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第2章 疱瘡の神
2,神さまと看病
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体調不良というものは突然にやってくる。
普段忙しかったり体力に自信があったりする者は、細かな前兆に気づきにくいからなおさらだ。
詩がまさにそれだった。
(だるい、これ……もしかして熱あるかも……?)
一人暮らしの部屋のベッドからふらりと起き上がり、体温計を探す。
体温計なんて久しく使っていなかったから、どこにしまってあるのか思い出せなかった。
「……どうしよう……」
姿見に映った自分の顔が赤かった。
今日、店を開けるのは無理かもしれない。嫌な予感が増す。
それから重い体で家の中を行ったり来たりし、引き出しの奥から体温計を見つけ出した。
測ってみると、思った通り38℃オーバー。数値はさらに上がり続ける。
詩は体温計が鳴るのを待たず、ソンミンに電話した。
「ミンくんごめん。今日は臨時休業にする。ちょっと熱があるみたいで……」
手短に伝えると、電話の向こうからは慌てた声が返ってくる。
「大丈夫なんですか!? 店長が熱を出すなんて、僕の知る限り初めてです!」
「そうだよね……」
少なくともここ1年は臨時休業なんてしていない。
「風邪ですか?」
「どうかな? 少し様子を見てから病院に行ってみるよ。ともかく今日は、店はお休み。ミンくんもゆっくりしてていいからね?」
この電話で一番伝えたかったことはそれだった。
ところが電話の向こうの彼が言う。
「うちにめちゃくちゃ効く朝鮮人参がありますよ! 前に帰省した時、親から無理やり持たされて……。それ、今から持っていきますから!」
今すぐ家を飛び出しそうな勢いだ。
「ああ、待ってミンくん! 気持ちはうれしいんだけど、ごめん。今は流行病のことがあるでしょう? 万が一ってことがあって、それをミンくんにうつしたら困るから」
電話の向こうで迷っているような間があった。
「でも店長……、おうちで1人なんですよね? 熱があるのに独りぼっちでいるなんて可哀想です」
「ミンくん……」
確かに、心細くないと言ってしまえばウソになる。
「僕はうつってもいいです」
「それはダメだって。親御さんに顔向けできない」
「それは……そうですね。店長に、かえって迷惑かけちゃいますね……」
しなびた声とため息が返ってきた、その時だった。
「おいミンすけ!」
声と前後してスマートフォンを奪い取られる。
「祓戸……!?」
店にはよく顔を出すけれど、彼が部屋に来たのは初めてで、詩は驚いてしまった。
祓戸は任せておけというように目配せして、電話の向こうのソンミンと話し始める。
「詩のことは俺が独りにしないから安心しろ。俺は人じゃねーから病気はうつらない」
すぐに通話を切ったスマホを返された。
「え、どういうこと?」
本当に神さまは病気にならないんだろうか。
あれこれ神話の物語を思い出してみるが、そういう話には思い至らない。病気というのは基本的に人間がなるものだ。
そのうちに祓戸の手がパジャマのすそから進入してきた。
「――わっ、何するの?」
ひんやりとした手の感触にドキリとする。
「何って看病」
祓戸は何を考えているのかニヤニヤ笑っている。
「え、と……?」
そのままベッドへ仰向けに倒され、腰の上に彼が馬乗りになってきた。
普段忙しかったり体力に自信があったりする者は、細かな前兆に気づきにくいからなおさらだ。
詩がまさにそれだった。
(だるい、これ……もしかして熱あるかも……?)
一人暮らしの部屋のベッドからふらりと起き上がり、体温計を探す。
体温計なんて久しく使っていなかったから、どこにしまってあるのか思い出せなかった。
「……どうしよう……」
姿見に映った自分の顔が赤かった。
今日、店を開けるのは無理かもしれない。嫌な予感が増す。
それから重い体で家の中を行ったり来たりし、引き出しの奥から体温計を見つけ出した。
測ってみると、思った通り38℃オーバー。数値はさらに上がり続ける。
詩は体温計が鳴るのを待たず、ソンミンに電話した。
「ミンくんごめん。今日は臨時休業にする。ちょっと熱があるみたいで……」
手短に伝えると、電話の向こうからは慌てた声が返ってくる。
「大丈夫なんですか!? 店長が熱を出すなんて、僕の知る限り初めてです!」
「そうだよね……」
少なくともここ1年は臨時休業なんてしていない。
「風邪ですか?」
「どうかな? 少し様子を見てから病院に行ってみるよ。ともかく今日は、店はお休み。ミンくんもゆっくりしてていいからね?」
この電話で一番伝えたかったことはそれだった。
ところが電話の向こうの彼が言う。
「うちにめちゃくちゃ効く朝鮮人参がありますよ! 前に帰省した時、親から無理やり持たされて……。それ、今から持っていきますから!」
今すぐ家を飛び出しそうな勢いだ。
「ああ、待ってミンくん! 気持ちはうれしいんだけど、ごめん。今は流行病のことがあるでしょう? 万が一ってことがあって、それをミンくんにうつしたら困るから」
電話の向こうで迷っているような間があった。
「でも店長……、おうちで1人なんですよね? 熱があるのに独りぼっちでいるなんて可哀想です」
「ミンくん……」
確かに、心細くないと言ってしまえばウソになる。
「僕はうつってもいいです」
「それはダメだって。親御さんに顔向けできない」
「それは……そうですね。店長に、かえって迷惑かけちゃいますね……」
しなびた声とため息が返ってきた、その時だった。
「おいミンすけ!」
声と前後してスマートフォンを奪い取られる。
「祓戸……!?」
店にはよく顔を出すけれど、彼が部屋に来たのは初めてで、詩は驚いてしまった。
祓戸は任せておけというように目配せして、電話の向こうのソンミンと話し始める。
「詩のことは俺が独りにしないから安心しろ。俺は人じゃねーから病気はうつらない」
すぐに通話を切ったスマホを返された。
「え、どういうこと?」
本当に神さまは病気にならないんだろうか。
あれこれ神話の物語を思い出してみるが、そういう話には思い至らない。病気というのは基本的に人間がなるものだ。
そのうちに祓戸の手がパジャマのすそから進入してきた。
「――わっ、何するの?」
ひんやりとした手の感触にドキリとする。
「何って看病」
祓戸は何を考えているのかニヤニヤ笑っている。
「え、と……?」
そのままベッドへ仰向けに倒され、腰の上に彼が馬乗りになってきた。
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