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2度目の人生が終わって、再訪したはざまの世界
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・・・魔女だ、あんな美しさ、人間じゃないに決まっている。私たちを惑わして、全てを壊して乗っ取る気なんだ!
・・・恐ろしい狐だわ。姉のみならず弟までも。男のくせにそんなに美しいだなんて人間じゃない!
・・・あの病気も、この日照りも、領主様が我らを蔑ろにするのも、何もうまくいかないのも全て全てお前らのせいだ!魔女!悪魔!
はあ・・・。
この先は絶壁の崖。このまま生き残ったとしてもずっと色を求められるのだろう。そしてそれを断れば分かりやすく逆恨みされる。それ以外にはそもそも敵視しかされない。
なぜだろう。
美貌があればある程度人生楽なのかと思って、一度死んだ後に次の条件としてお願いしたのに。まあ確かに美しいと嫉妬はされるか。ただ可愛いだけでも嫉妬を生むのに、絶世の美女仕様を頼んだ私もバカだった。それでも最初の人生でモブだった私は誰かにチヤホヤされる人生を送ってみたかったのだ。が、しくじった。この人生もそろそろ詰みだろう。
それにしてもこの弟が不憫だ。私の家族と言う事もあり、2歳下の弟も本当に可愛らしい。15歳になって身長も伸びてきたが、まだ顔にあどけなさは残り、それでいてもう大人の男の表情を見せる事もあった。ただありがとうと笑えば、夫がいようが妻がいようが、誰でも彼でもその魅力に取り憑かれる始末。私が出した条件が違えば、彼が産み出される事はなかったのかもしれない。そうも思ってしまう。
私は二度目の人生で17歳。この世界観なら嫁ぐような歳なのに、嫉妬で殺される事になろうとは。ところが聖職者さえもあちら側なのだからどうにもならない。神父様は私も弟も口説いていた。平等・・・なのか?まあそんな事はどうでもいい。親は子どもの頃は普通に愛してくれた。ただ周りが私や弟を囲おうと金品をちらつかせ始めると段々と関係はおかしくなっていった。思うように動かないのなら、と言う一方的な思想は親でも村の人でも大差がなかったのだ。だからこそ弟1人この世界に残しても残念ながら決して幸せにはなれない。棍棒やらフライパンやら斧やら包丁やらそんなものを白昼堂々皆で振り回して、17歳と15歳を断崖絶壁に追いやるような世界だ。しかもその理由が自分の欲望が叶わないからだなんて・・・。挙句は様々な不都合が全て私たちのせいだと言う。逆にそんな力があれば、今の事態は招いていない気がするが、そんな冷静な考えができるのならこんなお粗末な人権侵害は起こらない。
そんな世界、こっちから願い下げだ。
ただ、ただ、私の愛する弟がせめて次の世でその人生を誰かに愛されて幸せに終わる事が出来ますように・・・
じりじりと後退りをしながら近づいていた断崖絶壁から落ちる瞬間はあっけなかった。もっと最初の人生で見た事があったような、とりあえずちゃんと立ち止まれて捨て台詞でも吐く、そんな余裕くらいあるのかと思っていた。実際はそんな事はなくて、意外にもあっさりと右足が宙を踏み、重心が一瞬で傾く。頭が重いから真っ逆さまに落ちていく。崖は100mはあろうか。この世界にはそんなに細かい尺度が定義されていなかったから、17年生きてもこの崖がどの位のものなのかもわからなかった。
白い花・・・。
こんなところに花が咲いていたのか、落ちていきながら初めて見る崖の植物に気が付く。もうこれから死ぬのに生を目の当たりにして、全てを通り過ぎて、今更涙が溢れた。
ほんの少し後で飛び降りた弟が、落ちる私に抱きつく。重くなってしまって、落下速度が増す中、それでも最後にきちんとした愛に触れる事ができてよかった。
「姉さん、来世では幸せになってください・・・あなたの弟で幸せでした。」
私はこんな事を言って貰えるほど、いい姉だっただろうか。可愛かったし大事にした。それでも15歳でこんな最後を迎えさせてしまった。
「ちゃんと守ってあげられなくてごめんね。でもあなたの姉で幸せだった。あなたも幸せになってね。」
消えるようなその言葉を最後に二度目の人生は幕を閉じた。
・・・お久しぶりです~!そろそろ起きてください~!・・・
んぁ?聞き覚えがあるような声に、来た事があるような場所、嗅いだ事のある沢山の花の香り・・・。
あぁ・・・。ついさっき死んだんだ・・・。
「弟は?!」
「あ、彼はちゃんと次の人生へのご案内をしてます。大丈夫ですよ。ちゃんと幸せな最後を迎えられる幸せな人生を手配してあります。今回はちょっとこちらの都合もありましたので、他の方よりも優遇させていただいてます。ご安心ください。」
「都合・・・?」
