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三人目
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もう絶対にヒロインの出会いを邪魔する事のないように、予め出会いの場面をよく読んだ。ヒロインであるシシリー嬢が、後に侍らす男性との出会いはあと2回。そろそろ出会ってもよさそうな頃合いだと思う。最初の二人は入学式典と言う、しっかりした日時指定があったが、あとの二人はハッキリとした指定がされていない。ならばほっとけばいいじゃないかと思うだろうが、一つの出会いは私との絡みの最中に起こるのだ。
「もう面倒くさい」
どうしてやるなんて言ってしまったのか。あまり近づきたくない相手なのに。そう思いながらも次に出会う相手である、パウル・オスティア―ゼの行動を監視する。アイスブルーの髪に濃紺の鋭い瞳を持ったイケメンは、王国の2大近衛騎士団のうちの一つ、蒼竜騎士団長の息子。本当なら監視なんてしたくない。だって彼はいつも私の名ばかりの婚約者である、第一王子のアルノルド王子と行動を共にしているから。流石というかなんというか、彼は既に騎士団の中でも遜色ない程の実力を持っているらしい。だから、対にある紅竜騎士団長の息子と共に、第一王子の護衛を兼ねているのだ。そんな人になんて興味を持ちたくないのに、シシリー嬢との出会いの為に監視する私……。
「どうして私がこんなに苦労するのよ」
珍しく一人で歩いているパウルを尾行しながらひとりごちる。いや、自分がやるって言い出したんだけどね。
「ん?この場所って……」
彼が歩いているのは、2階の北西の廊下。この先にあるのは図書室だけだ。
【シシリーは急いでいた。
「ああ、早くしないと」
図書室で借りていた本の、返却期間が迫っていたのだ。
「先生に怒られちゃう」
そう言いながら走っていると、人にぶつかってしまった。
「すみません!あ、お義姉様……」
ぶつかった相手は義姉であるミケーリアだった。
「ちょっと!何処を見て歩いていらっしゃるの?曲がりなりにも公爵令嬢になったと言うのに、はしたないですわよ。まあ、所詮はマナーも碌に知らない末端貴族出身ですから仕方がないのかもしれませんけれど。オホホホホ」
何も言えなくなってしまい、俯くシシリー。すると図書室の方から鋭い声が聞こえた。
「何事だ!?」
そこにはキリリとした瞳の男性がいた。
「この子が勢い良くぶつかってきたから、注意していただけですわ」
ミケーリアの言葉を受け、素早く二人の令嬢を見比べた男性。
「見た所、特に怪我などもしていないようですが?そんなに毒を吐く必要が?」
男性は義姉を睨みつけた。】
やっぱりここだ。本の内容を思い出しながら一人、うんうんと頷く。
『よし、この辺りで待っていればいいわね』
いかにもたまたま来たのだという風を装って、パウルから程よく距離を取って歩く。
「キャン」
すると、クーが窓を見て鳴いた。
「どうしたの?」
何気なくクーの視線を追うと、窓の外に釘付けになってしまう。
「わぁ」
クーの視線の先には、鮮やかな色の蝶がたくさん舞っていたのだ。
「綺麗……」
赤や黄色、青に紫。様々な色をした蝶たちが、ダンスでもしているかのようにヒラヒラと舞っている。思わず自分の使命を忘れて見入ってしまう。すると突然、横から凄い衝撃を受けた。余りに突然で受け身も取れず、クーだけはケガをしないようと抱え込んだまま大きく転倒してしまう。
「っつ!」
右足に痛みが走り声が漏れた。どうやら捻ってしまったようだ。
「ミケーリア様……」
私をすっ飛ばしたのはシシリー嬢だった。
『あ、そう言えば』
自分のやるべき事を思い出し、痛みを堪えてなんとか立ち上がった。
「シシリー嬢、一体何を考えているの!?どれだけ勢いよく走ったら、人をふっ飛ばせるって言うのよ」
焦りと痛みのせいで、全然本とは違うセリフを言ってしまう。それでもこのままなんとか続けるしかない。
「ここは貴族の学び舎よ。そんなスピードで走るなんて……恥を知りなさい!」
