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22,子どもの虎
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手の甲にパラパラと雫が降ってきて、類は冬夜が達したことを知る。
それは待ちに待った瞬間のはずだったが、タイミングがタイミングなだけに、目の前にある冬夜の顔はサウナの熱気の中でも凍り付いていた。
「……アァアッ……アニキの顔見てイキたくなかった……」
類としては同情すべきところなんだろうか?
けど、それより想い人にこの状況を誤解されたくない。
いや、この状況自体は誤解だなんだと言えない明白なもので……。誤解されたくないのは類自身の心境についてだ。
(違うんです……ぼくは……)
そーっと冬夜の局部から手を離し、腰を横にスライドさせて彼との距離を広げた。
「あっ、類っち!」
「な、なに!?」
「それ寂しいだろ、オイラを見捨てるなよ!」
「いや、でもっ、緊急避難的なやつで」
自分でも何を言っているのかわからなかった。冬夜を傷付けたくない。虎牙部長には誤解されたくない。脳が処理能力不足でパンクする。
こういう時は、怒られるより先に謝ってしまえという逃げの思考が働く。
「ごごご、ごめんなさい……ぼくがっ……たぶんぼくが悪……――」
すると言葉を遮るように、手桶の水を浴びせられ――。
「え――?」
「とりあえず弊社のキッズ共は、一般のお客さまの迷惑になるようなことはヤメなさい」
もう一度ザーッと水の音。虎牙部長がキッズの排泄物で汚れたサウナ室を、洗い流したんだということは理解した。
そしてその彼は、明らかな苦笑いである。
(お、大人な対応……!)
叫び出したいくらいに混乱している類とはまるで違った。
(こんな時に、惚れさせないで!!)
こうなるともう、類はイタズラしているところを見つかった子どもの虎の心境である。
それから部長が、汗をだらだら流しながら泡を食っているふたりをサウナ室から連れ出した。
それは待ちに待った瞬間のはずだったが、タイミングがタイミングなだけに、目の前にある冬夜の顔はサウナの熱気の中でも凍り付いていた。
「……アァアッ……アニキの顔見てイキたくなかった……」
類としては同情すべきところなんだろうか?
けど、それより想い人にこの状況を誤解されたくない。
いや、この状況自体は誤解だなんだと言えない明白なもので……。誤解されたくないのは類自身の心境についてだ。
(違うんです……ぼくは……)
そーっと冬夜の局部から手を離し、腰を横にスライドさせて彼との距離を広げた。
「あっ、類っち!」
「な、なに!?」
「それ寂しいだろ、オイラを見捨てるなよ!」
「いや、でもっ、緊急避難的なやつで」
自分でも何を言っているのかわからなかった。冬夜を傷付けたくない。虎牙部長には誤解されたくない。脳が処理能力不足でパンクする。
こういう時は、怒られるより先に謝ってしまえという逃げの思考が働く。
「ごごご、ごめんなさい……ぼくがっ……たぶんぼくが悪……――」
すると言葉を遮るように、手桶の水を浴びせられ――。
「え――?」
「とりあえず弊社のキッズ共は、一般のお客さまの迷惑になるようなことはヤメなさい」
もう一度ザーッと水の音。虎牙部長がキッズの排泄物で汚れたサウナ室を、洗い流したんだということは理解した。
そしてその彼は、明らかな苦笑いである。
(お、大人な対応……!)
叫び出したいくらいに混乱している類とはまるで違った。
(こんな時に、惚れさせないで!!)
こうなるともう、類はイタズラしているところを見つかった子どもの虎の心境である。
それから部長が、汗をだらだら流しながら泡を食っているふたりをサウナ室から連れ出した。
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