珈琲ガレット調布店 不器用な神さまたちの戯れ

谷村にじゅうえん

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第3章 少名毘古那の神

13,それぞれの好きなもの

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「祓戸にはブルーマウンテン、ミンくんにはカフェオレでしょ? それから……」

 休日のカウンターキッチンに入った詩は、飲み物の準備をしていく。

「少名毘古那さんはなんにする?」

 卓上のメニューを覗き込んでいた彼は、「オススメの」と答えた。

「だったらカフェモカなんてどうかな?」

 甘いものが好きな少名毘古那は好きそうだ。

「じゃあそれ♪」
「了解! 待っててね」

 カップを3つ棚から下ろし、3人にそれぞれ違うものを作った。

「はい、ミンくんにはミルクたっぷりのLサイズ」
「わあ、店長ありがとうございます!」
「大きくなれよ」

 右隣の席から祓戸が茶化す。
 ソンミンの身長は平均と変わらないくらいだけれど、すらりと長身の祓戸と並ぶと小さかった。

「なんですか。笑ってるのも今のうちですよ? 僕はまだ身長が伸びる可能性はありますから」
「僕は今のミンくんのサイズ感が好きだけどな」
「ほら、店長は僕くらいが好みだって言ってますよ」

 詩の助け船に乗っかって、ソンミンが勝ち誇ったような顔をする。

「アレのサイズ?」

 ソンミンの左隣で、少名毘古那が余計なことを言いだした。

「僕はサイズより○○や××だと思うけど、アレに関しては大は小を兼ねないからなあ……」
「えーっと、少名毘古那さん昼間っからなんの話??」

 詩が止めようとするのに祓戸が話に乗っかる。

「大国主はどうなんだよ」
「まあ普通にヤバいよね。今夜、僕のお尻どうなっちゃうんだろ」
「え……、どうなっちゃうんですか?」

 ソンミンまで興味津々の表情で話に加わった。

「人間じゃないから痛いことされても怪我したり死んだりはしないけど」
「神さまって便利ですね……」
「あのデカイのを相手にするのはそれなりに大変なんだよ」
「顔ニヤけてんぞ? 少名毘古那」

 それを指摘する祓戸もまたニヤけている。

「でもよかったな、よりを戻せて」
「べつにっ、そもそも別れてたわけじゃないし……」
「だったらもう詩にちょっかい出すなよな」
「そうですよ。店長はみんなのもので、半分くらい僕のです」
「なんでミンすけが半分も占領する……」

 2人を見てから、少名毘古那は詩の方へ視線を向けた。

「オニーサン、モテモテだよね。でも僕もオニーサンのことは好きだし。この際、4ぴ――」
「「それは絶対ダメ!」」

 言いかけた少名毘古那の口元を、祓戸とソンミンが同時にふさいだ。

(えーと、あとは……)

 詩は3人に飲み物が行き渡ったのを確認し、棚からもうひとつカップを下ろす。

(あの人にはやっぱりあれかな?)

 そこへサーバーに落としていたコーヒーを注ぎ、そっと店の奥へ向かった。
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