裏切られた水龍の俺は皇子達と国を復活させます!~俺を食べようとした奴なんかに水はあげない!~

和吉

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皇国復活編

俺、魔境を進むよ!2

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 俺達は昼の休憩した後もひたすら魔獣達の襲撃を退けながら前へ前へと進んで行く。大きな顎を持った甲虫や鎧のような皮膚を持った転がる獣、音もなく地中を掘り進め砂の中に引きずり込もうとするモグラなど、今まで見たことが無い魔獣や魔物に襲われ続けまだ一日も経ってないのに、みんなの顔には少しの疲労が浮かんでいる。

 知らない魔物に何時狙われるかも分から無い危険に晒され、砂嵐によって自分達が歩く道すら見えない。こんな状況に長時間さらされたら、どれだけ鍛え上げられた戦士だとしても疲労は溜まってしまうだろう。唯一アルベルドだけが平気そうな顔をしているが、みんなをネリアまで導くという責任が重い役割を持っている。顔に出てないだけで疲れは感じているだろうね。

「ふぅ・・・・思ってたより大変ね」
「甘く見ていた訳じゃないがここまで大変だとは」
「この砂嵐が本当に邪魔だよな~少しの間でいいから止んでくれると良いんだが・・・・」
「俺が来た時は数時間ほど止んでいる時間が有ったが・・・・この様子だとそれも無さそうだ」
「はぁ・・・・」
「この状況に慣れるしかないな、あと数日もすれば慣れるだろう」
「そうね、誓いの地に行くまでもこんな感じだと考えたら慣れないといけないわね」
「そうだな~」

 アルベルドも知らない魔獣達の対処法は一つ一つ探っていくしかない。あれから混ぜ物との戦闘が一度だけ有ったが、今回は簡単に倒せたので適応は出来ている。視界が遮られるのには、中々慣れないが早めに敵を感知することによって何とか対処は出来ている。生き物は同じような状況に長く居れば段々慣れていくと言うが、この状況に慣れるのは大変そうだ。

「そっちは砂嵐が無いだけ少しマシだぞ」
「あら、そうなの?」
「うむ、魔物と大地の荒れ方が段違いだがな」
「結局過酷な事には変わらねーのかよ」
「ほらほら、文句言ってないで進むわよ」
「うっす・・・・!前方一体、なにか早いのが来る!」

 シャールクの声に反応して全員が武器を抜いて、迫りくる何かに構えたが何時まで経っても風の防壁の中に入ってくる様子が無い。だけど、壁の向こうに居る気配は感じるので、俺達を待ち伏せするつもりかな?

「入ってこないな・・・・」
「でもそこに居るわよね」
「進行方向で待たれると少し厄介だな」
「シャールク、位置は分かってるな?」
「勿論」
「クーア、合図で前に居る奴まで一瞬で防壁を広げられるか?」
「は~い」

 シャールクとレイランは魔法の準備を行い、何時でも放てるように何かが居るだろう位置に狙いを定めアルベルドは盾をずっしりと構えその後ろにウォルが待つ。

「今だ!」

 アルベルドの合図で一瞬で風の防壁を縦長に伸ばし、待ち構えている敵だと思われる奴を防壁内に入れるとそいつは短い手足にとても長い胴体を持った四本足の毛の生えて小動物だった。ぱっと見は可愛らしいが、尻尾には剣を極限まで薄くしたような長い刃を持っていて俺達を視認した瞬間、俺達を獲物だと定めたようだ。

「カマイタチだ!撃て!」

 アルベルドはカマイタチを視認した瞬間、シャールクとレイランに合図を出し二人はカマイタチに向けて魔法を放つが、素早い動きで躱してしまう。

「速いな!」
「なら、これはどう?」

 矢や放った魔法では避けられてしまうならとレイランはアルベルドの前方の全てを大地を隆起させ、岩による槍地獄と化した。だが、カマイタチはその攻撃も避けきり、素早い動きで槍の間を抜けながらアルベルドの元まで行き一瞬消えたかと思う程の速さで尻尾による攻撃をした。

