい金の髪をなびかせ、にこやかに微笑んで歩く姿は、ここにいる全ての女性を一瞬のうちに魅了したに違いない。そう断言できるほど美しい王子だった。髪の色よりも濃い金の瞳は意思の強さを象徴するように煌いていた。
会場の中心に設えてある席に着いた第一王子殿下は、周囲をぐるっと見てから声をあげた。
「今日は、私の出発を見送るために、たくさんの方々に集まっていただけたことを嬉しく思います。1年、もしくは2年、隣国の文化や経済を学んで、この国に役立てたいと思っています。その後は再びスプレンドーレ学園に戻る事になるので、その時はまたよろしく」
最後はとびきりの笑顔。会場中から溜息が零れた。
「今ので完全に全員落ちたわね」
「そうね。年齢関係なく落ちたわ」
第一王子殿下の話が終わり、各々自由に動き出す。私とお母様は席で再びお茶をしながらそんな会話をしていると後ろから笑う声が聞こえた。
「あなたたちは落ちていないようね」
声の主を確かめれば、ニッコリと微笑んだ王妃様だった。
「ふふ、だって私は旦那様一筋ですし、この子は婚約者がいますもの」
驚いた様子もなくお母様が答えている。私も表には出さない。出さないが、突然の王妃様の登場に心の中ではドキドキだ。
「やっと会えたわね、サーラ嬢。あなたに会えるのをずっと楽しみに待っていたのよ」
動揺していることはおくびにも出さず、立ち上がりカーテシーで挨拶をした。
「初めてお目にかかります。グリマルディ公爵家、長女のサーラ・グリマルディでございます。以後、お見知りおきを」
「あなたのお母様から常々話は聞いていたの。だからずっと会いたいって言っていたのに彼女ったら出し惜しみするんですもの」
可愛らしく口を尖らせる王妃様。
「あら、出し惜しみしていたわけじゃないですわ。完璧な淑女として振舞えるようになるまではって申し上げていましたわよ」
……この二人が揃うと大輪の花が咲いたようだ。とても美しい。とても10代半ばの子持ちには見えない。お母様は勿論、王妃様も美しい金の髪に翡翠色の瞳で見目麗しい。王妃という立場でなかったら、お母様と社交界の華として競い合っていただろう。
「流石、此の親にして此の子ありだわ」
「それは誰の事かな?」
私の独り言をすくいあげた人がいた。
声のした方を見ると、第一王子殿下がニコニコとした笑顔で私を見ていた。あまりに突然の事で驚いて固まってしまう。この親子は突然現れるのが好きなのか。
「あら、アダルベルト。どうしたの?」
「いやあ、ちょっと避難をと……」
第一王子殿下の後ろには、おびただしい……は言い過ぎだが、たくさんのご令嬢方が声を掛けようと待ち構えていた。
「まぁ、モテモテでいいじゃない。この中にあなたの未来のお嫁さんがいるかもしれないのだから、精々愛想を振りまいておきなさい」
王妃様はコロコロと笑いながら、自分の息子をからかっていた。
「積極的すぎる方はちょっと遠慮したいですね」
寒いのか腕をさすりながら第一王子殿下が苦笑いを浮かべた。そして私を見る。
「失礼レディ。グリマルディ家の方ですか?」
お母様がいるからか、そう質問して来た。
「はい、グリマルディ公爵家長女、サーラ・グリマルディでございます」
カーテシーで挨拶をすれば、第一王子殿下の声のトーンが上がった。
「ああ、あなたが。母上がずっとあなたに会いたがっていたんですよ。グリマルディ公爵夫人が隠して見せてくれないって」
その時の王妃様を思い出したのだろう。ククっと笑いながら言う。上辺の笑顔ではない素の笑顔が、なんだか年相応の感じでとても好ましく思えた。
「第一王子のアダルベルト・ロヴィーナです。留学から帰ったら是非仲良くして欲しいな」
私の手を取り、甲にキスを落とす。後ろから小さな悲鳴が聞こえた。
「あらあら、残念だけどサーラ嬢は婚約者がいる身よ」
王妃様が少し悪い顔で笑った。
「え?本当に?」
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