13 / 71
最初の週末
しおりを挟む
週末。アネリと一緒に街で評判のスイーツをお土産に買ってから屋敷に帰った。
「リアぁぁ、お帰りぃぃ。寂しかったよぉぉ」
目をウルウルさせたお父様が、家令より先に自分で扉を開けて私たちを出迎えた。
「ただいま、お父様……えっと?お仕事はどうしたの?」
今日ってお休みの日だった?不思議に思ってお父様を見つめると、とってもいい笑顔で返事が返って来た。
「そんなの。リアが帰って来る日だから休んだに決まっているじゃないか」
当然でしょ、という顔で話すお父様に、軽い頭痛を覚えてしまう。いや、いや。ダメでしょ。
「お兄様は?」
私を居間にエスコートするお父様に聞くと、またもやいい笑みを作ったお父様。
「ヴィートは仕事しているに決まってるじゃないか」
「あ、そうですか」
後ろから付いてきている家令が、私にぼそりと呟く。
「ヴィート様は、それはそれは恐ろしい形相で、王城へ向かいました」
うわぁ、お父様の命は、今夜で終わるかもしれない。隣でニコニコのお父様を見て、小さく溜息を吐いてしまう。
居間に入ると誰もいなかった。
「あれ?シシリー嬢は?とっくに帰っているはずよね」
私の問いに答えたのは、お父様ではなく家令だった。
「2時間ほど前にお帰りになっております。スピナジーニ子爵夫人とシシリー様のお部屋で、何やら真剣にお話をされているようです」
「へえ、そうなんだ」
あの二人でも真剣に話す事なんてあるんだと、中々失礼な事を考えながら居間に入る。お父様と二人で居間でお茶を飲みながら、学院生活の話をしたり、お父様がどれだけ寂しい日々を過ごしたかを聞かされたりしていると不意に、扉が開いた。
「お帰り、リア」
そこには美しい笑みを浮かべたお兄様が立っていた。
「ただいま、お兄様……お仕事はもう終わったの?」
帰って来るには早い時間だ。一応ではあるが聞いてみると、思っていた通りの答えが返って来た。
「ああ、もう今日はもう終わりにしてきた。リアが帰って来るのに、暢気に仕事なんてしてられないからね」
「わぁ、嬉しいなぁ」
父子揃って仕事を放棄してきた。私の返事が、思わず棒読みになってしまったのは仕方ないよね。
『ま、普段は優秀なはずだから良しとしよう』
もう帰って来てしまっているのだから、考えても仕方がない。そのままお土産を、屋敷の皆に配って私たちもお茶の続きを楽しむ事にした。
「やっぱり自分のベッドは最高ね」
夕食も済ませお風呂に入って、ベッドに大の字になって横たわる。
「お休みなさいませ」
「お休み」と返事をしながらアネリが部屋を出て行くのを目だけで見送った。それにしてもこの1週間は、色々と疲れた。アルノルド殿下とぶつかった時は本当にヤバいと思ったけれど、あれから特に何か言われる事もなかったし多分、ぶつかったのが私だとは気付かれなかったのだろう。そもそも会った事がないのだから、私の事なんて知らないのかもしれない。私だって絵姿を見せられただけだったし。全然、本の通りに進んでない事については、私が悪い訳ではないと思う。頑張ってはいるのだから、その辺は考慮してもらいたい。
「ああ、眠い」
考える事に疲れ始めベッドの心地よさも伴って、意識が夢の中へと落ちようとした時だった。
「ちょっと!」
ノックもなしに、凄い勢いで部屋の扉が開けられた。スピナジーニ夫人だ。
「なんですか?ノックもせずに。失礼ですね」
せっかく気持ち良くなって落ちかけてたのに。彼女の振る舞いにイラッとする。
「あなた!よくもシシリーの出会いを台無しにしてくれたわね!」
「は?なんのお話ですか?」
眠気で頭が回らない中、ガーガービービー言われても何も入ってなんて来ない。
「覚えてないなんて言わせないわ。青竜騎士団長の子息との出会いを、あなたに邪魔されて台無しになったってシシリーが泣いていたのよ!」
ああ、それか。
「私のせいって言われても知りませんよ」
「一体どういう事!?どうし……」
夫人の声が途中で消えた。夫人が慌てた様子で後ろを振り返っている。
私からは見えないが、扉の向こうから恐ろしい程の殺気を感じる。これは多分、と推測する前に声が聞こえた。
「リアぁぁ、お帰りぃぃ。寂しかったよぉぉ」
目をウルウルさせたお父様が、家令より先に自分で扉を開けて私たちを出迎えた。
「ただいま、お父様……えっと?お仕事はどうしたの?」
今日ってお休みの日だった?不思議に思ってお父様を見つめると、とってもいい笑顔で返事が返って来た。
「そんなの。リアが帰って来る日だから休んだに決まっているじゃないか」
当然でしょ、という顔で話すお父様に、軽い頭痛を覚えてしまう。いや、いや。ダメでしょ。
「お兄様は?」
私を居間にエスコートするお父様に聞くと、またもやいい笑みを作ったお父様。
「ヴィートは仕事しているに決まってるじゃないか」
「あ、そうですか」
後ろから付いてきている家令が、私にぼそりと呟く。
「ヴィート様は、それはそれは恐ろしい形相で、王城へ向かいました」