カーン

 軽いようで強い音を奏でながらアルベルドは盾で攻撃を受け止めると、受け止められたカマイタチが空中に浮いている隙を狙って、ウォルがアルベルドの後ろから出てきて切り裂いた。

「ふう・・・・」
「なるほどな、カマイタチか」
「凄い速さだったわね」
「クーア、こいつは良い素材になるから拾っておいてくれ」
「は~い」

 俺はカマイタチをポケットにしまい、風の防壁を元に戻すと

「カマイタチってあんな風に待ち伏せするのか?」
「うむ、あいつらは不意打ちで獲物をしとめに行くから視界が晴れているこの中まで入ってこなかったんだろう。大方他の魔獣が俺達を襲った時に乗じて、漁夫の利を狙っていたんだろう」
「他の魔獣との戦闘中にあいつが来られると少し厄介ね」
「あぁカマイタチだと思うものは、早めに討伐した方が良いだろう」
「分かった」
「カマイタチの尻尾は優秀な武器や道具になるんだよな~良い収穫だぜ」
「うむ、柔らかいが固く切れ味も鋭い砂漠の民にも喜ばれるぞ」

 尻尾が金属になっている動物なんて珍しいね~この世界には俺の知らない生き物に溢れている。そういった動物を知れるのはこの度の良い所だよね~まぁその動物達に襲われるけどね。

「ふぅ~ここは環境は最悪で厄介な奴ばかりだけど、色々な素材が集まると考えると良い所ね。環境は最悪だけど」
「二回言ったな」
「仕方が無いでしょ~ここは魔法師にとっては最悪よ」
「まぁそうだろうな」

 魔法を主に使って戦っている人はこの中ではほぼ無力と言っても良いほど、弱体化してしまう。だからと言って近接が得意な人が楽かと言ったらそれも違う。常に何時襲い掛かるか分からない状態で、戦い続けないといけないし足場も悪く踏み込めない。

「クーアが居なかったら大変な状態だったなこれ」
「えぇ本当に助かるわ」
「えへへ~」
「確かにクーアのおかげでかなり楽にはなっている。だが、油断はするなよ。決して装備は外さないように」

 今ウォル達が付けている装備は、スカーフで口を覆い目にはゴーグル、服は断熱性と防塵性に優れ通気性の良いゆったりとした麻の服に防御を固めたローブ。頭には布を巻き、手袋を着け砂が掛からないようにしている。俺の風の防壁の中に居る間は、砂が掛かる事は無いけど、もし俺と逸れたり防壁の外に飛ばされてしまった時生き残れるようにみんなは決して装備を外そうとはしない。
 アルベルドが言うには、砂漠では魔獣や魔物も恐ろしいが一番恐ろしいのは自然だという。踏ん張る事の出来ない足場に、常時俺達を照らし続ける陽射しに食料も水もあまりない大地、体から水分を奪っていく暑さ。この砂漠にある全てが、俺達の体力を容赦なく削っていく。

 この魔境の中も砂嵐で陽射しが遮られ、俺の防壁があるのに中々に暑い。みんなを冷やしてあげたいけど、風の循環と浄化、防壁に手一杯で水を作り出してあげることぐらいしか出来ない。みんな、有難いと喜んでくれてるけど竜種なのにこれぐらいしか力になれないなんて情けないよ・・・・

「勿論だ」
「少し動き辛いけどこれが無いと大変なことになっちゃうものね」
「魔道具によってある程度の暑さは耐えられるが、中々だな」
「アルベルドは平気そうだよな~」
「うむ、もっと暑くても大丈夫だ」
「うげぇ・・・・」

 暗にここより暑い場所があるという事を言うアルベルドに凄い嫌そうな顔になったシャールクは溜息をつきながら

「冷却の魔道具増やそうかな」
「もうそれ以上はつけられないだろ?」
「ん~何を減らすか考えておくか」

 俺達はまた先の見えない魔境を突き進む。
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