上 下
138 / 158
皇国復活編

今、助けるからね!

しおりを挟む
「この火山に溜まるマグマの奥底にヴィラス様がいらっしゃるのか・・・・」
「場所が分かったのは良いが、どうやって辿り着けば良いんだ?マグマになんか潜れないだろ?」
「うむ・・・・我ら白風の一族でもそこまでの耐性は無いな」
「どこかに入るための入り口があるんじゃないのかしら?」
「そのような場所は今まで聞いたことが無いが・・・・魔法で隠されているのかもしれない。里の皆に探すよう伝達しよう」

 確かにみんなの言う通り普通の人間じゃマグマの中に潜ったら一瞬で焼け死んじゃうだろうね。この目に見えるほど高密度かつ高濃度の魔力からして、町の人達を集めてマグマに魔法を掛けたとしても、ヴィラスに辿り着くための道を作ることは出来ないだろうね。俺が探してみた感じだとレイランやディオクスが言うようなヴィラスに辿り着くための秘密の道みたいなのは見つけられなかった。だけど、みんなには俺がいるでしょ?

「ううん、ディオクスそれはしなくて良いよ~」
「何故でしょうか?」
「どれだけ探しても見つからないからだね。ヴィラスに辿り着くには絶対にこのマグマを通って行かないと駄目なんだ」
「それでは・・・・」
「大丈夫、俺が居るでしょっ」
「クーア一体何をするつもりなんだ?」
「物凄く簡単な事だよ。水の障壁を張ってマグマの中を突き進むんだ!準備は良いかな?」

 先に進んだらすぐに地上に戻ってくることは出来ないよ。いくら俺でも休憩を挟まずに何度も何度もマグマの中を突き進むことは出来ないからね。

「クーア、そんなことをしたら魔力が・・・・」
「大丈夫だよ~俺の魔力は沢山あるからね。でも一度に連れて行けるのはこの人数が限界だね」
「戦士達を呼ぶことは出来ないか・・・・畏まりました。私は常に戦えるよう装備は整えておりますので何時でも行けます」
「私達は装備を変えた方が良さそうね。クーア、大仕事をする前で悪いのだけど私達の装備を出してくれないかしら」
「はーい」

 みんなは旅人のような格好から、レイランは王都で魔法師団の制服へと着替え首元からは大きなサファイアの首飾りをつけウォルはウォルのお父さんが来ていたような白く金色の刺繍が入ったゆとりのあるズボンに白に赤色の刺繍が入った服を着て、いかにも皇子様って感じだ。アルベルドは太陽の光を反射して輝く鎧を身に着け、シャールクは黒く体の動きを阻害しないゆとりのある服へと着替えた。

「うわ~ウォル皇子様みたい~」
「一応皇子だからな」
「でも、それで戦えるの?」
「あぁ王族は常に戦えるように正装は戦闘服になっているんだ。魔法も掛けてあるから防御力もそこらの鎧より高いんだぞ」
「そうなんだ~」
「この服達が俺達が持ってる防具の中で一番なんだ。普段は目立つから着ないけどな」
「じゃあ準備は良いってことだよね?」
「おう」
「えぇ」
「勿論です」
「それじゃあ、行くよ~!」

 俺はみんなを包んでいる水の膜に魔力を大量に送り、マグマに負けないように強化するとみんなを水の膜ごと浮かび上がらせ火口からマグマへの中へと入って行った。思っていた以上の火の魔力に水の膜が押されそうになるけど、頑張って魔力を繰り続け消費を抑えられるよう水の膜で魔力が循環するように魔法を変えていく。

「凄いわね・・・・」
「本当にマグマの中に入ってるのか・・・・」
「クーア、大丈夫か?魔力を送ろうか?」
「だい・・・・じょうぶ!!」

 マグマの中に入るなんて初めての事だから適した魔法が作れてなかっただけ!火の魔力を吸収して水の魔力に変換すればもっと楽になるはず!だけど、火の魔力が強すぎて頭が痛い・・・・でも頑張らないと!

「辛そうね・・・・」
「俺達は何も出来ないのか・・・・」
「前にやった地面に潜り込む魔法では無理なのか?」
「あれはね・・・・グッ」

 もう話している余裕も無い!あの魔法は自分達が進む先に新たな水路を作り出しながらその道を通るって魔法なんだけど、このマグマの中に水の道なんて作り出せないしもし出来たとしても行き先に必ず水を作り出さなきゃいけないから魔力の消費が多き過ぎるんだよね。だから、水で周囲を守って突き進む方が安全だし魔力の消費も少ないんだよね~だけど、マシなだけで普通辛いけどね!!

「話す余裕も無さそうね」
「なにか・・・・そうだ水の石。前にお守りとして買ったけどこれなら水の魔力が宿っているし少しはマシになると良いんだが」
「俺も水の装飾品を付けているな。クーアに貸そう」
「なら私のサファイアも良さそうね」
「うむ、俺のも渡そう」
「少しでも力になるのであれば」

 みんなは俺に水の力が宿っている装飾品や宝石を俺に身に着けてくれた。僅かな力だけど、みんなの思いが本当に嬉しいよ!みんなのことはしっかり守ってヴィラスの元まで連れて行ってあげるからね。そして、必ずヴィラスを助けるんだから!

 マグマの奥の奥へと突き進む俺達。周囲はマグマに囲まれて俺達が今何処に居るかは見た目からじゃ分からないけど、順調に進んで今は半分ぐらいかな?このペースなら魔力も何とか持ちそうだね。俺の役目はみんなをヴィラスの元に連れて行くだけじゃなくてヴィラスを治すこともしないといけないんだから魔力は残しておかないと!