痛みのせいで、必要以上に語尾を荒げてしまった。ま、結果オーライだろう。だからパウルよ、早く来い。足が痛くて集中出来ないから、早くこのやり取りを終わらせてくれ。
心の底からパウルの登場を待っていると、すぐに声が近付いて来た。
「何事だ!?」
「もう面倒くさい」
どうしてやるなんて言ってしまったのか。あまり近づきたくない相手なのに。そう思いながらも次に出会う相手である、パウル・オスティア―ゼの行動を監視する。アイスブルーの髪に濃紺の鋭い瞳を持ったイケメンは、王国の2大近衛騎士団のうちの一つ、蒼竜騎士団長の息子。本当なら監視なんてしたくない。だって彼はいつも私の名ばかりの婚約者である、第一王子のアルノルド王子と行動を共にしているから。流石というかなんというか、彼は既に騎士団の中でも遜色ない程の実力を持っているらしい。だから、対にある紅竜騎士団長の息子と共に、第一王子の護衛を兼ねているのだ。そんな人になんて興味を持ちたくないのに、シシリー嬢との出会いの為に監視する私……。
「どうして私がこんなに苦労するのよ」
珍しく一人で歩いているパウルを尾行しながらひとりごちる。いや、自分がやるって言い出したんだけどね。
「ん?この場所って……」
彼が歩いているのは、2階の北西の廊下。この先にあるのは図書室だけだ。
【シシリーは急いでいた。
「ああ、早くしないと」
図書室で借りていた本の、返却期間が迫っていたのだ。
「先生に怒られちゃう」
そう言いながら走っていると、人にぶつかってしまった。
「すみません!あ、お義姉様……」
ぶつかった相手は義姉であるミケーリアだった。
「ちょっと!何処を見て歩いていらっしゃるの?曲がりなりにも公爵令嬢になったと言うのに、はしたないですわよ。まあ、所詮はマナーも碌に知らない末端貴族出身ですから仕方がないのかもしれませんけれど。オホホホホ」
何も言えなくなってしまい、俯くシシリー。すると図書室の方から鋭い声が聞こえた。
「何事だ!?」
そこにはキリリとした瞳の男性がいた。
「この子が勢い良くぶつかってきたから、注意していただけですわ」
ミケーリアの言葉を受け、素早く二人の令嬢を見比べた男性。
「見た所、特に怪我などもしていないようですが?そんなに毒を吐く必要が?」
男性は義姉を睨みつけた。】
やっぱりここだ。本の内容を思い出しながら一人、うんうんと頷く。
『よし、この辺りで待っていればいいわね』
いかにもたまたま来たのだという風を装って、パウルから程よく距離を取って歩く。
「キャン」
すると、クーが窓を見て鳴いた。
「どうしたの?」
何気なくクーの視線を追うと、窓の外に釘付けになってしまう。
「わぁ」
クーの視線の先には、鮮やかな色の蝶がたくさん舞っていたのだ。
「綺麗……」
赤や黄色、青に紫。様々な色をした蝶たちが、ダンスでもしているかのようにヒラヒラと舞っている。思わず自分の使命を忘れて見入ってしまう。すると突然、横から凄い衝撃を受けた。余りに突然で受け身も取れず、クーだけはケガをしないようと抱え込んだまま大きく転倒してしまう。
「っつ!」
右足に痛みが走り声が漏れた。どうやら捻ってしまったようだ。
「ミケーリア様……」
私をすっ飛ばしたのはシシリー嬢だった。
『あ、そう言えば』
自分のやるべき事を思い出し、痛みを堪えてなんとか立ち上がった。
「シシリー嬢、一体何を考えているの!?どれだけ勢いよく走ったら、人をふっ飛ばせるって言うのよ」
焦りと痛みのせいで、全然本とは違うセリフを言ってしまう。それでもこのままなんとか続けるしかない。
「ここは貴族の学び舎よ。そんなスピードで走るなんて……恥を知りなさい!」
痛みのせいで、必要以上に語尾を荒げてしまった。ま、結果オーライだろう。だからパウルよ、早く来い。足が痛くて集中出来ないから、早くこのやり取りを終わらせてくれ。
心の底からパウルの登場を待っていると、すぐに声が近付いて来た。
「何事だ!?」
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