私、のんびり暮らしたいんです!

クロウ

文字の大きさ
上 下
25 / 53

皇帝の謝罪

しおりを挟む
「此度は娘のエリザベータが迷惑をかけましたこと、
心よりお詫び申し上げます!」



番を害したとして加害者の国が滅びたという過去があるからか、皇帝の悲壮感はヤバかった。

帝国と王国は同盟国とはいえ、実質的には王国が圧倒的な力を持っている。
領土も、軍事力も、全てにおいて、帝国を凌駕している。

魔力はあるし、魔法も使えるけれど、王国には到底及ばない。
戦争など仕掛けようものならば、一方的に殺戮されるだけだ。



「今回は口頭での争いだった。」


「……………。」


「害されてはいないが、大変腹立たしい。」


「申し訳ございません………。」


「次こんなことがあろうものなら、同盟から外れてもらう。」


「それは!」


「2度がなければいいのだ。
娘の監視、教育をきちんとしておくように。」


「はっ、畏まりました。」



今回は罰を与えられず、厳重注意で留まったが、
次はないと最終宣告を出された。
エリザベータ個人がしたこととはいえ、
この場にはクロアキア帝国の皇女として来ているのだ。
彼女の言動はクロアキア帝国の意思としてとられる。

皇帝は早々に帰国し、自国で再教育を施すことにした。










御披露目会でクロアキア帝国の皇女が喧嘩を売ってきた。拳と拳との語り合いではない。
言葉と言葉での語り合いだ。



「ふふふ、セシリアさんとお話ししたくてまた来てしまいましたわ。
質問をしたいのですが、よろしくて?」



俺のことが好きで(嬉しくないが)何度も婚姻の申し込みをしてきたやつが、リアに何もしないわけがない。



「すまないが、疲れ………」



疲れたから部屋に戻る。
そう言おうとしたら、リアに遮られた。



「ええ、勿論。」



リアがそう言うなら仕方ない。
害されないように注意して見ておこう。



「白金貨1枚くらいでこのドレスを仕立てたのですけれど、白金貨1枚は銅貨に換算すると何枚くらいなのでしょうか?」


「100万枚ですね。」



リアは間髪といれずに答えた。
どうやらあっていたらしく、皇女が苦々しい顔をしている。



「ほほほ、博識ですのね。
では銅貨14枚、大銅貨19枚、銀貨27枚、大銀貨33枚、
金貨35枚、大金貨41枚、白金貨48枚、黒貨56枚の合計を2倍にすると幾らになるかご存じ?」



ご存じ?って。
絶対に自分は計算していないだろうに。

紙が無い状況で計算するとなると、出来なくはないだろうが、時間がかかる。

その間に皇女は「そんなこともできませんの?」とか
言いそうだ。
自分も出来ないだろうに。

そう思っていたら、



「ええ、随分と高額な金額だわ。
黒貨113枚、白金貨4枚、大金貨9枚、金貨7枚、
大銀貨1枚、銀貨8枚、銅貨8枚だなんて。
これはどういう数字なのかしら?」



答えた。しかも、顔を驚愕に染め、言葉が出ないでいる皇女に、



「どうしたんですか、エリザベータ・フォン・クロアキア皇女殿下?具合が悪いんですの?お帰りになります?」



辛辣な言葉まで言ったではないか。
だが、そんなところもかわいい。



「何で、何で、何でそんなに計算が早いのよっ!」



確かに。
いくらなんでも計算が速すぎる。
だが数字は皇女が思いつきで言っただろうから、
事前に答えを計算していたという可能性はない。



「まあ、独自の計算方法がありまして、それを使用することにより、速く計算をすることができるんです。
そういえば先程の計算、合ってましたか?
計算が間違っている可能性もありますので、
是非、答えを教えていただけますか?」



皇女が計算なんかをしていないことを知っているのだろう。
案の定、皇女は小走りで逃げ去って行った。

ああ、聡明でかわいくも美人でもあるリア。
自分がいる手前、声はかけてこなかったが、
リアに見惚れていた男がいた。



「絶対に渡さない。」



長年探してようやく見つけた番。
大切な存在を手放すわけがないだろう?

口頭でとはいえ、喧嘩を売ってきた皇女に何もしないわけがない。
輸入物品を少しだけ減らしたり、魔物をそちらに流すことなんて造作もない。
それくらいは許されるだろう?










~作者から~
いつもより長く書けました!

あと6000文字くらいで4万文字!!
第11回ファンタジー小説大賞は5万文字以上で応募可能とのことなので、頑張ります!!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

知らない異世界を生き抜く方法

明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。 なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。 そんな状況で生き抜く方法は?

家族もチート!?な貴族に転生しました。

夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった… そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。 詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。 ※※※※※※※※※ チート過ぎる転生貴族の改訂版です。 内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております ※※※※※※※※※

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

処理中です...