殺人鬼の屋敷

10章 嵐の後

　～屋敷 廊下～

二人が帰るのを見送ったあと硝子や木片が飛び散った玄関ホールを歩きながらフィロは静かに溜息をついていた

フシール「嵐が去っていったね～」

フィロ「アイツ等よりもフシールの方が嵐だろ…この惨状どうする気？」

フィロ「シャンデリア落ちてないからまだマシでしょ？」

ラルカ「扉から階段に行くだけでも歩きにくいですね」

フィロ「元の状態まで戻すの地獄だぞ…」

ラルカ「屋敷に修理師の方はいないんですか？」

フシール「奴隷の中に居たかな？」

フィロ「あ～どうだったかな…というかその呼び方やめろよ」

フシール「事実じゃん、命知らずが喧嘩売って負けたくせに死にたくないって言ってきたんだから」

ラルカはその当時の瞬間を思い出したのかフシールが表情を変えずに淡々と言うその光景に寒気を覚えながらも疑問を投げかけていた

ラルカ「…殺さなかったんですか？」

フィロ「殺してないよw自分から玩具になりに来たんだからそう簡単に殺さないさ」

フシール「フィロ兄に命乞いなんてしちゃ駄目だよ…生地獄を延々と味わうだけなんだから…」

フィロ「フシールとラルカも試してみる？w」

フシール「絶対嫌です…」

ラルカ「お兄様に壊されるなら本望ですよ？」

フィロ「えー…そう返してくるかぁやっぱりラルカも大概狂ってるよなw」

二人の異様な会話を聞きながらラルカを一瞬だけ見たフシールが小さく呟いた

フシール「まぁ既にフィロ兄に壊されたようなもんだけど…」

フィロ「フシール、今なんか言ったか？」

フシール「んー？何も言ってないよ～…地獄耳かな…？」

フィロ「そうそうw地獄耳だから小声で言っても聞こえるんだよね～」

フシール「怖いって！というか…これどこ向かってんの？」

フィロ「地下牢。修理できそうな奴いるかの確認と、まだラルカに見せた事なかったなぁと思ってね」

ラルカ「フシール姉様はお休みになられますか？」

フシール「そうしようかな…動き回ったから眠い」

そう言いながら目を細めてあくびをしていた

フィロ「お前は無茶な戦い方するから疲れるんだろ」

フシール「寝れば回復するから大丈夫だよ戦闘中はアドレナリン出てるしてwあ～そだラルカちゃん鍵預けとくからフィロ兄との用事終わったら私の部屋来て手当してくれない？」

ラルカ「わかりました。なるべく早く向かいますね」

フィロ「どうせ寝てるから傷口つついて起こしな」

フシール「寝てたら普通に起こしてね？ラルカちゃん優しいからそんな事しないよね！？」

ラルカ「流石にしませんよ…w」

そのままフシールは途中の階段で自室のある三階に登っていき、フィロとラルカは並んで暗い廊下を進んでいった。新たな客人が訪れた事で濃い一日になったせいか時間はすぐに流れて行き、嵐の様な一日はもう終わろうとしている

人の消えた玄関ホールではステンドグラスから差し込む月明かりに照らされ割れた硝子や周囲に飛び散った血痕がキラキラと光る中、扉に鍵がかかる音が鳴り響いた