「マグマの色が黒くなってきたな・・・・」
「この感じ・・・・もしかして汚染された魔力?」
「うん・・・・ヴィラスの所から汚染された魔力が漏れ出してマグマと少し混ざっちゃったみたい」
「なんと」
「だけどマグマに宿ってる魔力が常に焼き尽くし続けているから、地上には影響が出てないみたいだね。あの噴火を起こすのも多分だけど、この汚染された魔力を焼くためだろうね」
「そういう仕組みだったのか」
「待てよ?汚染された魔力を焼き尽くすためにあの噴火が起きているのなら、周囲に汚染された魔力があるってことは・・・・」
「あ」

 ヤバい!段々火の魔力が強くなってる!流石の俺でもあの噴火をまともに食らうのは不味いって!ちょっとヴィラス!?俺達が来てるのを感じて無いの!?

「いそげぇえええええええ」
「うお~クーア頑張れ!!」
「出来る!クーアなら出来るぞっ」
「魔力を上げるから頑張って!」

 噴火の予兆を感じた俺は慌てて移動するスピードを速めて、奥へと潜っていく。今からマグマの外に出るのは無理だし、あと少しでヴィラスの元に到着するんだから前に進んだ方が良い!!はやくはやく!!

「マグマが・・・・」
「うお~あと少し~!!!」

 マグマが急速に動き出したことにディオクスが唖然とするような声を出したが、そんなの気にしてられないし中に居る人達が吹き飛ばされる心配もしてられない!中にいるみんなが姿勢を崩し倒れてしまう程スピードを出すと噴火する瞬間、何とかヴィラスのいる洞窟にへと駆け込むように飛び入り難を逃れることは出来た。

「危なかった~」
「間に合ったのね」
「ウォル、悪いが上からどいてくれ」
「あ、すまない」

 倒れ込むように到着したからみんな体が重なってごちゃごちゃになっちゃってる。ごめんね?でも、そうしないと間に合わなかったんだよ!

「着いたのか?」
「うん!明かりをつけるね」

 みんなは立ち上がると周囲を見渡すが暗闇に包まれ、一つも先も見えないので俺は光の魔法で周囲を照らしてあげるとそこは地獄のような光景が広がっていた。

「これは・・・・」
「酷い」
「何なんだこれは」
「あいつらは魔物か?」

 真っ暗闇の洞窟の中には、人がドロドロに溶けたような姿をした魔物が無数に湧いていた。その中には武器や鎧を纏っている姿のような奴もいて、まるで人間が魔獣になったみたいだ。そしてその無数の魔物の先には黒い魔力を放っている大きく翼のある生き物が横たわっている。あれは・・・・

「ヴィラス様!!!!」
「なんてお姿に・・・・」
「あれでは、もう・・・・」
「今直ぐにお助けに参ります!!!」
「駄目だよ」

 ディオクスは体の大半が骨と化し、肉は爛れ話に聞いていた光輝く美しい鱗が光を失っている姿を見て一目散に駆け寄ろうとしたがそれを俺は魔法を使って止めた。

「クーア様、お願いです行かせてください!」
「落ち着いて、みんなもそんな悲しそうな顔をしないで」

 ウォル、レイラン、シャールク、アルベルドもヴィラスの悲惨な姿をみて悲痛な表情を浮かべ怒りと悲しみで飲まれそうだ。確かに見た目は泣いちゃいそうなほど酷いけど・・・・

「大丈夫、ヴィラスはちゃんと生きてるから。しっかりとヴィラスの魂を感じるからまだ死んで無いし汚染に負けて無いよ。助けに行きたい気持ちは分かるけど、この洞窟は汚染された魔力で満たされていて水の膜から出たら人間じゃ即死しちゃうよ」

 ヴィラスの遺骸からは目に見えるほどの汚染された魔力が噴き出しているんだ。人間があの魔力を受けたら生きていられるはずがない。

「それじゃあ何も出来ないのか!?」
「そんな!」
「そうだとしても、何もしない訳にはいかないだろ!」
「この身は竜様と国に捧げたものだ。死ぬ運命だとしてもっ」
「だから、落ち着いてってば。ヴィラスを救うためにみんなにはして欲しいことがあるんだ。聞いてくれる?」
「勿論だ!」
「何だってするわよ!」
「良かった。それじゃあ、みんなで協力してヴィラスを助けようね!」

 やっと会えたね。今は会話が出来るような状態じゃ無いけどすぐに助けてあげるから!
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ
ファンタジー
※高頻度で更新していく予定です。  普通の高校生、枷月葵《カサラギアオイ》。  日常を生きてきた彼は突如、異世界へと召喚された。  召喚されたのは、9人の高校生。  召喚した者──女神曰く、魔王を倒して欲しいとのこと。  そして、勇者の能力を鑑定させて欲しいとのことだった。  仲間たちが優秀な能力を発覚させる中、葵の能力は──<支配《ドミネイト》>。  テンプレ展開、と思いきや、能力が無能だと言われた枷月葵《カサラギアオイ》は勇者から追放を食らってしまう。  それを提案したのは…他でもない勇者たちだった。  勇者たちの提案により、生還者の居ないと言われる”死者の森”へと転移させられた葵。  そこで待ち構えていた強力な魔獣。  だが、格下にしか使えないと言われていた<支配《ドミネイト》>の能力は格上にも有効で──?  これは、一人の少年が、自分を裏切った世界に復讐を誓う物語。  小説家になろう様にも同様の内容のものを投稿しております。  面白いと思って頂けましたら、感想やお気に入り登録を貰えると嬉しいです。

処理中です...