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11,個人的な趣味
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類はそのまま101号室へ引っ張り込まれる。
「み、帝さん靴は!?」
「靴なんてどうでもよろしい!」
靴のまま絨毯の上をひきずられ、ワンルームの奥へ。
次の瞬間にはベッドの上へ投げ出され、類の体は天井に向かって勢いよく跳ねた。
帝も追いかけるようにしてベッドへ上がってくる。
「一応聞きますが、痛いお仕置きと恥ずかしいお仕置き、どちらがお好みですか?」
「どっちもいいわけないでしょう!」
「そうですか。私はどっちも好きですがね」
言いながら手錠で手首を拘束され、ベッドフレームに固定された。
「いや、待って!? 何コレ、なんでこんなのあるの!?」
「個人的な趣味です」
帝は眼鏡を押し上げて、乱れた息を整える。
「えええ……いい趣味だね……?」
類の背中を寒いものが駆け抜けた。
あまり生活感のない部屋は白と黒の色調で統一され、目張りをするようにすべての窓には、黒の遮光カーテンが掛けられている。
さすがに会社の寮だから、大声を出せば人が来てくれる気がするが、類に大声を出す勇気があるかどうかは別問題だった。
「外してよこれ……」
類はか細い声で懇願する。
引っ張っても角度を変えても、手錠は外れそうになかった。それどころかアジャスターが作動して、さらに手首を締め付けることになる。
「なんで、こんなっ」
あせる気持ちが胸の中で、風船のように膨らんだ。
それと同時に恐怖が背中を凍りつかせる。
「……っ、帝さんお願い……」
「………………」
帝はベッドの上でひざ立ちになり、もがく類を冷たく見下ろしていた。
「それは、アナタ次第ですね」
「え……?」
「簡単に外せばアナタはまた逃げるでしょう」
もちろん類もそのつもりだった。
「なんで、ぼくを自由にしてくれないの……?」
類は思わず涙ぐむ。周囲が自分に手を焼いている、それはわかっていた。
けれど、類にとっては無理な要求ばかりで……。
学校に行け、会社に行け、病院に行け。兄たちを見習え。人と仲良くしろ。誰彼構わず尻尾を振るな。波風立てるな。人に迷惑かけずに生きていけ。
全部無理だった。だからここにいるっていうのに……。
いろんな感情が爆発して、一筋の涙となってシーツの上にこぼれた。
「……あっ……」
類は濡れたシーツに顔を伏せる。どうして泣いてしまったのか。情けなくて恥ずかしかった。
けど思えばこうやってベッドに縛りつけられたことは、今回が初めてじゃなかった。気持ちの不安定な類に、家族が手を焼いていて……。
「類さん……?」
ダンゴムシのように背中を丸める類に、帝が触れた。
さっきまでとは打って変わって、優しく背中をさすられる。
「すみません……。まさか泣かれるとは思わなくて、やり過ぎました」
「違っ、これは……」
彼のせいじゃない。自分がもともと不安定なんだ。
類は帝を安心させようと、涙を拭いて顔を上げようとした。
手は使えないからシーツに顔を押しつける。
「帝さんのせいじゃなくてっ……ぼくがただ……」
顔を上げたとたん、帝の唇がこめかみにぶつかった。
(……え?)
偶然かと思ったのに、彼の唇は何度もぶつかってきて……。
(えええ??)
体を裏返され、仰向けになったところで唇をねっとりと吸われる。
「み、帝さん待って! 何!?」
「んっ、類さん……。私の、理性を試すのはやめてくれませんか?」
キスをされながら体もまさぐられていた。
帝の体が熱いのが、布越しにも伝わってくる。
(えっと……、そういう感じなの!?)
彼の興奮の理由は、同じ男として類にも察しがつくものだった。
「このまま脱がせてもいいですか?」
彼が熱い息をはき出して言ってきた。
類は慌てて身を固くする。
「だ、ダメです!」
(頑張って! 帝さんの理性!)
彼がずれた眼鏡をかけ直した。
「はあ……。虎牙部長には許して私には許さないとか、憎らしい人ですね」
「えっ――」
落ち着いてくれたのかと思いほっとした途端、伸びてきた帝の右手に、服の上から思いっきり乳首をつねられた。
「痛たたたた!」
今朝と違ってつねり方に容赦がない。
帝はそれで気が済んだのか、大きく息をついて体を離す。
それから顔を背けて言った。
「次から気をつけてください。可愛い顔で泣かれると、私の方がアナタに従いたくなるので困ります……」
「帝さん……」
(この人、Sキャラに見せかけて結構グラグラしてるよね??)
