私、のんびり暮らしたいんです!

クロウ

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シルクスパイダーの糸を買わせてくれるかも、ということで女性に着いていく。
途中で思い出したが、この人はかつては「鮮血の戦乙女」と恐れられていた魔導師だ。
それならばあの魔力量は納得できる。

自分が小さい時は国に仕えていたらしいが、
彼女を見初めたスウィフト公爵子息が家督を継ぎたくないからと家を出、それに着いて行ったそうだ。

その一連の行動は小説化し、庶民の間ではかなり人気だし、劇にもなっているほど。



「ここです。」



他の家と比べれば大きいが、貴族の屋敷と比べるとそうでもない。
公爵子息という王族に近しい血族の者がこんなところに住んでいるとは思えない。

案内された部屋はシンプルで華美さは無いが、よくよく見れば価値がある物だというのが分かる。

「ここで待っててください。」と言われたのだが、
なかなか来ない。
「起きなさーい!!お客様よ!」とか「起きなさいって言ってるでしょー!?」とか聞こえてくる。

どうやらなかなか起きないらしい。
こちらにまで聞こえてくるような大声で起きないとは、余程深く寝ているようだ。



「あの、どうかしましたか?」



そう聞くと驚くべき答えが帰ってきた。



「それが、娘が結界を張ってて起きないのよ。」



結界!?
寝るのに結界が必要なのか疑問に思ったが、
問題はそこではない。
寝ているのに結界が発動しているとはどういうことだ?
魔道具を設置し、結界を張っている?
いや、見た限りは魔道具らしき物はない。

結界は狭い範囲であれば魔力消費は少ないが、
常時発動しているとなるとかなりの魔力を消費する。

流石、公爵子息と鮮血の戦乙女との間に生まれた子だ。



「私では破壊できないし、どうしたものかと思って。」



魔力は大人になるにつれ、多少ではあるが多くなる傾向にある。
つまり、大人である鮮血の戦乙女の方が魔力量が多いはずだ。魔導師として経験を積んだことのある彼女の方が強いはず。
だというのに、彼女でも結界を破壊できないらしい。

王族である自分なら破壊できるかもしれない。
そう彼女に提案した。



「そう?」



だが、自分でも破壊できなかった。
こうなれば意地だ。
全員を招集し、結界を破壊するのを手伝ってもらおう。










「ということで、よろしく頼む。」


「公爵子息に鮮血の戦乙女ー?
それだけでも驚きなのに、第2王子のイディオス様でも破壊できなかった結界?なんだそりゃ。」


「自分だけでは無理だったが、皆で力を合わせれば破壊できるだろう。
どうやらシルクスパイダーの件には彼女が関わっているらしいからな。起こせさえすれば買い取らせてもらえる可能性がある。」


「ま、いいけどさ。」



結界の前に来た。
目をつむり、集中力を高める。
最大限の魔力を殆ど放出し、結界を破壊……できなかった。



「うえー、俺達でも無理だとか。」


「これで無理ならもう無理だろう。
魔導師全員をこの場に招集するわけにはいかないしな。
諦めよう。」



と、話していたら、布団がむくっと盛り上がった。
途端に結界が無くなる気配がした。



「あら、もうおやつの時間じゃない。」



おやつの時間に自動的に起きるのであれば、
自分達が結界を破壊しようとしなくてもよかったのではないか。
そんな俺達の目線を受けた鮮血の戦乙女は
「うふふ、忘れてたわ。」そう言って去って行った。



「俺達、必要無いじゃん……。」


「無駄骨……。」



若干名、膝から崩れ落ちたのは言うまでもない。










~作者から~
王子がセシリアを番と認識するのは次の話になります。
反抗したり反応したりするのが面倒だと思っているセシリアは、王子のなすがまま。

膝抱っことかあーんとかを書きたいですね!

夏ですので、スマホがかなり熱を持っております。
氷や扇風機などで冷やそうと努力はしているのですが、なかなか冷たくなりません。

調べたら、10円玉を張り付けるのが良いそうな。

これからもよろしくお願いします!!
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