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ヴィヴィアーナ殿下の恋
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ヴィヴィアーナ殿下の付き添いで、ミケーレ様の剣の訓練を見に来ている。訓練の相手は兄だ。
「ミケーレ様、剣の持ち方も安定していますね」
私が彼を誉めれば、嬉しそうな顔になるヴィヴィアーナ殿下。
「ホント?エルダから見てもそう思う?」
「ええ、体幹を鍛えた事で、剣を持ってもブレていません。実戦練習を重ねていけば、彼は間違いなく強くなるでしょう」
満面の笑顔になるヴィヴィアーナ殿下。どうやら学園に行っていないこの期間に、ぐっと二人の距離が縮まったようだ。
「ヴィヴィ様、嬉しそうですね」
「うん。あのね、私ね。ミケーレ様の事好きみたい」
ポポポと顔に熱が集まるヴィヴィアーナ殿下。もう可愛いんだから。
「前のように彼を直視することが出来ないの……ドキドキしちゃって」
くっ、マジで可愛い。私があなたを直視できません。
「エルダ、どうしたらいい?彼をまともに見られなくなってしまって……嫌いになったと思われてしまわないか不安なの」
「ヴィヴィ様。でしたら、今のそのお気持ちを正直に話してみたらいかがですか?」
「好きだって言ってしまうの?」
真っ赤なヴィヴィアーナ殿下。
「おっしゃりたいのであればそれでもいいですが、その前にドキドキするからちゃんと見られないと、そう話しみては?それでも伝わらなければその時は好きだと告白してしまってもいいかもしれません」
青い瞳をキラキラさせていた彼女が、突然顔を曇らせる。
「私の気持ちが受け入れてもらえなかったら?」
私から見たミケーレ様は、まず間違いなく殿下に想いを寄せているはず。だが、そこまでの事は私の口からは言えない。
「その時は、一晩中泣き明かしましょう。私がずっと一緒におります」
「本当に?一緒に泣いてくれる?」
「はい、勿論です」
私に抱きついたヴィヴィアーナ殿下。本当に可愛らしい。悪役令嬢になどならずにいい子に育ってくれている。
「まるで姉妹のようだな」
後ろから声を掛けられる。
「お兄様!」
ヴィヴィアーナ殿下が嬉しそうに王太子殿下を呼んだ。殿下は愛おしそうにヴィヴィアーナ殿下の頬を撫でた。
「ミケーレはどうだ?」
私たちの後ろに座った殿下。
「確実に力をつけていますよ」
「そうか。まあ、エッツィオに鍛えられれば、否が応でも強くなるだろう」
「勿論。私の自慢の兄なので」
「ふっ」
私たちのやり取りを、ヴィヴィアーナ殿下がニコニコしながら見ていた。
「私、エルダがお義姉様になってくれたら天にも昇る気持ちになるわ」
「はい?」
二人で軽く目を見開いてしまう。次の瞬間、殿下が優しい笑みを浮かべた。
「ヴィヴィは嬉しいか?」
「ええ、勿論よ。大好きなエルダが家族になる。考えただけで幸せな気持ちになるわ。でもお兄様、エルダはとってもモテるのよ。ちゃんとアピールしないと、他の人に奪われてしまうわ。ミケーレ様のお兄様もエルダを狙っているって言っていたもの」
「はは、これから猛烈にアピールする事にしている。心配するな」
本人の前で何を言っているんだ。私は聞こえないフリをする。
「エルダ」
「なんでしょう?ヴィヴィ様」
「お義姉様って呼べる日が来るのを待っているわ」
ヴィヴィアーナ殿下が、本気で思っている空気が伝わり、私はから笑いするしかなかったのだった。
護衛の交代を終えて、騎士棟へ向かう。
向かう先に王太子殿下が見えた。行くかどうか、一瞬躊躇してしまう。すると、横の方から殿下に飛びついた令嬢がいた。ピンク色の髪ですぐにわかる。カプアート嬢だ。
殿下が彼女を剥がす。でもすぐにまたくっつくカプアート嬢。磁石のようだ。何度も繰り返されるその光景に思わず笑ってしまった。運悪く、殿下の耳に私の笑い声が聞こえてしまったようで、こちらを見てニヤリとする。この距離で聞こえるとか……流石魔王。