「はい。恐らく今の冷静さを見る限り、こちらの事を覚えておいでですね?ここははざまの世界です。そしてその先へのご案内だったりをしています。私は前回もあなた様をご案内させていただきました桔梗です。今回は大変な最後になってしまい、ご愁傷様でございました。」
「・・・はい・・・。まあ死んじゃったものはどうしようもないし、あの世界控えめに言っても**だったので、弟も幸せな世界に行けるのなら、もうそれで大丈夫です。」
「前回もそうでしたが、なぜか妙に思い切りがいいですよね・・・。まあこちらとしては助かりますが。えっと、前回のご希望条件が3つまで申告可能で、絶世の美女と可愛い弟、生活に困らない家・・・でしたかね。」
「改めて聞かされると恥ずかしい上、その条件のせいであのエンドなのかと思うと何と言うか・・・」
「ははは、それは気にされないでください。皆様大抵そうですよ。まあでもこちらとしてもここに立ち寄られる事になった方に関しては基本的にその先を見据えた上で、もうこちらに来なくても済む人生をご案内するんです。ですが、今回はうるう年の関係で計算がズレてしまっていて、あなた様のいらっしゃった世界のみその影響が出てしまいました。こうやってもう一度お迎えできているとは言え、最後にあのような思いをさせてしまった事、はざまの世界を代表してお詫びいたします。申し訳ありませんでした。」
「あ、いえ。まあもういいです。話の流れからすると、私も弟のようにもう次の世界への転生が決まっていると言う事ですか?今度はできる限り失敗したくないんですけど・・・」
「はい、今回は我々も一定期間のモニタリングをするつもりですし、最初の条件も5つまで設定可能です。また必ずバッドエンドは迎えない事を約束いたします。もしその兆しが見えるような事が万が一あった場合は、改めて桔梗が参ります。ですのでご安心ください。」
つまり、私は三度目の転生・・・と言うべきか、生まれ変わりと言うべきか、改めてチャンスが与えられるようだ。そして最初にここに来たときに比べて明らかに担当者の桔梗が親身になってくれているような気はする。それだけ一大事が起こってしまったから私がここにいるのかもしれないが。それでも改めて人生をやり直せるなら、それはそれでもう楽しむしかない。
今度こそは、幸せな人生だったと言って老衰で死にたい!そして誰かの力ではなくて、私の力で私を幸せにしたい!
「では私の条件は・・・」
「かしこまりました。それでは良い人生となりますように。桔梗の花呪いを以て、あなたの守護と致しましょう。もう会う事がありませんよう。どうかお幸せに・・・」
改めて私の視界はふっと消え、新しい世界へとその命は引き継がれた。
私の、三度目の人生が始まる・・・
・・・恐ろしい狐だわ。姉のみならず弟までも。男のくせにそんなに美しいだなんて人間じゃない!
・・・あの病気も、この日照りも、領主様が我らを蔑ろにするのも、何もうまくいかないのも全て全てお前らのせいだ!魔女!悪魔!
はあ・・・。
この先は絶壁の崖。このまま生き残ったとしてもずっと色を求められるのだろう。そしてそれを断れば分かりやすく逆恨みされる。それ以外にはそもそも敵視しかされない。
なぜだろう。
美貌があればある程度人生楽なのかと思って、一度死んだ後に次の条件としてお願いしたのに。まあ確かに美しいと嫉妬はされるか。ただ可愛いだけでも嫉妬を生むのに、絶世の美女仕様を頼んだ私もバカだった。それでも最初の人生でモブだった私は誰かにチヤホヤされる人生を送ってみたかったのだ。が、しくじった。この人生もそろそろ詰みだろう。
それにしてもこの弟が不憫だ。私の家族と言う事もあり、2歳下の弟も本当に可愛らしい。15歳になって身長も伸びてきたが、まだ顔にあどけなさは残り、それでいてもう大人の男の表情を見せる事もあった。ただありがとうと笑えば、夫がいようが妻がいようが、誰でも彼でもその魅力に取り憑かれる始末。私が出した条件が違えば、彼が産み出される事はなかったのかもしれない。そうも思ってしまう。
私は二度目の人生で17歳。この世界観なら嫁ぐような歳なのに、嫉妬で殺される事になろうとは。ところが聖職者さえもあちら側なのだからどうにもならない。神父様は私も弟も口説いていた。平等・・・なのか?まあそんな事はどうでもいい。親は子どもの頃は普通に愛してくれた。ただ周りが私や弟を囲おうと金品をちらつかせ始めると段々と関係はおかしくなっていった。思うように動かないのなら、と言う一方的な思想は親でも村の人でも大差がなかったのだ。だからこそ弟1人この世界に残しても残念ながら決して幸せにはなれない。棍棒やらフライパンやら斧やら包丁やらそんなものを白昼堂々皆で振り回して、17歳と15歳を断崖絶壁に追いやるような世界だ。しかもその理由が自分の欲望が叶わないからだなんて・・・。挙句は様々な不都合が全て私たちのせいだと言う。逆にそんな力があれば、今の事態は招いていない気がするが、そんな冷静な考えができるのならこんなお粗末な人権侵害は起こらない。