なんだか、彼を困らせるのも可哀想になってしまった。
「み、帝さん靴は!?」
「靴なんてどうでもよろしい!」
靴のまま絨毯の上をひきずられ、ワンルームの奥へ。
次の瞬間にはベッドの上へ投げ出され、類の体は天井に向かって勢いよく跳ねた。
帝も追いかけるようにしてベッドへ上がってくる。
「一応聞きますが、痛いお仕置きと恥ずかしいお仕置き、どちらがお好みですか?」
「どっちもいいわけないでしょう!」
「そうですか。私はどっちも好きですがね」
言いながら手錠で手首を拘束され、ベッドフレームに固定された。
「いや、待って!? 何コレ、なんでこんなのあるの!?」
「個人的な趣味です」
帝は眼鏡を押し上げて、乱れた息を整える。
「えええ……いい趣味だね……?」
類の背中を寒いものが駆け抜けた。
あまり生活感のない部屋は白と黒の色調で統一され、目張りをするようにすべての窓には、黒の遮光カーテンが掛けられている。
さすがに会社の寮だから、大声を出せば人が来てくれる気がするが、類に大声を出す勇気があるかどうかは別問題だった。
「外してよこれ……」
類はか細い声で懇願する。
引っ張っても角度を変えても、手錠は外れそうになかった。それどころかアジャスターが作動して、さらに手首を締め付けることになる。
「なんで、こんなっ」
あせる気持ちが胸の中で、風船のように膨らんだ。
それと同時に恐怖が背中を凍りつかせる。
「……っ、帝さんお願い……」
「………………」
帝はベッドの上でひざ立ちになり、もがく類を冷たく見下ろしていた。
「それは、アナタ次第ですね」
「え……?」
「簡単に外せばアナタはまた逃げるでしょう」
もちろん類もそのつもりだった。
「なんで、ぼくを自由にしてくれないの……?」
類は思わず涙ぐむ。周囲が自分に手を焼いている、それはわかっていた。
けれど、類にとっては無理な要求ばかりで……。
学校に行け、会社に行け、病院に行け。兄たちを見習え。人と仲良くしろ。誰彼構わず尻尾を振るな。波風立てるな。人に迷惑かけずに生きていけ。
全部無理だった。だからここにいるっていうのに……。
いろんな感情が爆発して、一筋の涙となってシーツの上にこぼれた。
「……あっ……」
類は濡れたシーツに顔を伏せる。どうして泣いてしまったのか。情けなくて恥ずかしかった。
けど思えばこうやってベッドに縛りつけられたことは、今回が初めてじゃなかった。気持ちの不安定な類に、家族が手を焼いていて……。
「類さん……?」
ダンゴムシのように背中を丸める類に、帝が触れた。
さっきまでとは打って変わって、優しく背中をさすられる。
「すみません……。まさか泣かれるとは思わなくて、やり過ぎました」
「違っ、これは……」
彼のせいじゃない。自分がもともと不安定なんだ。
類は帝を安心させようと、涙を拭いて顔を上げようとした。
手は使えないからシーツに顔を押しつける。
「帝さんのせいじゃなくてっ……ぼくがただ……」
顔を上げたとたん、帝の唇がこめかみにぶつかった。
(……え?)
偶然かと思ったのに、彼の唇は何度もぶつかってきて……。
(えええ??)
体を裏返され、仰向けになったところで唇をねっとりと吸われる。
「み、帝さん待って! 何!?」
「んっ、類さん……。私の、理性を試すのはやめてくれませんか?」
キスをされながら体もまさぐられていた。
帝の体が熱いのが、布越しにも伝わってくる。
(えっと……、そういう感じなの!?)
彼の興奮の理由は、同じ男として類にも察しがつくものだった。
「このまま脱がせてもいいですか?」
彼が熱い息をはき出して言ってきた。
類は慌てて身を固くする。
「だ、ダメです!」
(頑張って! 帝さんの理性!)
彼がずれた眼鏡をかけ直した。
「はあ……。虎牙部長には許して私には許さないとか、憎らしい人ですね」
「えっ――」
落ち着いてくれたのかと思いほっとした途端、伸びてきた帝の右手に、服の上から思いっきり乳首をつねられた。
「痛たたたた!」
今朝と違ってつねり方に容赦がない。
帝はそれで気が済んだのか、大きく息をついて体を離す。
それから顔を背けて言った。
「次から気をつけてください。可愛い顔で泣かれると、私の方がアナタに従いたくなるので困ります……」
「帝さん……」
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