男女比崩壊世界で逆ハーレムを

クロウ

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令嬢の勘違い

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「ファウスト様!」




 和やかに談笑しながら移動中、赤色ドレスにきつめの化粧をした気位の高いだろう貴族令嬢が来た。




「デルベス令嬢」


「嫌だわ!カッシーナと呼んでくださいまし」


「いえ、婚約者でも無い令嬢の名前を呼び捨てにするなどできません」




 口角は上がってるし一見笑顔なんだけど、目は笑っていない顔でそう言った。しかしカッシーナ=デルベスはそれに気づいていないのかぐいぐい話しかける。




「わたくしは幼い頃から王族か上位貴族に嫁ぐ者として育てられてきました。侯爵家である自分に相応しいのはファウスト様しかいないと思っておりますの。

いつ縁談をお受けしてくださるのかしら?
私もそんなに気が長い方じゃなくってよ」


「…………実は縁談が進んでおりまして。
近々婚約式が行われる予定です。
是非楽しんでいってください」


「あら、そうなの。うふふ♪楽しみだわ。
ドレス新着しに帰らないと!」




 早足で護衛と共に去っていった。ちなみにその間、彼女の護衛やファウスティーナは空気だった。
カッシーナはファウストの隣にいるファウスティーナに気がつかなかったのか、あえて無視したのか。




「ファウスト、彼女と婚約するの?」


「婚約するのはティーとだよ」


「え?」




 そう、誰も「カッシーナと縁談が進んでいる」とは言っていない。彼女が勝手に勘違いしただけだ。




「王に伝令を飛ばして許可を貰った。アイゼンバーグ公爵家の養女にしたし、身分は問題ない。
ティーが好きなんだ。ティーは可愛いからうかうかしてると他の男にとられそうで。

…………勝手に進めてすまない」


「大丈夫。ファウストと出会ってから数日しか経ってないけど優しい人だっていうのは分かってる」


「ティー!

ありがとう。ああ、立ちながら長話してしまったね。
疲れてない?」


「大丈夫」


「じゃあ行こっか」




 王となる者が王族の血を引いていないなどとならないよう、王太子妃は夫を1人しかもてない。
ファウストは第2王子。皇太子みたいに妃1人じゃなくていいとはいえ王族。第1夫の座にいることが求められるのだが、カッシーナには既に第4夫がいた。
その時点でファウストの妃候補から外れているのだが
本人はそのことを知らないようだ。


甘やかして育てられたが故にそういった暗黙の了解や勉学に乏しいのだろう。
もしファウストを夫にするのなら今いる夫と離縁し、
その上で申し込むのが最低限だ。
それでも離縁した女性との結婚はハードルが高く、叶わないことではあるが。




「ティー、愛してる」


「!えへへ」




 この笑顔を守り抜くためには何でもしてみせよう。
そう決意した。
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