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休暇が明けて

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 冬の休暇が終わり再び学院生活が始まった。休暇が明けた最初の日、私が教室へ入ると待ってましたとばかりに友人である令嬢たちに囲まれてしまった。何事なのかと瞳をキラキラ?ギラギラ?させた友人たちを見回せば、一人の令嬢がぐいっと私に顔を近付けてきた。
「リア、お兄様を紹介してくださらない?」
「あ、ズルいわ。私が言おうと思ってたのに」
「リア、お願いよ」
突拍子もない願いに驚く事しか出来ない私に構わず、ガンガン詰めてくる友人たちに目をチカチカさせてしまう。
「ちょ、ちょっと待って。お兄様を?何故?」

興奮気味の友人たちをなんとか宥め話を聞いてみると、舞踏会で一番注目を浴びたお兄様に一目会ってみたいのだ言う。お兄様は初めて参加した舞踏会で、女性たちから熱い視線を浴びせられていたのだそうだ。それはもう凄い状況だったらしく、若い令嬢から高齢のご婦人まで、ほぼ全ての女性を虜にさせたらしかった。
「リアの桁外れな美しさは、家系だったのね」
「お姉様ったら、目がハートになって夢見心地という顔で帰って来たのよ」
「お祖母様が発作になったかと思う程ドキドキしたって」
おお、兄よ。凄いな。友人たちが興奮しながら教えてくれるお兄様の武勇伝?に、自分の事ではないにもかかわらず鼻が高くなって行く。どこぞの木の人形並みに鼻が伸びた頃、突然後ろから腹部を拘束された。誰かと思って振り返れば、ミアノ様が私を後ろから片腕で抱いていた。

「なんだなんだ?随分楽しそうだな。私も混ぜてくれ」
突然のイケメンの乱入に友人たちはキャーキャー言っているが、私は巻きついているミアノ様の腕をペシリと叩いた。
「この腕はなんですの?」
私が言うや否や、ミアノ様の腕が他の誰かによって強制的に剥がされた。
「ふふふ、ミアノ。死にたいようですね」
真っ黒い笑みを浮かべたパウル様だ。
「はは、冗談だよ、冗談」
そう言っているミアノ様の腕を、黒い笑みを浮かべたままのパウル様が尚も捻り続けている。
「ふふふ、通じない冗談っていうのもあるんですよ」
「ちょ、待て。まずいまずい、折れるって」
そんな二人のじゃれ合いを笑って見ていると、またもや誰かがやって来た。
「リア、この前貰ったブローチなんだけど、魔力を入れてもらっていい?」
ミアノ様とパウル様の事を見て笑いながら来たのはレンゾ様だった。どうやら魔力が切れたようだ。レンゾ様から受け取ったブローチに魔力を注ぎ込む。
「ありがとう、リア」
嬉しそうに微笑むレンゾ様の横では、まだ二人がやり合っている。休み明け早々、賑やかになった事に笑みが零れてしまう。
「あ、そうだ」
ふと思い立った私は、皆を見ながらニッコリと笑った。

「週末、我が家でお茶会をしましょう」
私の言葉を理解した令嬢たちは、嬉しそうにキャーキャーと喜んでいる。対して男性陣は訳がわからないという顔なので簡単に説明してあげた。
「実は友人たちが兄に会いたいと言っておりまして。せっかくだったら皆様もご招待してお茶会を開こうかと。正式にご招待させていただきますわ」
話を聞き終えた男性陣たちは、ぱあっと顔を輝かせた。
「やった。絶対に行くよ」
ブローチを握りながら嬉しそうに答えたレンゾ様。
「勿論、私も行くぞ」
「私も。参加させていただきます」
ミアノ様とパウル様も喜んでくれているようだ。
『後は』
少し離れた背後に立っているアルノルド王子の方を向く。
「ルド様」
「ああ」
見えた。私が声をかけた途端ハッキリ見えた。下がっていた耳がピンと立ったのを。ふさふさの尻尾が揺れたのを。
「ルド様もよろしかったらいらっしゃって下さい」
私が言うと、大きなワンコは満面に気色を湛えながら私を見た。私の心臓が騒がしくなるのは何故かしら?
「是非、参加させてもらおう」
謎の動悸に首を傾げつつも、王子の返事に「はい、是非」と答えた。

こうして我が家でお茶会をする事が決まったのだった。


寮に戻って早速アネリにお茶会を開く事を話した。すると、とてもいい笑顔になったアネリ。
「ふ、ふふふ。やはりお茶会なのですね」
「ん?そうだけど?」
そう答えた数秒後、ハッとした私はすぐにピンクの本を開いた。


【冬期の休暇を終えると、友人たちがこぞってシシリーのところに集まって来た。義兄が舞踏会で一番人気だったらしい。紹介してと頼み込まれ、嫌と言えなくなってしまったシシリーは屋敷でお茶会を開催する事を約束した。義兄に連絡すると「いいよ」と快い返事が返ってくる。承諾してくれた事にホッとしつつ、義兄を皆に見せる事に複雑な気持ちにもなる。たまたま側で話を聞いていたレンゾが「私も行ってもいいかな?」と聞いて来たので招待する事にした。
『どうせだったら、皆様に来てもらいたい』
そう思ったシシリーは、アルノルド王子とミアノ、パウルも招待する事にした。
『あ、でも……』
ふと、義姉の顔が浮かぶ。アルノルド王子は気にしなくていいと言ってくれるけれど……】


忘れていた。本を片手にポカンとした私を見て、アネリがニヤニヤと笑う。
「どうやらお嬢様はこの出来事をすっかりお忘れだったようですね。お嬢様は忘れていたのにお茶会は開かれる。やはりその本は凄いですね。お嬢様、ヒロイン街道まっしぐらですね」
ああ、アネリのニヤけた顔がムカつく。本の中の私はお茶会当日、アルノルド王子が自分ではなくシシリー嬢に会いに来た事を知って怒り爆発。お茶会を台無しにする寸前に、お兄様とアルノルド王子に強制退場させられるのだ。
「ねえ、これって私が主催の場合、どうなるの?」
自分で開いて自分で壊すの?それってイタイ子じゃない?
「大丈夫です。きっとなるようになりますよ。当日の準備はしっかりやらせて頂きます。そしてずっとお側におりましょう」
ふふふと恐ろしい笑みを見せるアネリ。生で見れるとかなんとか言っている顔が本気で怖いから無視しようっと。
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