竜人の溺愛

クロウ

文字の大きさ
上 下
1 / 13

出会い1

しおりを挟む
 番は魂の片割れで唯一無二の存在だ。番と出会い、甘い一時を過ごしてしまったらもう離れることなど考えられない。番を害する者はどんな人であろうとも排除しようとする。


フロムナード王国は竜人の国。竜化できるほど血が濃いのは今では王族直系のみ。竜人の血は引いているが段々と血が薄まっている。限りなく血は薄まってるけど、多少なりとも竜人の血を引いているからか他の国の民と比べ、身体能力が高い者が多い。


血が薄いと竜の本能である番を察知する能力が弱くなり
一生涯番を見つけられないことも少なくない。番を見つけられないと狂ってしまうとされているが、能力が薄まっていれば番に対する渇望も少なく、狂うこともなくなる。


番本人や番がいる竜人に手を出すのは自殺行為。しかしいなければすり寄っても余程のことがなければ罪に問われないのだ。




「イディオス様ぁ、夜会の招待状を送らせていただきましたわぁ。是非、いらしてくださいませ」


「名前を呼ぶことを許可していない」


「そんな冷たいことをおっしゃらないで。
私達の仲なんですから」




 この女は王族に対するマナーを学んでいないのか?下位の貴族は上位の貴族が声をかけるまで挨拶できないとされている。王族は最上位。このルールは適用される。


騎士として生計を立てているから許されると思っているのか。




「貴女、爵位は?」


「ゴフラン子爵ですわ。我が家は資金が沢山ありますもの。イディオス様の正室となるに相応しいですわ」


「子爵程度がでしゃばらないでくださいます?
私は伯爵令嬢よ」


「資金が乏しい伯爵家ね。
子爵家にすら劣っているみすぼらしい家」


「何ですって!?」




 公爵・侯爵レベルともなると血が濃く、竜化はできないものの番の本能はかなり残っている。故にこの女達のように番でもないのにすり寄ってくる者達はいない。


すり寄ってくるのは王族が嫁いだことのない、伯爵・子爵・男爵家の者だ。




(ん?甘い香りがする)




 目の前に香水臭い女がいるというのにハッキリと薫る甘い香り。


イディオスは番の性質を唐突に思い出した。甘い香りがするのは番が近くにいるか、死に瀕しているからであると。




ギャオオオオッ




「ひいっ」




 竜化して飛び立とうとすると鳴き声に気づいた父・兄・騎士が駆けつけてきた。近くにいた女は連れていかれた。




(早く、早く速く早く番の側へ行かねば!)




 空へ飛び立った。




「イディオス!?」


「…………エドマリス、放っておけ」


「何で………ああ、番ですか」




 既に番がいる身。番への渇望はよく分かる。




「どんな娘であろうか」


「それよりも父上、治癒師を待機させておいた方がよろしいのでは?この場に番がいないのにいるのが分かったということは甘い香りがしたのでしょう。甘い香りがするのは番が近くにいるか、死に瀕しているからだと聞きました」


「ふむ。待機させておこう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女が心を取り戻すまで~十年監禁されて心を止めた少女の成長記録~

春風由実
恋愛
当代のアルメスタ公爵、ジェラルド・サン・アルメスタ。 彼は幼くして番に出会う幸運に恵まれた。 けれどもその番を奪われて、十年も辛い日々を過ごすことになる。 やっと見つかった番。 ところがアルメスタ公爵はそれからも苦悩することになった。 彼女が囚われた十年の間に虐げられてすっかり心を失っていたからである。 番であるセイディは、ジェラルドがいくら愛でても心を動かさない。 情緒が育っていないなら、今から育てていけばいい。 これは十年虐げられて心を止めてしまった一人の女性が、愛されながら失った心を取り戻すまでの記録だ。 「せいでぃ、ぷりんたべる」 「せいでぃ、たのちっ」 「せいでぃ、るどといっしょです」 次第にアルメスタ公爵邸に明るい声が響くようになってきた。 なお彼女の知らないところで、十年前に彼女を奪った者たちは制裁を受けていく。 ※R15は念のためです。 ※カクヨム、小説家になろう、にも掲載しています。 シリアスなお話になる予定だったのですけれどね……。これいかに。 ★★★★★ お休みばかりで申し訳ありません。完結させましょう。今度こそ……。 お待ちいただいたみなさま、本当にありがとうございます。最後まで頑張ります。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

白猫は異世界に獣人転生して、番に愛される

メリー
恋愛
何か大きい物体に轢かれたと思った。 『わん、わん、』と言う大きい音にびっくりして道路に思わず飛び込んでしまって…。 それなのにここはどこ? それに、なんで私は人の手をしているの? ガサガサ 音が聞こえてその方向を見るととても綺麗な男の人が立っていた。 【ようやく見つけた。俺の番…】

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました

市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。 ……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。 それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?! 上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる? このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!! ※小説家になろう様でも投稿しています

私、のんびり暮らしたいんです!

クロウ
ファンタジー
神様の手違いで死んだ少女は、異世界のとある村で転生した。 神様から貰ったスキルで今世はのんびりと過ごすんだ! しかし番を探しに訪れた第2王子に、番認定をされて……。

処理中です...