サイテー上司とデザイナーだった僕の半年

谷村にじゅうえん

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5章:棒を掲げるブルドッグ

第6話

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「あ――」

ミネラルウォーターで濡れた唇で、いきなり口を塞がれる。
ひんやりした舌が、僕の想いを暴くように唇の隙間をなぞった。

「お前は俺をどうしたいわけ? そんな健気なことされたら、お前のこと一瞬も手放せなくなる……」

キスをしながら、ソファの背に体を押しつけられる。
明るい光の中で、シャツのおなかのところから中をまさぐられた。

「あっ……」

口の中でだんだんと熱くなってきた舌が、一旦離れ、シャツを捲った胸元に落とされる。

「やっ、何するんですか……」
「またミズキを、泣かせるようなことがしたい」
「……っ……」
「好きだから」

立ち上がった胸の先を、優しく甘噛みされた。

「や、あっ……」
「その声、やっぱいいな。お前の体、ちゃんと俺のこと覚えてる?」

目の前の彼を、内側に深く受け止めた夜が脳裏を駆け巡った。
体はきつかったはずなのに、甘い吐息と囁かれた言葉を思い出すと、全身が痺れるような熱を持つ。

「ここ、想像しただけで硬くなってる」

昂ぶってしまった僕の雄の部分を目ざとく見つけ、相楽さんが左手でそれをとらえた。
スエットの上から触られただけなのに、涙があふれるような快感に襲われる。

「やだ……」
「それ、本気で言ってる?」

耳元で囁かれると、取り繕う余裕もなくなる。

「やじゃないです、本当は……触ってほしい」

自分から彼の手のひらに押しつける。

「こら……煽るなって」

相楽さんは笑いながら、僕の猛りを取り出した。
朝のリビングで恥ずかしい部分を晒しているこの状況に、耳の奥が熱くなる。
相楽さんの左手が、僕を丁寧にしごき始める。
その手の動きを目の端で追いつつ、僕は彼のもう片方の手を引き寄せた。

「どうした?」
「こっちの手も、好きなんです」

ペンキがこびりついた右手の人差し指を、深く口に含む。
彼の手が驚いたように震えた。
僕はそのことを直に感じながら指を吸う。

「……っ、ミズキ」

相楽さんが、熱っぽい声で名前を呼んだ。
人差し指の形を舌で確かめ、中指の長さをのどで測る。
時々戸惑ったように強ばるその手が、苦しいくらいに愛おしい。
指をくわえたまままぶたを開けると、潤んだ瞳で僕を見ている彼と目が合った。

と、口から指を引き抜かれ、代わりに舌をねじ込まれる。

「んんっ」

唾液でベトベトに濡れた右手の指は、僕のひざの裏側をくぐって後孔を撫でた。
膝下に引っかかったままだった下着とスエットを脱がされ、下半身を裸にされる。

「お前にこの指をねじ込むのは怖かったけど、この際だからやってみる」
「え……?」
「ミズキはそのまま、エロいことでも考えてろ」
「今の状況以上にエロいことなんて、思い浮かびませんけど……」

そう答えると、相楽さんは恥ずかしげに笑った。

「だったら……俺のここでも触ってなさい」

彼は片手で器用に下を脱ぎ、硬くなったものを僕の手のひらに押しつけた。

「とても男同士で、昼間からすることとは思えませんね」
「お前な、そうやって途中で冷静になるのはやめろよ」
「だって……」

冷静なことを言ってしまうのは、今の状況が気恥ずかしいからだ。

「ああっ……」

僕の言い訳を待たずに、相楽さんの2本の指が後ろに侵入してくる。

「……っ、1本ずつじゃないんですか」
「もう、余裕で入った」
「嘘だ……」

指の関節の硬さを内側に感じ、息が詰まる。

「息しろ、力抜け」

言われるままに呼吸を繰り返すと、ゆっくりと中を掻き回された。

「ミズキの気持ちいとこ、どこだ……左手なら見つけられたのにな」

いじられているところより先に、胸が熱くなる。

「全部、いいです……」
「痛いんじゃないのかよ!」
「相楽さんがしてくれることは、全部嬉しい」
「……っ、お前な」

手元を見ていた彼の視線が、熱っぽさを帯びてこちらを向いた。

「そんなこと言われたら、俺の方が我慢できなくなるだろ」

絡まり合った体がソファからずり落ち、僕たちはフローリングに敷いたセンターラグの上でキスをした。
その間も2本の腕は、お互いの気持ちいい場所を探り合う。
さっきから握っている相楽さんの猛りが、明らかに硬度を増している。
半年前、これを受け止めた時の痛みと衝撃を思い出す。

痛いのは分かっている、それなのに僕は自分から彼を入り口へと導いた。
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