修道士たちは罪に濡れて愛に出会う

谷村にじゅうえん

文字の大きさ
76 / 115
第3章 獅子と牝山羊

第21話

しおりを挟む
その夜。修道士宿舎のユァンの部屋には、バルトロメオの代わりにルカが戻ってきていた。

「同室のヤツのいびきがうるさくてさ。それで思い出したんだよ、ここが空いてたって」

ルカは就寝時間に枕だけ持ってきて、空いているベッドにもぐり込む。
ユァンとしてはバルトロメオのためにシーツを換えておいたのだが……。
でもまあ、ルカが安眠できるならこれでよかったのかもしれない。

(けどバルトが夜中に来たら、お互いにビックリするよね?)

ふとそんなことを思ったが、ユァンも疲れていてその日はそのまま眠ってしまった。



ある日夢の中で、ユァンは雄の子山羊だった。
きれいな色のハナムグリを追いかけて遊んでいたら、いつの間にか仲間の群れが見えなくなっていた。
ここはどこだろう? 周りに見えるのは背の高い草ばかりで、自分がどちらから来たのかも分からない。

闇雲に歩くうち、薄暗いやぶの中に入ってしまった。
だんだんと前に進むのが怖くなる。
でもひとりでいるのも恐ろしい。
きっともう群れからは、だいぶ離れてしまっただろう。
耳元で蜂の羽音がして慌てて逃げる。
今は自分で自分の身を守らなければ。

目の前に木の柵に囲まれた明るい場所を見つけたので、柵の下にもぐり込み、そこへ入った。
狭い場所を通るのは得意だ。
ちょうど水たまりがあったので、僕はその水でのどを潤す。
白い前足が少し汚れた。

空を映す水面から顔を上げると、そこは明るく見晴らしがいいけれど、なんだか寂しい場所だった。
動物も虫も、生きているものの気配がない。
ああ、ここは墓地なんだなと、子山羊だけれど僕は気づいた。

ここは誰かをいたむための場所だ。
生きている生きものが、気軽に立ち寄るべき場所じゃない。
なんだか少し、雰囲気が怖いし。
少しだけ休んで戻ろう。
そうして日向で体を温めていると……。

ああ……。
僕は何か、とても美しいものに出会った。

墓石の前をゆっくりと進んでくる、大きな四つ足の生きもの。
立派なたてがみを持つ、黄金の獅子ししだった。

獅子は僕に気づくと、一旦足を止め、それからゆっくり来て鼻先を近づける。
食べられてしまうんじゃないかと思ったけれど、獅子は優しい目をしていた。
僕はすぐに好きになった。

顔をぺろりとめられ、胸が高鳴る。
僕は、ユァンです。
名前を聞かれた気がして、そう答えた。

獅子の前足に寄り添ってみると、お日さまみたいにあたたかい。
さっきまで群れのいる場所に帰りたかったのに、今はこの獅子のそばにいたいと思った。

そばにいてもいいですか?
恐る恐る額の角を擦りつけてみる。
獅子はいいよというように、じっとそこを動かなかった。
それからしばらく、たわむれるように獅子に体を擦りつけ……。

気がつくと僕は、雄の子山羊ではなくなっていた。
手足が長く、お腹の丸い牝山羊めやぎだ。

どうして雌になってしまったんだろう。
そう考えてみて、この獅子のそばにいるからだと気づいた。

僕は、あなたと結ばれたい。
自分の欲望に戸惑う。
なんだかとても恥ずかしい。

獅子は僕の様子が変わったことに気づき、不思議そうに周りを一周した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...