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最終章 罪と愛
第29話
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それからユァンはバルトロメオに付き合って、市内の墓地に立ち寄った。
田舎ののどかな墓地しか知らなかったユァンとしては、こんな都会の真ん中に墓地があるというのは意外だったが、中に入ってみると確かにそこは祈りの場であり、故人との語らいの場だった。
「ここには誰が?」
白い墓石の前で聞くと、バルトロメオが小さく笑って答える。
「ユァンが気にしていた俺の元カレ」
「あっ……」
バルトロメオとの関係を苦に自死したと、ヒエロニムスが言っていた若い修道士のことだ。
墓碑に刻まれた名前を撫でながら、バルトロメオが話しだす。
「あの時は敢えて言うべきだとも思わなくて、説明しなかったんだが……。こいつは結構野心の強いやつでさ。学生時代にそこそこ有名人だった俺と付き合って、でも教会本部への推薦が決まったらあっさり俺をフッてきたんだ」
「ええっ?」
バルトロメオが誰かにフられるなんてことは、ユァンには信じがたいことだった。
でも現実なんだろう。
彼が続ける。
「3つ年下だった。付き合ってたのは2年半くらいか……。で、次の相手は俺よりずっとエラい人、その次はもっと。まあみんな教会関係者だな。そこでいろいろあったらしい。俺も相談に乗ったりはしていたが……」
バルトロメオの瞳に、悲しみの色が浮かんだ。
「恋をすると、自分を犠牲にしたくなることもあるらしい」
それはこのお墓に眠る人が、やっぱり恋人のために死んだということなんだろうか……。
「でも自分が自分を大切にしてやらなきゃ、そいつを大切に思っている周りの人間が悲しむだろう。だから俺は自己犠牲の精神が嫌いだ」
自己犠牲は好きじゃない、それは出会ったその日にバルトロメオが言っていたことだった。
あれは過去の恋人を想って言った言葉なんだと、ユァンは今になってようやく腑に落ちた。
「つまりバルトは、この人のことをとても大切に思っていたんだ……」
「天使みたいで悪魔みたいな、とてもキラキラしたやつだったよ」
彼の口元に、また笑みが刻まれる。
「けど、ユァンに出会って吹っ切れたな。これでも、もう恋はしないなんて思っていたんだ」
それから彼は墓石に向かって、照れくさそうにつぶやく。
「今、これでもかっていうほど恋してるよ」
彼に恋されているらしいユァンは、静かな墓地で顔を赤くするしかなかった。
田舎ののどかな墓地しか知らなかったユァンとしては、こんな都会の真ん中に墓地があるというのは意外だったが、中に入ってみると確かにそこは祈りの場であり、故人との語らいの場だった。
「ここには誰が?」
白い墓石の前で聞くと、バルトロメオが小さく笑って答える。
「ユァンが気にしていた俺の元カレ」
「あっ……」
バルトロメオとの関係を苦に自死したと、ヒエロニムスが言っていた若い修道士のことだ。
墓碑に刻まれた名前を撫でながら、バルトロメオが話しだす。
「あの時は敢えて言うべきだとも思わなくて、説明しなかったんだが……。こいつは結構野心の強いやつでさ。学生時代にそこそこ有名人だった俺と付き合って、でも教会本部への推薦が決まったらあっさり俺をフッてきたんだ」
「ええっ?」
バルトロメオが誰かにフられるなんてことは、ユァンには信じがたいことだった。
でも現実なんだろう。
彼が続ける。
「3つ年下だった。付き合ってたのは2年半くらいか……。で、次の相手は俺よりずっとエラい人、その次はもっと。まあみんな教会関係者だな。そこでいろいろあったらしい。俺も相談に乗ったりはしていたが……」
バルトロメオの瞳に、悲しみの色が浮かんだ。
「恋をすると、自分を犠牲にしたくなることもあるらしい」
それはこのお墓に眠る人が、やっぱり恋人のために死んだということなんだろうか……。
「でも自分が自分を大切にしてやらなきゃ、そいつを大切に思っている周りの人間が悲しむだろう。だから俺は自己犠牲の精神が嫌いだ」
自己犠牲は好きじゃない、それは出会ったその日にバルトロメオが言っていたことだった。
あれは過去の恋人を想って言った言葉なんだと、ユァンは今になってようやく腑に落ちた。
「つまりバルトは、この人のことをとても大切に思っていたんだ……」
「天使みたいで悪魔みたいな、とてもキラキラしたやつだったよ」
彼の口元に、また笑みが刻まれる。
「けど、ユァンに出会って吹っ切れたな。これでも、もう恋はしないなんて思っていたんだ」
それから彼は墓石に向かって、照れくさそうにつぶやく。
「今、これでもかっていうほど恋してるよ」
彼に恋されているらしいユァンは、静かな墓地で顔を赤くするしかなかった。
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