竜人の溺愛

クロウ

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レベッカの企み

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「ところで呪いの件はどこまで進んでいるのかしら?」


「下準備は整っております。ですが守りが固くて」


「何をしているのよ!」


「守りが固いことは予測していましたが、油断するか何かがないと突破することは不可能かと」


「…………方法はあるの?」


「ええ!勿論ですとも。わたしは近づくことは不可能な身分ですがお嬢様は違います。呪いの媒体を持ったお嬢様が平民の女に近づき、触れるだけでいいのです」


「リスクがあるんじゃなくて?」


「多少のリスクはありますけれどもついでに魅了の魔道具を使用していただければどうにでもなります」




考え込むレベッカ。のせられやすいし、直情的なところはあるけれども考え無しというわけではない。




「大丈夫なのよね?」


「はい。万事抜かり無く準備は整っております」


「わかったわ。次の夜会で仕掛けるから」


「かしこまりました」




 レベッカとわかれ、自身の部屋へ向かう男。




「あと少し、あと少しで成し遂げられる」




つくづく仕えるお嬢様が馬鹿でよかったと思う。どんなに理不尽なことでも忠実に実行し、逆らわず過ごしてきてよかった。幼い頃から貴族教育を受けた人間だったらこうもいかなかっただろう。

平民から貴族の仲間入りをしたことで浮かれ、今度は王族にまで手を出そうとする傲慢さ。




「ヘドが出る」




当主に溺愛されて我が儘放題。使用人を替えのきく駒扱い。無茶を言い、できなければ苛烈なイビり。前の主人の紹介状が無いと再就職先を見つけるのは至難の技だと言われるなかで、それでもいいからと辞める人がでる始末。

苦言を呈した人はいつの間にか姿を消していた。………妻もその1人だ。




「お嬢様、お金は無限にはありません。毎日贅沢してばかりでは後々困りますよ」


「そんなわけないでしょ!我が家は伯爵家よ。お金持ちなの!!」




使いきれぬ程の富をもつ家もある。しかしセルバンテス家は伯爵位。かろうじて下位貴族ではないものの、上位貴族ではない微妙な爵位。いたって平凡な貴族家で贅沢三昧というわけにはいかない。

平民の認識としては貴族はお金持ち。それだけの認識なのだろう。商人より苦しい生活をしている貴族だっているというのに。難しい勉強は嫌だと避けまくっている弊害がここに出ていた。




「お父様!この女が暴言を吐いてきたの!!」




お嬢様の機嫌を損ねた妻は伯爵の命令によって殺された。だから復讐することを決意した。呪術だなんだとお嬢様に吹き込んではいるがそういった知識があるだけであって物を持っているわけではない。触れただけで呪いをかけられる道具なんて知らないし持ってもいない。魅了の魔道具なんて眉唾物の存在レベルの物を手に入れられる身分にない。お嬢様が………いや、あの女が王族に不敬を働いて連座で伯爵家が処罰されることを望むのみ。

次の夜会で仕掛けると言っていた。その日がお前らの破滅の始まりだ。自分も処罰されるだろう。それは覚悟している。
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