3 / 40
攻略対象者2
しおりを挟む
学園の馬車乗り場でヴィヴィアーナ殿下を待つ。しばらくすると、向こうからヴィヴィアーナ殿下が走ってきた。
「エルダ!」
「ヴィヴィ様」
迷わず私の懐に飛び込むヴィヴィアーナ殿下。めちゃくちゃ可愛い。
「ねえ、約束は覚えている?」
「はい、勿論です。ほら、あの通り」
背後を指差す。
「本当だわ。嬉しい」
後ろには馬車ではなく、私の愛馬が待っていた。今日は馬車ではなく、私と馬で帰りたいと言われたのだ。本来であれば、防衛上の理由で馬車が必須なのだが、結界を張る事を条件に国王様には許可を頂けた。
「少し回り道をして帰りましょう。どうせなら景色のいい所を通って」
「本当に?嬉しいわ。エルダ、大好き」
学園に通うようになってしばらく経つが、今の所、ヴィヴィアーナ殿下が悪役令嬢になる気配はない。影からの報告で、ヒロインらしき人物はいるのだが、そもそも誰の婚約者でもない殿下には彼女と絡む理由がない。
「そろそろ参りましょうか?」
殿下を馬に乗せようとしたその時、後ろから声がかかった。
「ヴィヴィアーナ殿下」
殿下と共に声の方へ振り返る。年の頃は殿下と同じ位、銀の髪をした綺麗な少年が声を掛けてきた。
「もう帰るのですか?」
サファイアブルーの瞳がじっと殿下を見ていた。
『攻略対象者だ』
彼はミケーレ・ラウレリーニ。ゲームではヴィヴィアーナ殿下の婚約者だった人物だ。
「ええ。今日は彼女の馬に乗せてもらって帰るのよ」
満面の笑みで答える殿下を見て、ミケーレ様がほんのり頬を染めたのを私は見逃さなかった。もしかしたら彼は少なからず、殿下の事を想っているのかもしれない。その考えが確信であるとすぐにわかる。
「その女性騎士と、ですか?」
睨まれてしまった。焼き餅を焼いているようだ。しかし、殿下は全く気付いていない。
「そうよ。エルダは私の護衛騎士なの。とっても強くてカッコイイの」
どんどん表情が険しくなるミケーレ様に微笑ましく思いながら騎士の礼を取る。
「エルダ・ウルヴァリーニと申します。ヴィヴィアーナ殿下の護衛騎士を務めさせていただいております」
「ウルヴァリーニ……もしかして、国王陛下と王太子殿下の側近の?」
ミケーレ様のサファイアブルーの瞳がキラキラし出した。
「父と兄ですね」
「凄い!お二人とも鬼神の如く強い方々ですよね。もしかして貴女も?」
「ええ、そうよ。エルダは刀という皆とは違う剣を使って戦うの。とっても強いのよ。騎士団の副団長の一人になるくらい」
ヴィヴィアーナ殿下が興奮気味で答えた。この答えはミケーレ様には満足のいく答えだったようだ。
「女性で副団長だなんて。凄いですね!僕も強くなりたくて剣の稽古をしているんですが、なかなか思うようにいかなくて……あの、どうしたら強くなれますか?あ、すみません、名乗りもしないで。僕はミケーレ・ラウレリーニと申します」
うっ。ヤバい、可愛いのが増えた。15歳にしては細い中性的な彼は、多分、体力的にまだ拙い部分があるのだろう。
「そうですね。ミケーレ様とお呼びしても?」
コクコクと頷く彼に笑顔を向ける。
「ミケーレ様はきっと今、成長期の最中なのでしょう。無理に筋肉をつけようとするのは身体に負担がかかりますから、まずは体幹を鍛える事をお勧めします。体幹がしっかりしていれば、剣を持ってもブレる事はありません。何においても体幹を鍛えるのが最も大切な事なのです」
「体幹……わかりました。ありがとうございました。参考になりました。あの、また色々聞いてもいいですか?」
「はい、私で分かる事でしたら喜んで」
笑顔で答えれば、とっても嬉しそうな顔をした。これで本当に15歳なのか、そう思ってしまう程可愛かった。
「ふふふ、ミケーレ様、良かったわね」
隣でヴィヴィアーナ殿下も嬉しそうに笑っている。
そんな時だった。
「ミケーレ様、見つけた!」
