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攻略対象者6
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ヴィヴィアーナ殿下を学園まで送り届け、騎士団の事務所へ向かう。今日は書類を全て片付けるつもりだ。自分の分はとっくに終わっているのだが、団長が碌に書類仕事をしないせいで溜まっている。今日こそは、とっ捕まえてしっかり処理をさせようと思っているのだ。
事務所の手前には既に、私以外の副団長の二人が立っていた。
「ロレット殿、アルセニオ。準備はどうだ?」
「バッチリだ。親父はこの中だ」
アルセニオが二カッと笑う。
「私が中に入るから、間髪入れずに二人は突撃。エルダ、拘束は任せたよ」
「ああ」
ロレット殿の指示に従う。
「俺は、事務仕事は苦手なんだよ。頼むよ。見逃してくれ」
あっさりと捕まったガエターノ団長。団長の後ろで声を殺して爆笑するという器用な事をしているアルセニオ。バレたら蹴り飛ばされるだろうな。
「そうやって逃げ続けているから、こんなに溜まったのですよ。今日こそは全て終わらせます。私たちも手伝いますから。ああ、逃げようとする度にエルダの拘束魔法は強固になりますよ。絞め殺されないように」
流石、長年この団長の下にいただけの事はある。ロレット殿の笑顔が怖い。団長が大人しくなった。
「やれば出来るじゃないか」
お昼少し回った時間。全ての書類を片付け終えた。イスにもたれて死んでいる団長を尻目に私たちは、それぞれ渡すべき場所へと書類を持って行く事にした。
騎士団のある棟とは反対の棟にある魔術師団へと書類を持って行く。
事務所を訪れると団長の姿はなかった。代わりに一人の綺麗な青年がいた。艶やかな黒髪を無造作に伸ばし、私の髪色を瞳に流し込んだようなアイスブルーの瞳。背は私くらいで線は細い。彼は私をじっと見た。
「何?」
思ったより声は低かった。
「ああ、失礼した。私は騎士団副団長のエルダ・ウルヴァリーニ。こちらの団長宛の書類を持って来たのだが、団長は留守のようだな。この書類、貴殿に預けていいだろうか?」
「いいよ。僕はアルド。アルド・モレッティーニ。一応副団長だから」
なんとも気の抜けた話し方をする人だ。なんだかこちらの気まで抜けてしまう。
「それは良かった。ふふ、ではお願いする」
書類を渡すと、逆の手で手首を掴まれた。
「ねえ、なんで笑ったの?」
「ああ、失礼。見た印象と話し方が違っていたもので。気分を害したのなら謝る」
「別にいい。ねえ、エルダだっけ?君、綺麗だ」
突然の賛辞に驚いてしまう。
「ありがとう。しかし、貴殿も美しいと思うが?」
つい思っていることを言ってしまった。
「僕?男なのに?」
「男の人でも綺麗な人はたくさんいるだろう」
「そうかな。よくわかんない」
「そうか」
なんとも不思議な空気を醸し出す人だ。
「ねえ、君はそんなに魔力があるのにどうして騎士なの?」
「え?魔力、そんなにあるのか?」
「わかってない?」
「ああ、あまり気にした事がない」
決して少なくはないと思っていたが、魔術師団の人間に言われる程なのかと驚いてしまう。
「今からでも転向する?それくらい魅力的な魔力量」
「ふっ、ありがとう。嬉しいが私はヴィヴィアーナ殿下の護衛騎士なので転向は無理だ」
「君が……噂の女神?」
噂?女神?初耳だ。
「知らなかった?周りから噂されてる。美しき戦いの女神って」
「それは……むずがゆいな」
「あはは、嬉しいとか恥ずかしいとかじゃなくて、むずがゆい?なんか君面白い」
アルド殿が楽しそうに笑った。
「決めた。ねえ、僕と付き合って」
「付き合うとは?」
「勿論、恋人になってって意味」
「は?」
突拍子がなさ過ぎる。
「いや、いきなりそんな事を言われても無理だ」
「なんで?僕は侯爵家の嫡男だし、ちゃんと君を養う力はある」
「そういう問題ではない。貴殿も貴族ならわかるだろう。私も一応侯爵家の人間だ。そんな簡単に決められることではない。それ以前に、お互いに初対面だろう」