そんな世界、こっちから願い下げだ。
ただ、ただ、私の愛する弟がせめて次の世でその人生を誰かに愛されて幸せに終わる事が出来ますように・・・
じりじりと後退りをしながら近づいていた断崖絶壁から落ちる瞬間はあっけなかった。もっと最初の人生で見た事があったような、とりあえずちゃんと立ち止まれて捨て台詞でも吐く、そんな余裕くらいあるのかと思っていた。実際はそんな事はなくて、意外にもあっさりと右足が宙を踏み、重心が一瞬で傾く。頭が重いから真っ逆さまに落ちていく。崖は100mはあろうか。この世界にはそんなに細かい尺度が定義されていなかったから、17年生きてもこの崖がどの位のものなのかもわからなかった。
白い花・・・。
こんなところに花が咲いていたのか、落ちていきながら初めて見る崖の植物に気が付く。もうこれから死ぬのに生を目の当たりにして、全てを通り過ぎて、今更涙が溢れた。
ほんの少し後で飛び降りた弟が、落ちる私に抱きつく。重くなってしまって、落下速度が増す中、それでも最後にきちんとした愛に触れる事ができてよかった。
「姉さん、来世では幸せになってください・・・あなたの弟で幸せでした。」
私はこんな事を言って貰えるほど、いい姉だっただろうか。可愛かったし大事にした。それでも15歳でこんな最後を迎えさせてしまった。
「ちゃんと守ってあげられなくてごめんね。でもあなたの姉で幸せだった。あなたも幸せになってね。」
消えるようなその言葉を最後に二度目の人生は幕を閉じた。
・・・お久しぶりです~!そろそろ起きてください~!・・・
んぁ?聞き覚えがあるような声に、来た事があるような場所、嗅いだ事のある沢山の花の香り・・・。
あぁ・・・。ついさっき死んだんだ・・・。
「弟は?!」
「あ、彼はちゃんと次の人生へのご案内をしてます。大丈夫ですよ。ちゃんと幸せな最後を迎えられる幸せな人生を手配してあります。今回はちょっとこちらの都合もありましたので、他の方よりも優遇させていただいてます。ご安心ください。」
「都合・・・?」
「はい。恐らく今の冷静さを見る限り、こちらの事を覚えておいでですね?ここははざまの世界です。そしてその先へのご案内だったりをしています。私は前回もあなた様をご案内させていただきました桔梗です。今回は大変な最後になってしまい、ご愁傷様でございました。」
「・・・はい・・・。まあ死んじゃったものはどうしようもないし、あの世界控えめに言っても**だったので、弟も幸せな世界に行けるのなら、もうそれで大丈夫です。」
「前回もそうでしたが、なぜか妙に思い切りがいいですよね・・・。まあこちらとしては助かりますが。えっと、前回のご希望条件が3つまで申告可能で、絶世の美女と可愛い弟、生活に困らない家・・・でしたかね。」
「改めて聞かされると恥ずかしい上、その条件のせいであのエンドなのかと思うと何と言うか・・・」
「ははは、それは気にされないでください。皆様大抵そうですよ。まあでもこちらとしてもここに立ち寄られる事になった方に関しては基本的にその先を見据えた上で、もうこちらに来なくても済む人生をご案内するんです。ですが、今回はうるう年の関係で計算がズレてしまっていて、あなた様のいらっしゃった世界のみその影響が出てしまいました。こうやってもう一度お迎えできているとは言え、最後にあのような思いをさせてしまった事、はざまの世界を代表してお詫びいたします。申し訳ありませんでした。」
「あ、いえ。まあもういいです。話の流れからすると、私も弟のようにもう次の世界への転生が決まっていると言う事ですか?今度はできる限り失敗したくないんですけど・・・」
「はい、今回は我々も一定期間のモニタリングをするつもりですし、最初の条件も5つまで設定可能です。また必ずバッドエンドは迎えない事を約束いたします。もしその兆しが見えるような事が万が一あった場合は、改めて桔梗が参ります。ですのでご安心ください。」
つまり、私は三度目の転生・・・と言うべきか、生まれ変わりと言うべきか、改めてチャンスが与えられるようだ。そして最初にここに来たときに比べて明らかに担当者の桔梗が親身になってくれているような気はする。それだけ一大事が起こってしまったから私がここにいるのかもしれないが。それでも改めて人生をやり直せるなら、それはそれでもう楽しむしかない。
今度こそは、幸せな人生だったと言って老衰で死にたい!そして誰かの力ではなくて、私の力で私を幸せにしたい!
「では私の条件は・・・」
「かしこまりました。それでは良い人生となりますように。桔梗の花呪いを以て、あなたの守護と致しましょう。もう会う事がありませんよう。どうかお幸せに・・・」
改めて私の視界はふっと消え、新しい世界へとその命は引き継がれた。
私の、三度目の人生が始まる・・・
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