うわぁ、お父様の命は、今夜で終わるかもしれない。隣でニコニコのお父様を見て、小さく溜息を吐いてしまう。
居間に入ると誰もいなかった。
「あれ?シシリー嬢は?とっくに帰っているはずよね」
私の問いに答えたのは、お父様ではなく家令だった。
「2時間ほど前にお帰りになっております。スピナジーニ子爵夫人とシシリー様のお部屋で、何やら真剣にお話をされているようです」
「へえ、そうなんだ」
あの二人でも真剣に話す事なんてあるんだと、中々失礼な事を考えながら居間に入る。お父様と二人で居間でお茶を飲みながら、学院生活の話をしたり、お父様がどれだけ寂しい日々を過ごしたかを聞かされたりしていると不意に、扉が開いた。
「お帰り、リア」
そこには美しい笑みを浮かべたお兄様が立っていた。
「ただいま、お兄様……お仕事はもう終わったの?」
帰って来るには早い時間だ。一応ではあるが聞いてみると、思っていた通りの答えが返って来た。
「ああ、もう今日はもう終わりにしてきた。リアが帰って来るのに、暢気に仕事なんてしてられないからね」
「わぁ、嬉しいなぁ」
父子揃って仕事を放棄してきた。私の返事が、思わず棒読みになってしまったのは仕方ないよね。
『ま、普段は優秀なはずだから良しとしよう』
もう帰って来てしまっているのだから、考えても仕方がない。そのままお土産を、屋敷の皆に配って私たちもお茶の続きを楽しむ事にした。
「やっぱり自分のベッドは最高ね」
夕食も済ませお風呂に入って、ベッドに大の字になって横たわる。
「お休みなさいませ」
「お休み」と返事をしながらアネリが部屋を出て行くのを目だけで見送った。それにしてもこの1週間は、色々と疲れた。アルノルド殿下とぶつかった時は本当にヤバいと思ったけれど、あれから特に何か言われる事もなかったし多分、ぶつかったのが私だとは気付かれなかったのだろう。そもそも会った事がないのだから、私の事なんて知らないのかもしれない。私だって絵姿を見せられただけだったし。全然、本の通りに進んでない事については、私が悪い訳ではないと思う。頑張ってはいるのだから、その辺は考慮してもらいたい。
「ああ、眠い」
考える事に疲れ始めベッドの心地よさも伴って、意識が夢の中へと落ちようとした時だった。
「ちょっと!」
ノックもなしに、凄い勢いで部屋の扉が開けられた。スピナジーニ夫人だ。
「なんですか?ノックもせずに。失礼ですね」
せっかく気持ち良くなって落ちかけてたのに。彼女の振る舞いにイラッとする。
「あなた!よくもシシリーの出会いを台無しにしてくれたわね!」
「は?なんのお話ですか?」
眠気で頭が回らない中、ガーガービービー言われても何も入ってなんて来ない。
「覚えてないなんて言わせないわ。青竜騎士団長の子息との出会いを、あなたに邪魔されて台無しになったってシシリーが泣いていたのよ!」
ああ、それか。
「私のせいって言われても知りませんよ」
「一体どういう事!?どうし……」
夫人の声が途中で消えた。夫人が慌てた様子で後ろを振り返っている。
私からは見えないが、扉の向こうから恐ろしい程の殺気を感じる。これは多分、と推測する前に声が聞こえた。
1
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
三度の飯より犬好きな悪役令嬢は辺境で犬とスローライフがしたい
平山和人
恋愛
名門貴族であるコーネリア家の一人娘、クロエは容姿端麗、文武両道な才女として名を馳せている。
そんな彼女の秘密は大の犬好き。しかし、コーネリア家の令嬢として相応しい人物になるべく、その事は周囲には秘密にしている。
そんなある日、クロエに第一王子ラインハルトとの婚約話が持ち上がる。王子と婚約してしまったら犬と遊ぶ時間が無くなってしまう。
そう危惧したクロエはなんとしても婚約を破棄し、今まで通り犬を飼える立場になろうと企む。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~
甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。
その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。
そんな折、気がついた。
「悪役令嬢になればいいじゃない?」
悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。
貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。
よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。
これで万事解決。
……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの?
※全12話で完結です。
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる