裏切られた水龍の俺は皇子達と国を復活させます!~俺を食べようとした奴なんかに水はあげない!~

和吉

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皇国復活編

終わりの時

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 休息地で誓いを立てた後、オーディスとエルディランはしばらくその地にて日々の疲れを癒すことにした。ここは幻想的な風景に心を癒され落ち着ける。思い返してみればこの地に来てからは、ずっと働き続けこのようにゆっくり落ち着くことなんて無かった。
 エルディラン様のおかげで大地は再生し水も十分にある。襲い掛かってくる魔物はいるが十分に対処できている。この先どうなるかは分からないが、エルディラン様が居ればきっと大丈夫だろう。微力にしかならないだろうが、俺だって戦えるこの平和がずっと続くように常に努力していこう。

「さて、帰るぞ」
「はい、エルディラン様」

 町に帰り、エルディラン様と誓いを立てたことを皆に報告するとそれからは大変だった。町の皆は驚きはしたが今すぐ祝宴をあげなくてはと大忙しだ。俺達の衣装を作り、広場を飾り付け豪華な料理を作り町全体で俺達を祝福してくれた。夜通し天高く歌が響き、町が歓声と笑い声に包まれ町は眠ることなく次の日まで宴は続いた。

 その後町はさらに発展していき次々と争いから逃れた人々が来たため今や町とは言えず国と言える規模となった。その発展を聞き、エルディランの旧友であるヴィラス様が訪れ色々あったがここでは省略しよう。
 色々あったヴィラス様は、アルベルドの一族の始まりである人と結ばれ子をなし順調に国が出来ていきその強さと竜の存在からどこの国も手出しが出来ない強国となっていた。そして、誰もがこの幸せが続くと疑っていなかった。

「ほへ~その話ってどれくらい前の話なの?」
「300年前だ」
「へ~最近の話なんだね」
「そう・・・だな」

 国が生まれてから50年が経ち、エルディランとオーディスの間には多くの子供と孫が生まれていた。このままこの子達が育ち平和な国が続いていくと皆が疑わなかった。まさか思いもよらぬことがこの大地を亡ぼすことになるとは・・・・

「オーディス!」
「なんでしょうエルディラン様」
「最悪な事態となった」

 いつも通りのある日エルディランは仕事をしていたオーディスの元へ大慌てで現れると、何時も表情を崩さないエルディランが暗い顔をしている。ただ事ではないと感じたオーディスは、仕事を止め

「!!何があったのですか!?」
「この星が滅びてしまうかもしれない」
「!!」

 思っていたことより壮大な話に驚きはしたが、長年王の補佐として動き経験を積んだオーディスはすぐに動いた。この国に住む部族の長と要職についている者を呼び出し緊急の会議を開くことになった。緊急の召集の為遠方に居る者はエルディランとヴィラスによって運ばれ僅か1日で全員集まった。

「それでエルディラン様この星が滅びるとは・・・・」
「そもそも星とは?」
「星というのは我々が住んでいる大地全体の事をそう呼ぶのだ」
「そんな事はどうでも良い、一体滅びるとはどういう事なんでしょうか」

初代魔法師団長エーテル、初代守護騎士団長オロスがエルディランに問う。

「うむ、ヴィラスも感じたと思うがここより北の地にて大規模な魔法が発動した」
「ここより北で大魔法ですと、あの大国でしょうか?」

 50年以上前から続いている戦争、多くの国々が争い続けているがその中でも飛びぬけた武力を持っている国がある。それはエルロー帝国とリリエル王国だ。この2つの国は魔法と軍事力に優れ、次々と国を潰し吸収して勢力を拡大している。今までこの2つの国の小競り合いが続いていたが、近々衝突する可能性があるという話を宰相であるリドルは聞いていた。

「そうだ」
「ですが、大魔法で星が滅びるとは・・・・?」
「普通の大魔法では星が滅びるほどの被害を出すのは無理だ。だが今回発動した魔法の性質が問題なのだ」
「それは、どういう?」
「汚染した魔力の塊を生み出す魔法だ」
「「「「!!!!」」」」

 様々な魔法があるが中でも禁忌とされその危険性からよっぽどの狂人でも使う事が無い程嫌忌されている魔法。それが、汚染した魔力を使い相手を汚染する魔法だ。

「それは・・・・」
「なんてことだ」
「だとしても、星を滅ぼすなど」

 魔法について詳しい初代魔法師団長であるエーテルが言う。確かに禁忌の魔法は恐ろしいが、そこまでの威力は無いはずだ。いくら大魔法だとしても土地の一部が滅び死の大地と化すだけだ。一体何をすれば星を滅ぼすなんてことに・・・・

「国同士が汚染の魔法をぶつけ合ったのだ。しかも、戦争に勝つために国民の魔力を無理やり引き出してな」
「何たる外道・・・・」
「そんな事をすれば魔力が少ない者など死んでしまうぞ」
「ただ戦に勝てればいいんだろう、犠牲なんて気にしないんだ」
「最悪なのはその魔法の影響で、長年の戦争で大地に染みついていた魔力まで目覚めてしまった。やがて、大地から汚染した魔力が地上に湧きだし大地を飲むほどの魔力の波が来る」
「・・・・」
「そんなのが来たら・・・・」

 汚染された魔力は如何なる生物だとしても死へと追い込み、少量だとしても致命傷となる。体に入り込んだ魔力は体を蝕みやがて魂までも汚染し魔物と化す。それは偉大なる竜であっても同じだ。

「大地もろともすべての生命が死に絶える」
「・・・・」

 エルディランの言葉に全員が言葉を失った。神官や全ての民の魔力を合わせたとしても、そんな波防ぐことは出来ないだろう。

「だが、そんな事はさせない」
「それは、いくらエルディラン様でも!」
「エラン何をするつもりなんだ?」

 オーディスは常にエルディランの傍に居た。長年の傍に居た故にエルディランは強大な存在ではあるが万能の存在ではないという事を知っている。いくらエルディランでもどうしようもない事だということ知っていた。

「我々竜種は星の守護者、このような事態は見逃せない。今存在する竜全てがこの波を何とかしようと集まり始めている。恐らく帰ってくることは出来ないだろうが、お前達は必ず我が守って見せよう」

 竜種は星の守護者、星の危機にすぐに介入しその事態を解決するのが役目である。例え死ぬ可能性があったとしても、そこに恐れや恐怖は無くただ役目を全うするのみ。そしてエルディランには大切な者達が居た。この愛おしき者達を害そうなど、エルディランの腹は煮え切っていた。

「待ちな」

 有無を言わせない程のは気を纏いながら立つエルディランを止めた者が居た。

「何だヴィラス」

 エルディランと同等の存在である火と風の竜ヴィラスだ。

「エルディランお前はこの国に残れ」
「は?何を言ってる。竜として役目を果たさなければ」
「その役目は俺が果たすさ。なに、俺さえいれば竜2体分にはなる」
「駄目だ、これは竜種全ての役目だ。その役目を他の者に託す事など出来ない」

 確かにヴィラスは竜の中でも特に強い。もしも自分と戦えば9割ヴィラスが勝つだろう。いや9割というのは見栄を張り過ぎだな・・・・勝つ可能性はほぼ無い。だが、この厄災に対しては強さはあまり関係無い。一体何を言ってるんだと、エルディランはヴィラスを睨みつけたがヴィラスは動じることなく。

「この国にはお前が必要だ。魔力の波を防いだ後誰がこの国を守るんだ」
「その国が無くなろうとしているのだ、国王として我が行くべきだ」
「いいや、この大地にはお前が必要だ。俺が居なくなってもそこまでの影響は無いだろ」
「番はどうする、あんなにも大切にしていただろう」
「このままだと、その番も死ぬ」

 両者とも譲らず、どんどん言い合いは激化していく。人型を取っているのに圧倒的な魔力を全身から発し、エルディランたちの魔力に慣れた者でも指一本動かすことが出来ない程の威圧。

「お前は此処に残り民を守るのだ。我は光属性を持っている適任だ」
「お前は水と大地の方が強いだろ、それにその2つは人間が生きるために必要な物だろうが!火と風ならなくなっても人間にそこまで影響は無い!!」
「何を言っているお前が居なくなれば国の守りはどうするのだ。圧倒的な力を持つお前が居るから魔物達の恐怖を忘れられるのだ!」
「お前は皇帝だろうが!国のトップが戦場に向かってどうする!」

 どちらもこの国が大切で守りたい一心。片方が残ってくれればこの国は安全だ。だから、どうしても残って貰いたいのだ

「頑固者が・・・・こうなれば力尽くでも・・・・!」
「お前が俺に勝てる訳がねーだろうが!」

 力尽くでヴィラスを押さえつけようと魔法を発動させようとしたエルディランだったが、ヴィラスは、一瞬でエルディランの懐に入り込むと全力の一撃を鳩尾に叩き込む。
 エルディランは何とか反応し、魔力で防御を固めたがそれを容易く貫通し吹っ飛ばされ意識を失った。

「ほれ、オーディス寝床に運んどきな」
「エラン!!!」
「大丈夫気を失ってるだけだ、それじゃ俺は厄災のとこに行ってくるとするか」
「ヴィラス様!どうか考え直してください、貴方様もこの国に必要な存在なのです!」

 ヴィラスが来てからというもの、魔物の襲撃に怯える事無く戦士達の訓練も見てくださった。エルディランが君臨する竜とすればヴィラスは民と共に生活する竜だ。
 偉大なる竜だが、気安く民に話しかけ共に狩り出ることだってある。一緒に宴を開き時には𠮟りもする。竜であるがその生き方は限りなく人に近いのだ。

「エルディランが居れば俺が居なくても何とかなるさ」
「違います貴方様が必要なんです!」
「オーディス」

 必死に引き留めるオーディスに向かってヴィラスは静かに

「お前達を守るにはこうするしか無いのだ。解っているだろう?」

 静かに諭すその姿は何時も人のように振舞うヴィラスではなく、偉大なる竜であった。押し黙ってしまった人々を置き。ヴィラスは飛び立って行った。
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