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3章:ハワイアン・ジントニック
第3話
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ところで、今まで2人になる暇もなく、早乙女さんから聞いた話は相楽さんに伝えられずにいる。
伝えるべきなのかどうか、迷う部分もあるけれど……。
(そういえば、ホテルの部屋割りってどうなってるのかな?)
サングラスを戻してみんなを追いかけながら、相楽さんの横顔をそっと見た。
*
それから僕たちはハワイアンバーガーの店でブランチにしては重すぎる食事を楽しみ、ホテルのフロントに荷物を預けてビーチに出た。
(これは……さっきのサングラス、買っておけばよかったかも……)
日陰を探して辺りを見ると、水着に着替えた相楽さんがやってくる。
「水着、持ってきたんですか?」
後ろから来る他のメンバーは皆、無難なサーフパンツを穿いているのに、相楽さんだけはどういうわけか体の線の出る水着を身につけている。
もともと自信家な相楽さんは、自分の体にも当然のように自信を持っているらしい。
そのことに少し驚いていると、逆に僕の方が彼から怪訝な目を向けられた。
「ハワイに来て泳がないとかないだろ。なんでミズキは水着じゃないんだよ」
「そう言われても……」
ここへ来る前は仕事を片づけることで精いっぱいで、着いてからのことを考える余裕なんかなかった。
「相楽さんが言ってくれないからいけないんですよ。社員旅行のこと、聞いたの今週に入ってからですから」
そんな苦情を訴えると、彼は意表を突かれたような顔をする。
「え……知らなかったのか?」
「知らなかったのか、じゃないですって。橘さんも、相楽さんが僕に言ってるものだと思ってました」
「そうだったのか……」
僕に謝るでもなく、相楽さんはホテルを振り返り、顎を撫でた。
「……なんですか?」
「いや、水着、適当なのでよければ売ってたなと思ってさ。これから買いに行こう」
「えっ、いいですよ……。別に泳ぎたい気分でもないし」
相楽さんと何人かは水着でビーチに出てきたけれど、橘さんや久保田さん辺りは散歩にでも行くようなスタイルでデジカメを持っていた。
世界的に有名なこのワイキキビーチを、写真に収めておかない手はない。
そうしておけば何かしらに使えると考えてしまうのは、デザイナーのさがだ。
(水着はいらないけど、デジカメは持ってくればよかったな)
そんな僕が持って出たのは、読みかけの文庫本が1冊。
成田空港で暇つぶしのために買ったものだった。
「見たかったな、ミズキの水着姿……」
相楽さんは冗談なのか本気なのか、そんなことを言っている。
「何言ってるんですか。男の水着なんて、見て楽しいものでもないでしょう」
そう返しつつ落とした僕の目は、言葉とは裏腹に相楽さんのボディラインに吸い寄せられてしまう。
引き締まった腹筋と、発達した太腿のコントラストにドキッとした。
(何着ても似合うとは思ってたけど、ちゃんと鍛えてるんだなあ……)
「ちょくちょく飲んでるくせに、どうしてそんな引き締まってるんですか」
ぽろりと漏らした疑問に、相楽さんが得意げな顔をする。
「それはまあ、意識の違い?」
「もしかして、僕に自慢してます?」
「つまりミズキは、羨ましいって思うんだ? あ、腹筋さわる?」
「さわりません……。そういうこと言ってるとセクハラで訴えられますよ」
「なんだそれ、女子か!」
「女子で悪かったですねえ……」
呆れ顔をしてみせて、話を打ち切るように横を向く。
すべてを暴くような明るい日差しに、内心がさらけ出されてしまうような気がして怖かった。
相楽さんはそんな僕の気持ちに気づく様子もなく、あっけらかんと話を続ける。
「そうだミズキ、少し泳いだら水上スキーをしようと思ってるんだけど」
「水上スキーって……もしかして、あれですか!?」
サーフボードのようなものに乗り、ボートに引っ張られて海上を走る人の姿が見える。
伝えるべきなのかどうか、迷う部分もあるけれど……。
(そういえば、ホテルの部屋割りってどうなってるのかな?)