後ろからまたもや声が聞こえた。
「エルダ!」
「ヴィヴィ様」
迷わず私の懐に飛び込むヴィヴィアーナ殿下。めちゃくちゃ可愛い。
「ねえ、約束は覚えている?」
「はい、勿論です。ほら、あの通り」
背後を指差す。
「本当だわ。嬉しい」
後ろには馬車ではなく、私の愛馬が待っていた。今日は馬車ではなく、私と馬で帰りたいと言われたのだ。本来であれば、防衛上の理由で馬車が必須なのだが、結界を張る事を条件に国王様には許可を頂けた。
「少し回り道をして帰りましょう。どうせなら景色のいい所を通って」
「本当に?嬉しいわ。エルダ、大好き」
学園に通うようになってしばらく経つが、今の所、ヴィヴィアーナ殿下が悪役令嬢になる気配はない。影からの報告で、ヒロインらしき人物はいるのだが、そもそも誰の婚約者でもない殿下には彼女と絡む理由がない。
「そろそろ参りましょうか?」
殿下を馬に乗せようとしたその時、後ろから声がかかった。
「ヴィヴィアーナ殿下」
殿下と共に声の方へ振り返る。年の頃は殿下と同じ位、銀の髪をした綺麗な少年が声を掛けてきた。
「もう帰るのですか?」
サファイアブルーの瞳がじっと殿下を見ていた。
『攻略対象者だ』
彼はミケーレ・ラウレリーニ。ゲームではヴィヴィアーナ殿下の婚約者だった人物だ。
「ええ。今日は彼女の馬に乗せてもらって帰るのよ」
満面の笑みで答える殿下を見て、ミケーレ様がほんのり頬を染めたのを私は見逃さなかった。もしかしたら彼は少なからず、殿下の事を想っているのかもしれない。その考えが確信であるとすぐにわかる。
「その女性騎士と、ですか?」
睨まれてしまった。焼き餅を焼いているようだ。しかし、殿下は全く気付いていない。
「そうよ。エルダは私の護衛騎士なの。とっても強くてカッコイイの」
どんどん表情が険しくなるミケーレ様に微笑ましく思いながら騎士の礼を取る。
「エルダ・ウルヴァリーニと申します。ヴィヴィアーナ殿下の護衛騎士を務めさせていただいております」
「ウルヴァリーニ……もしかして、国王陛下と王太子殿下の側近の?」
ミケーレ様のサファイアブルーの瞳がキラキラし出した。
「父と兄ですね」
「凄い!お二人とも鬼神の如く強い方々ですよね。もしかして貴女も?」
「ええ、そうよ。エルダは刀という皆とは違う剣を使って戦うの。とっても強いのよ。騎士団の副団長の一人になるくらい」
ヴィヴィアーナ殿下が興奮気味で答えた。この答えはミケーレ様には満足のいく答えだったようだ。
「女性で副団長だなんて。凄いですね!僕も強くなりたくて剣の稽古をしているんですが、なかなか思うようにいかなくて……あの、どうしたら強くなれますか?あ、すみません、名乗りもしないで。僕はミケーレ・ラウレリーニと申します」
うっ。ヤバい、可愛いのが増えた。15歳にしては細い中性的な彼は、多分、体力的にまだ拙い部分があるのだろう。
「そうですね。ミケーレ様とお呼びしても?」
コクコクと頷く彼に笑顔を向ける。
「ミケーレ様はきっと今、成長期の最中なのでしょう。無理に筋肉をつけようとするのは身体に負担がかかりますから、まずは体幹を鍛える事をお勧めします。体幹がしっかりしていれば、剣を持ってもブレる事はありません。何においても体幹を鍛えるのが最も大切な事なのです」
「体幹……わかりました。ありがとうございました。参考になりました。あの、また色々聞いてもいいですか?」
「はい、私で分かる事でしたら喜んで」
笑顔で答えれば、とっても嬉しそうな顔をした。これで本当に15歳なのか、そう思ってしまう程可愛かった。
「ふふふ、ミケーレ様、良かったわね」
隣でヴィヴィアーナ殿下も嬉しそうに笑っている。
そんな時だった。
「ミケーレ様、見つけた!」
後ろからまたもや声が聞こえた。
15
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる