裏切られた水龍の俺は皇子達と国を復活させます!~俺を食べようとした奴なんかに水はあげない!~

和吉

文字の大きさ
上 下
46 / 158
皇国復活編

俺、お城の裏側を知ったよ!

しおりを挟む
 夜遅くまで続いた宴はウォルの妹であるミランが眠ってしまったことによって解散となり、俺はみんなと別れてウォルの部屋に戻って一緒に寝たよ~。
 そして朝日が部屋に降り注ぎ、自然とウォルと一緒に起きた俺達は、俺が作った水で顔を洗って、レイランに教えてもらった光属性の魔法浄化を使って全身を綺麗にする。ウォルは、寝間着を皇子様が着ているような白い布に、金色の刺繍が入った服に着替えている。

「ウォルってそういう服着るんだね~」
「王城では色々な人と会うから一応な。本当はいつも着ている服の方が良いんだか」

 ウォルは旅の間は、灰色の服に青スカーフを首に巻いていた。灰色の服の袖には細かい刺繍が入っていて洗練されているけど、華やかさも残っている服を着ていた。それと、装飾品も色々つけていたけど聞いたら全部戦闘に役立つ魔道具なんだって。
 今着けているピアスや腕輪、ネックレスなどの金で出来ている装飾品はそういう機能は無く、完全に飾りなんだそう。

「お~ウォル皇子様っぽい!」
「一応、皇子だからな」

 普段の格好は戦士って格好だから、あまりウォルが皇子だという事を気にしてなかったけどこういう恰好をするとウォルが皇子だという事をしみじみと感じる。今のウォルの格好は、昨日会った王様やウォルのお兄さんとよく似ていて、しっかり王族なんだよね~

「その格好もカッコイイよ!」
「そうか、ありがとな」

 ウォルは笑いながら俺の頭を撫でてくれて、色々と準備をしていると扉がノックされバトラかなと思ったら

「ウォル、俺だ~」

 返事する合間も無くシャールクが中に入ってきた。シャールクは何時もとは違う黒に明るい紫の装飾がされた服を着ていて一瞬分からなかったぐらい変わっていた。

「シャールクか」
「頼む匿ってくれ!」

 ウォルは入ってきたシャールクを呆れたように見ると、クッションに座る様に手で示した。シャールクは、うんざりとした顔をしながらクッションに座ると大きな溜息をつき

「助かったぜ・・・・」
「シャールクどうしたの~?」
「どうせ、団長の訓練から逃げてるんだろ?」
「だって、バルバゼル団長の訓練とか地獄で有名なんだぜ?そんな訓練誰が喜んで出るんだよ」
「はぁ、バルバゼル団長はこの国の中でも上位に入る実力の持ち主だ、そんな人に指導して貰えるなど光栄だろ?」
「ウォルはそうかもしれないけど、俺は違うんです~」

 ウォルは戦う事が好きというより自分を鍛えるのが好きみたい。魔法の訓練をあれから暇が有ればやってるし、一日のうちある程度時間が取れれば剣の鍛錬をしてるんだよね。そのおかげでだいぶ魔力を操られるようになってきている。 
 シャールクは、ウォルと同じぐらい強いけどあんまり鍛錬をしてるところを見たことが無い。いつも地図を眺めていたり、資金を確認していたり人と話して情報収集をしていることが多いね。街での顔も広いし、王城に来るまでの道で何度もシャールクが声を掛けられていた。

「まぁゆっくりしたい気持ちは分かるが・・・・」
「クーアとウォルはオーラン様たちの所に行くんだろ?俺も一緒に行くぜ!」
「付いてくるのは構わないが、逃げ込むならば俺の場所以外の場所にするべきだったな」

 そう言ってウォルは扉を見つめると、ダンッと大きな音を立て扉が開かれそこには魔物みたいに怖い顔をしたアルベルドが

「皇子失礼します」
「あぁ構わない」
「ゲッ!何でバレたし!」
「お前が行きそうな場所ぐらい把握している。お前だけ逃げようなんて・・・・そんな事は許さない」
「クソッ」

 シャールクとアルベルドだと、アルベルドの方が強い。だから、シャールクはアルベルドとやり合うのでは無く逃げる事にした。人間の姿より獣姿の方が早く動けるので、一瞬で豹の姿に変わりアルベルドの横をすり抜けようとしたが・・・・

「逃がすか!」
「ぐぇ」

 シャールクは素早い動きが得意だけど、アルベルドも短距離であれば驚異的な動体視力と身体能力にによってシャールクの素早さに対応できる。アルベルドは逃げようとしたシャールクの首根っこを掴み持ち上げる。

 シャールクってその姿でも結構デカいけど、それを片手で持ち上げられるアルベルドって・・・・人のことを言えないけど、凄い怪力だよね。

「さぁ一緒に地獄をあじわいに行くぞ」
「嫌だ~~~~」
「はっはっは、逃げようとしても無駄だ。全く一人だけ逃げようなんて酷いじゃないか。そうだ、お前が逃げようとした事を団長に言ってやろう」
「ぬえ!?それだけは勘弁を!!!!」
「許さん、皇子失礼いたしました」
「あぁ」
「クソおおおおおおおおお」

 アルベルドははっはっはと悪役みたいな笑い方をしながら、暴れるシャールクを捕まえ部屋を出て行った。

「まるで嵐だな・・・・」
「シャールクも大変だね~」

 あっという間にいなくなった二人を扉を見ながら呆れたように言うウォル。朝から色々騒がしく面白かったけどそろそろ俺達も部屋を出て行かないとね~

「それじゃあ、行くか」
「うん!」

 今日は自分の足で城の中を歩くことにした。昨日は広間にすぐ行ったから、ゆっくりと観察することが出来なかったんだけどこのお城かなり大きい。俺の身長だと見えるもの全てが大きく見えるって言うのもあるけど、実際ウォルの身長と比べても天井は高いし柱や通路も大きい。

「広いね~」
「エルディラン様が住むことを想定しているからな、竜のお姿でも圧迫感を感じないよう大きく作られてるんだ」
「なるほどね!」
「ま、エルディラン様は人の姿で過ごされることが多かったから意味なかったけどな」
「あはは、残念だね」

 今日は雲一つない快晴で、熱いくらいの日差しが注いでいる。日の光に照らされた城は輝き何処を見ても綺麗だ。俺はキョロキョロと辺りを見回しながら通路を歩いていると、色々な人とすれ違った。すれ違った人はみなウォルにお辞儀と挨拶をして通り過ぎていき、横に居る俺を不思議そうな目で見ている。確かに、お城に小さな俺が居たら変だよね~

 少しの間歩いて行くと、昨日行った広間と同じくらい大きな扉の元に辿り着きその前には兵士さんが立っていた。兵士さんは近づく俺達に対して頭を下げると

「ウォル皇子ですね、お話は聞いています、どうぞ」

 兵士さんが扉を開けると、そこには今まで見ていた城とは全く違う景色が広がっていた。扉の先は一面が緑に包まれていて、屋根も無くただ草原と豊かな植物が活き活きと育っていた。

「え!?なにこれ~?」
「驚くよな。城の裏側は、城壁に囲まれた植物の保全場所になってるんだ」
「保全?」
「簡単に言うと、植物が消えてなくならないように保存しておく場所だな。この場所はエルディラン様のお力によって常に豊かな栄養を含んだ大地になってるんだ。そのおかげでどんな植物も育つから、各地にある植物をここに集め育て絶滅しないようにしているんだ」
「すご~い!!」

 立っているだけで、エルディランの力を感じるほど強い加護がこの土地にあるんだね。

「俺達の大地は今危機に瀕している。多くの植物が枯れその危機を解決しても、植物が何も無くなったらどうしようもないだろ?だから、この場所に植物を集め大事に育てようと2代目皇王ディオ様が決められたんだ」
「へ~凄い人だね!」
「あぁ凄い人だ。そのおかげで、今を暮らせているんだからな。この場所は城の中でも重要な場所で、許可が無いと王族でも入れないんだ。それでは行こうか」
「うん」

 端が見えないほど、大きな草原には多くの人達が忙しそうに植物を観察をしお世話をしていた。それを見ながら草原をまっすぐ進んでいくと、草原を区切る様に木で出来た壁が現れた。この木は普通に育ったものでは無くまるで蔦のように隣同士編むようにして、壁が作られている。しかも、まだ生きているし強い魔力を感じる。

「不思議な木だね~」
「エルディラン様の庭を守るために植えられ育てられた決して燃えず枯れない木なんだ。そしてこの木は魔力を覚えるから許可の無い者が立ち入る事を防いでるんだ。この木の壁を通れるのは、本当に一部の方のみ」
「じゃあこの先にエルディランの庭が有るんだね」
「そうだ、ここで待っていれば気配を察して迎えに来てくれると思うんだが・・・・」

 ウォルが木の壁に近付きそう言うと、俺達の目の前の木がいきなり動きアーチを作りだす。その先に居たのは鱗と翼そして尻尾を持った見たことが無い二人だった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...