『嫌な予感がする』
こういう予感というのは何故当たるのか。殿下は彼女をバリっと剥がすと、私に向かって真っすぐ歩き出した。
「ミケーレ様、剣の持ち方も安定していますね」
私が彼を誉めれば、嬉しそうな顔になるヴィヴィアーナ殿下。
「ホント?エルダから見てもそう思う?」
「ええ、体幹を鍛えた事で、剣を持ってもブレていません。実戦練習を重ねていけば、彼は間違いなく強くなるでしょう」
満面の笑顔になるヴィヴィアーナ殿下。どうやら学園に行っていないこの期間に、ぐっと二人の距離が縮まったようだ。
「ヴィヴィ様、嬉しそうですね」
「うん。あのね、私ね。ミケーレ様の事好きみたい」
ポポポと顔に熱が集まるヴィヴィアーナ殿下。もう可愛いんだから。
「前のように彼を直視することが出来ないの……ドキドキしちゃって」
くっ、マジで可愛い。私があなたを直視できません。
「エルダ、どうしたらいい?彼をまともに見られなくなってしまって……嫌いになったと思われてしまわないか不安なの」
「ヴィヴィ様。でしたら、今のそのお気持ちを正直に話してみたらいかがですか?」
「好きだって言ってしまうの?」
真っ赤なヴィヴィアーナ殿下。
「おっしゃりたいのであればそれでもいいですが、その前にドキドキするからちゃんと見られないと、そう話しみては?それでも伝わらなければその時は好きだと告白してしまってもいいかもしれません」
青い瞳をキラキラさせていた彼女が、突然顔を曇らせる。
「私の気持ちが受け入れてもらえなかったら?」
私から見たミケーレ様は、まず間違いなく殿下に想いを寄せているはず。だが、そこまでの事は私の口からは言えない。
「その時は、一晩中泣き明かしましょう。私がずっと一緒におります」
「本当に?一緒に泣いてくれる?」
「はい、勿論です」
私に抱きついたヴィヴィアーナ殿下。本当に可愛らしい。悪役令嬢になどならずにいい子に育ってくれている。
「まるで姉妹のようだな」
後ろから声を掛けられる。
「お兄様!」
ヴィヴィアーナ殿下が嬉しそうに王太子殿下を呼んだ。殿下は愛おしそうにヴィヴィアーナ殿下の頬を撫でた。
「ミケーレはどうだ?」
私たちの後ろに座った殿下。
「確実に力をつけていますよ」
「そうか。まあ、エッツィオに鍛えられれば、否が応でも強くなるだろう」
「勿論。私の自慢の兄なので」
「ふっ」
私たちのやり取りを、ヴィヴィアーナ殿下がニコニコしながら見ていた。
「私、エルダがお義姉様になってくれたら天にも昇る気持ちになるわ」
「はい?」
二人で軽く目を見開いてしまう。次の瞬間、殿下が優しい笑みを浮かべた。
「ヴィヴィは嬉しいか?」
「ええ、勿論よ。大好きなエルダが家族になる。考えただけで幸せな気持ちになるわ。でもお兄様、エルダはとってもモテるのよ。ちゃんとアピールしないと、他の人に奪われてしまうわ。ミケーレ様のお兄様もエルダを狙っているって言っていたもの」
「はは、これから猛烈にアピールする事にしている。心配するな」
本人の前で何を言っているんだ。私は聞こえないフリをする。
「エルダ」
「なんでしょう?ヴィヴィ様」
「お義姉様って呼べる日が来るのを待っているわ」
ヴィヴィアーナ殿下が、本気で思っている空気が伝わり、私はから笑いするしかなかったのだった。
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殿下が彼女を剥がす。でもすぐにまたくっつくカプアート嬢。磁石のようだ。何度も繰り返されるその光景に思わず笑ってしまった。運悪く、殿下の耳に私の笑い声が聞こえてしまったようで、こちらを見てニヤリとする。この距離で聞こえるとか……流石魔王。
『嫌な予感がする』
こういう予感というのは何故当たるのか。殿下は彼女をバリっと剥がすと、私に向かって真っすぐ歩き出した。
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