我々が守る価値はその人類にはあるのか?

あろえみかん

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その価値と魅力と思惑と

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「お帰りなさい。フルヂルフィ。任務は終了です。お疲れ様でした!」
 
気がつくとオペレーションルームで見知った同僚に迎えられていた。どうやら任務は完了したようだ。さっきまで何をしていたのか、もううまく思い出せない。順応ポッドの中から今自分が置かれている状況を整理する。段々と大気が元々の物に置き換えられ、その濃度を入れ替えていく。酸素を吸っていた体は窒素に段々と順応していき、その肌は色を取り戻しつつあった。

人類と人類外の入れ替えが可能であるとフルヂルフィは身をもって証明した。意識の連携は問題なく、その体で受ける外的要因にも正常反応を示す事が可能。体内にフルヂルフィを取り込んだ時、各組織は特に拒否反応を示す事はなかった。今の人類がこの豊富な資源と水を活かせないのであれば、それに他の生命体が取って代われるとの事実を我々は手に入れたのだ。

人類は唯一無二ではない。我々と置換可能である。

この結果をもって、フルヂルフィの任務は終了となった。

ーーーーー
 
地球で人類が生命体として、この星を享受する事は当たり前ではなく、それは虎視眈々とその外側から狙われている。見目麗しいその星に魅せられるモノは少なくない。また、たゆたう水に憧れを抱くモノも多い。価値を高める為にその保護を行う我々も、必要とあらば守護者を買って出る事が出来るのだ。

自分にしか出来ないと鷹を括ってしまうのはどうだろう。貴方に出来るのなら、それは他の星のモノでも構わないかもしれない。蹂躙は目に見える場所で目に見える力を持つモノだけが行うとは限らないのだ。人類は自分たちでなければならない理由を説明できるだろうか。我々が納得する形で。

出来ないのならば、我々がすぐにでも取って代わろう。
守られる価値を示せないのであれば・・・。

「ルルイ司令官。必要とあらば、いつでも対応可能です。」

窓から見える遠い遠い場所にある水の惑星を見つめるルルイに部下が指示を乞う。彼女はゆっくりと瞬きをして、にっこりと笑うと、ありがとう、と告げた。そして独り言のように呟いた。

「ラボがうまく複製できれば、地球はそのままにしておきましょう。もし出来なければ、その時は我々が。その時までは見守りましょう。彼ら人類がどのような選択をしようとも。」

その判断はいつどう下されるのか。時の流れが同じではない、暗い暗い深淵の宇宙で、その運命はたゆたう。

人類が流れつくその先は思い描いたモノなのか、思い描かれたモノなのか。
それは短い寿命を生きる人類が知る由もない。
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