私、のんびり暮らしたいんです!

クロウ

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至福の時間

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セシリアは侍女の人の太股の上に頭を置き、寝ている。
かれこれ数10分が経っていて、脚が痺れてきているのだが、女性はその役目を譲らなかった。



『ふぅうう、脚が……。』


『ふふふ、代わってあげるわ。』


『それは却下。交代したら起きちゃうでしょ。』


『こっそり、こーっそりやればいいのよ。』


『念話といえども煩くしてちゃ起きるよ?』


『そんなわけ……』


「んんぅ……。」



ビクッ



ただ単に寝返りをうっただけのようだ。
起こしてしまったのかと焦ってしまった。
あまりにもタイミングがよすぎて。



『あっぶなぁい!』


『ギリギリセーフ!!』


『だから、念話といえども煩くしてちゃ起きるって言ってるでしょ?
機嫌を損ねたら物理的に首が切れるよ?』



王子の言葉を思い出したのか、顔を青くしてそう言う。



「どうなるか、分かってるよなあ?」



王子の顔を思い出すたびに、その言葉がリピートされる。
王子は長年番探しの旅をしていたため、かなり昔から王宮に勤めている者でないと人となりを知る人はいない。

私達は信頼されて番専属の侍女となったけれど、
長年勤めていたわけではない。

知っている人は侍女長などのトップクラスの役職の人くらいなものだ。



『静かにします………。』


『死にたくない……。』



王子があんなに恐ろしいとは思っていなかった。
身分が低いとはいえど貴族の端くれだから、
優しいだけではやっていけないというのは分かる。

だけれど、あれはあまりにも恐ろしい。










「まだなの!?」



帝国と王国との国境付近をかなりの速度で走っている
馬車があった。

ときどき馬車の中にいる人が金切り声をあげて、
御者を急かしている。



「これでも急いでおります!!
王国に到着するまで5日休憩をするとして、
18日くらいはかかります!」


「もっと早く着けないの!?」


「王国の領地は広大です!
転移の魔法を使えない以上は早くつくことはできません。」


「……お父様ったら、転移の陣を使う許可を貰ってくれればよかったのに。」



転移の陣と言うのは、設置した陣から陣へと移動するものだ。
滅多なことでは使われず、1番最近で使ったのは数10年前くらいだろうか。
飢饉の際に食料品を送るために使われる。
そんな緊急事態ぐらいにしか陣は使われない。



「待っててね、イディオス様。
私こそが貴女様に相応しいのだと証明して見せるわ。」



高級素材であるシルクをふんだんに使ったドレスを
仕立てたし、大粒の宝石も持ってきた。

番は田舎で暮らしていた公爵令嬢らしいから、
皇女である自分の方が身分が上。

私以上に美人な人はいないし、勝っている要素しかない。



「ふふふふ。」



セシリアは神の祝福を受けた人なので王族よりも、
皇族よりも偉い存在なのだが、皇女は知るよしもない。










~作者から~
2万文字を超えたー!!
やっと、やっと超えました。次は目指せ5万文字です!

頑張ります!!
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