サングラスを戻してみんなを追いかけながら、相楽さんの横顔をそっと見た。
*
それから僕たちはハワイアンバーガーの店でブランチにしては重すぎる食事を楽しみ、ホテルのフロントに荷物を預けてビーチに出た。
(これは……さっきのサングラス、買っておけばよかったかも……)
日陰を探して辺りを見ると、水着に着替えた相楽さんがやってくる。
「水着、持ってきたんですか?」
後ろから来る他のメンバーは皆、無難なサーフパンツを穿いているのに、相楽さんだけはどういうわけか体の線の出る水着を身につけている。
もともと自信家な相楽さんは、自分の体にも当然のように自信を持っているらしい。
そのことに少し驚いていると、逆に僕の方が彼から怪訝な目を向けられた。
「ハワイに来て泳がないとかないだろ。なんでミズキは水着じゃないんだよ」
「そう言われても……」
ここへ来る前は仕事を片づけることで精いっぱいで、着いてからのことを考える余裕なんかなかった。
「相楽さんが言ってくれないからいけないんですよ。社員旅行のこと、聞いたの今週に入ってからですから」
そんな苦情を訴えると、彼は意表を突かれたような顔をする。
「え……知らなかったのか?」
「知らなかったのか、じゃないですって。橘さんも、相楽さんが僕に言ってるものだと思ってました」
「そうだったのか……」
僕に謝るでもなく、相楽さんはホテルを振り返り、顎を撫でた。
「……なんですか?」
「いや、水着、適当なのでよければ売ってたなと思ってさ。これから買いに行こう」
「えっ、いいですよ……。別に泳ぎたい気分でもないし」
相楽さんと何人かは水着でビーチに出てきたけれど、橘さんや久保田さん辺りは散歩にでも行くようなスタイルでデジカメを持っていた。
世界的に有名なこのワイキキビーチを、写真に収めておかない手はない。
そうしておけば何かしらに使えると考えてしまうのは、デザイナーのさがだ。
(水着はいらないけど、デジカメは持ってくればよかったな)
そんな僕が持って出たのは、読みかけの文庫本が1冊。
成田空港で暇つぶしのために買ったものだった。
「見たかったな、ミズキの水着姿……」
相楽さんは冗談なのか本気なのか、そんなことを言っている。
「何言ってるんですか。男の水着なんて、見て楽しいものでもないでしょう」
そう返しつつ落とした僕の目は、言葉とは裏腹に相楽さんのボディラインに吸い寄せられてしまう。
引き締まった腹筋と、発達した太腿のコントラストにドキッとした。
(何着ても似合うとは思ってたけど、ちゃんと鍛えてるんだなあ……)
「ちょくちょく飲んでるくせに、どうしてそんな引き締まってるんですか」
ぽろりと漏らした疑問に、相楽さんが得意げな顔をする。
「それはまあ、意識の違い?」
「もしかして、僕に自慢してます?」
「つまりミズキは、羨ましいって思うんだ? あ、腹筋さわる?」
「さわりません……。そういうこと言ってるとセクハラで訴えられますよ」
「なんだそれ、女子か!」
「女子で悪かったですねえ……」
呆れ顔をしてみせて、話を打ち切るように横を向く。
すべてを暴くような明るい日差しに、内心がさらけ出されてしまうような気がして怖かった。
相楽さんはそんな僕の気持ちに気づく様子もなく、あっけらかんと話を続ける。
「そうだミズキ、少し泳いだら水上スキーをしようと思ってるんだけど」
「水上スキーって……もしかして、あれですか!?」
サーフボードのようなものに乗り、ボートに引っ張られて海上を走る人の姿が見える。
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