「そんなの関係ない。いいと思った。まあいいや。これからアピールしまくるから。覚悟して」
見た目は美しいが、かなりマイペースな男のようだ。よろよろと騎士団へと戻る。途中、突然思い出した。
「あれも攻略対象者の一人だった」
事務所の手前には既に、私以外の副団長の二人が立っていた。
「ロレット殿、アルセニオ。準備はどうだ?」
「バッチリだ。親父はこの中だ」
アルセニオが二カッと笑う。
「私が中に入るから、間髪入れずに二人は突撃。エルダ、拘束は任せたよ」
「ああ」
ロレット殿の指示に従う。
「俺は、事務仕事は苦手なんだよ。頼むよ。見逃してくれ」
あっさりと捕まったガエターノ団長。団長の後ろで声を殺して爆笑するという器用な事をしているアルセニオ。バレたら蹴り飛ばされるだろうな。
「そうやって逃げ続けているから、こんなに溜まったのですよ。今日こそは全て終わらせます。私たちも手伝いますから。ああ、逃げようとする度にエルダの拘束魔法は強固になりますよ。絞め殺されないように」
流石、長年この団長の下にいただけの事はある。ロレット殿の笑顔が怖い。団長が大人しくなった。
「やれば出来るじゃないか」
お昼少し回った時間。全ての書類を片付け終えた。イスにもたれて死んでいる団長を尻目に私たちは、それぞれ渡すべき場所へと書類を持って行く事にした。
騎士団のある棟とは反対の棟にある魔術師団へと書類を持って行く。
事務所を訪れると団長の姿はなかった。代わりに一人の綺麗な青年がいた。艶やかな黒髪を無造作に伸ばし、私の髪色を瞳に流し込んだようなアイスブルーの瞳。背は私くらいで線は細い。彼は私をじっと見た。
「何?」
思ったより声は低かった。
「ああ、失礼した。私は騎士団副団長のエルダ・ウルヴァリーニ。こちらの団長宛の書類を持って来たのだが、団長は留守のようだな。この書類、貴殿に預けていいだろうか?」
「いいよ。僕はアルド。アルド・モレッティーニ。一応副団長だから」
なんとも気の抜けた話し方をする人だ。なんだかこちらの気まで抜けてしまう。
「それは良かった。ふふ、ではお願いする」
書類を渡すと、逆の手で手首を掴まれた。
「ねえ、なんで笑ったの?」
「ああ、失礼。見た印象と話し方が違っていたもので。気分を害したのなら謝る」
「別にいい。ねえ、エルダだっけ?君、綺麗だ」
突然の賛辞に驚いてしまう。
「ありがとう。しかし、貴殿も美しいと思うが?」
つい思っていることを言ってしまった。
「僕?男なのに?」
「男の人でも綺麗な人はたくさんいるだろう」
「そうかな。よくわかんない」
「そうか」
なんとも不思議な空気を醸し出す人だ。
「ねえ、君はそんなに魔力があるのにどうして騎士なの?」
「え?魔力、そんなにあるのか?」
「わかってない?」
「ああ、あまり気にした事がない」
決して少なくはないと思っていたが、魔術師団の人間に言われる程なのかと驚いてしまう。
「今からでも転向する?それくらい魅力的な魔力量」
「ふっ、ありがとう。嬉しいが私はヴィヴィアーナ殿下の護衛騎士なので転向は無理だ」
「君が……噂の女神?」
噂?女神?初耳だ。
「知らなかった?周りから噂されてる。美しき戦いの女神って」
「それは……むずがゆいな」
「あはは、嬉しいとか恥ずかしいとかじゃなくて、むずがゆい?なんか君面白い」
アルド殿が楽しそうに笑った。
「決めた。ねえ、僕と付き合って」
「付き合うとは?」
「勿論、恋人になってって意味」
「は?」
突拍子がなさ過ぎる。
「いや、いきなりそんな事を言われても無理だ」
「なんで?僕は侯爵家の嫡男だし、ちゃんと君を養う力はある」
「そういう問題ではない。貴殿も貴族ならわかるだろう。私も一応侯爵家の人間だ。そんな簡単に決められることではない。それ以前に、お互いに初対面だろう」
「そんなの関係ない。いいと思った。まあいいや。これからアピールしまくるから。覚悟して」
見た目は美しいが、かなりマイペースな男のようだ。よろよろと騎士団へと戻る。途中、突然思い出した。
「あれも攻略対象者の一人だった」
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