悪役令嬢の護衛騎士というモブになったが様子がおかしい

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光魔法?

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「兄様、何か知っているんだな?」
兄を見る。二人も兄を見つめていた。

三人の視線を受けて、兄が語り始めた。
「初めの頃、教会の司祭が光魔法の勉強を教えに来ていたことは覚えているか?」
「はい、途中から体調を崩されたと」
「そうだ。彼が秘密裏にカプアート嬢が何かの魔法を自分にかけようとしているのだと言ってきたんだ」

「司祭は、魔力こそそこまでではないが、光魔法の使い手だ。授業をしていると、同じ種類の魔法が自分にかけられる気配を感じたそうだ。だが、同じ光魔法でも何かが違うと感じた彼は、光魔法で彼は拒絶した。しかし、何度もかけてくる。かけられる、拒絶するの繰り返しで、彼は魔力酔いのような状態になってしまったそうだ」

「では、学園の皆にも光魔法をかけたという事ですか?」
「でも、私たちは何ともないわ」
「そこが不思議なところなんだ。今、教えているアルドもなんともない」

なんだ?何が起こっている?よくわからない。だが、どうやらゲームの登場人物は皆、平気なようだ。

「お二人とも、エルシー嬢以外のまともな人たちを教えてくれないか?このまま学園に通い続けるのは危険だ。いつ実害が出てもおかしくない。光魔法にかかっていない者たちは学園を休ませるように城から通達を出そう」
兄の言葉に二人は頷いた。


 ミケーレ様を送ってから、ヴィヴィアーナ殿下と城に戻る。疲れていそうだったので、湯に入らせて夕食時まで休ませた。一度、騎士棟に戻ろうと廊下を歩いているとアルド殿がいた。隣には、彼にぴったりくっついているカプアート嬢。

離れた所からでもわかる。アルド殿の機嫌が悪い。面倒そうな予感がして一瞬、回れ右をしようかと思ったが、先にアルド殿に気付かれてしまった。
「エルダ!」
大きな声で呼ばれてしまった。聞こえないフリが出来そうもない程の大きな声だった。行かないわけにはいかない。

「アルド殿にカプアート嬢。ご機嫌麗しく」
「麗しくない!」
ぷりぷりしている。見た目のせいで違和感がないのが嫌だ。
「この子、何を言っても放してくれない。エルダから言って」
私から何を言えと?

「カプアート嬢、アルド殿を解放して差し上げてくださいませんか?」
「は?あなた誰よ?」
誰って。おまえにソーサーをぶつけられた者だよ。そう心の中でだけ突っ込む。名乗っても覚えなさそうだな、そんな事を考えているとアルド殿がとんでもない事をのたまった。

「エルダは僕が欲しい人」
ああ、やめて欲しい。完全にこの瞬間、私は第三者から関係者に格上げされてしまった。しかも間の悪い事にベニート様がこちらにやって来るではないか。

「このような人が通る廊下で、大々的に告白ですか?アルド君は意外と大胆なのですねえ」
笑顔だが目が笑っていない。突然、肩を抱かれてしまう。
「エルダ嬢は私が頂く予定ですので。アルド君はどうぞ、そこの光魔法の令嬢と仲良くなさってください」

「嫌。エルダがいい」
カプアート嬢が思いっきり私を睨んでいる。面倒過ぎる。そもそも私はモブだ。ゲームではヴィヴィアーナ殿下の背後にちょこっと出ていただけの女だ。どうしてこんなことに巻き込まれなくてはいけない?なんだか無性にイラついた。

身を翻してベニート様の手から逃れる。
「残念ながらどちらとも選ぶことは出来ない。だから……勝手にやってくれ」
そのまま振り返らずに騎士棟へ逃げた。



 ヴィヴィアーナ殿下たちが学園を休むようになってから数日経った。魔法の影響を受けていなかった令嬢方はやはりゲーム内で、攻略対象者の婚約者だった者たちだった。それぞれのルートに入れば、悪役令嬢になってしまう人たちだったのだ。

どうやら本当に、ゲームでの主要な登場人物だけは何も影響を受けていないらしい。それが何故なのか、そもそも彼女がどんな魔法を使っているのかもわからない。

色々考えながら、城から騎士棟へ繋がる渡り廊下を歩いていた時だった。ふと、気配を感じて立ち止まる。
「だから私はモブだというのに」
実害がここに出てきた。
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