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ジャイアントキリングベア

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 血の匂いを追いながら森を掛けていくと、至る所で捕食の形跡があるがジャイアントキリングベアの痕跡では無い。外れにがっかりしながらも、どの魔物がどのような痕跡を残すのかを学びながら進んで行く。そうしながら一刻ほど森を走り周った頃ようやく痕跡を見つけることが出来た。

「この木に刻まれたの爪の跡と切断された樹木に綺麗に五等分された死骸、これは絶対ジャイアントキリングベアだな」
「俺も同感だ。血は新しいし近くに居るな」
「300m先に少し大きな気配があるからそれかな。爪の跡も同じ方向にあるし間違いないと思う」
「よくやった」

 ジャイアントキリングベアの痕跡を見つけたらその主まで行くのは簡単だ。それにあいつは動きが速い訳では無いからすぐに追いつけるな。

 俺達は見つけた気配に向かって走り出す。一直線に向かいたかったけど、前方に蜘蛛の巣があって行く手を遮られてしまったので、少し大回りをしながら近づいていく。朝から森の中を走り周って大分慣れてはきたけれど、この森は常に様子が変わり蜘蛛の様に罠を仕掛け獲物を狙う奴や、花や枝に擬態して獲物を狩る奴が沢山居て走りづらい。気配を消しているから襲われる事は少ないけどうっかり罠や擬態している奴らの前に着地したら流石に気付かれ攻撃されちまう。走り方と飛び方には気を付けないとな。

 急ぎながらも慎重に森を走りようやく見つけた気配の場所まで辿り着くとそこには赤茶色の巨体が居た。俺の身長程もある長い爪にクマにしては細長く二足歩行をしている4mの巨体という特徴的な姿。これは間違いなくジャイアントキリングベアだな。

「お出ましだな」
「・・・・・図鑑を見た時から思ってたんだけどあれってベアって言って良いのか?」
「毛皮を持って体格と爪に習性はベアだろ?」
「だけど二足歩行だしベアにしてはすらっとしてるし・・・・」

 姿を見るのは初めてだけど今まで戦ってきたベアー系統と姿が違い過ぎて、ちょっと不安になるけどあいつの戦い方は頭の中に入っているし基本は変わらないはず。似たようなフォーアームズベアにも勝てたんだし何とかなる!

「それじゃあ行ってくる」
「おう、頑張れ~集まってくる奴は俺が対処してやるから思いっ切り戦ってこい」
「頼んだぞ~」

 俺はブレストが援護してくることを信じジャイアントキリングベアに木の上から高速の奇襲を掛けた。魔力をナイフに集め雷の魔法による加速によって威力を高めた一撃。首を目掛けた完璧な奇襲で今までの相手ならこれで片が付いていたんだが・・・・

ガンッッ

 そりゃこの一撃だけじゃ首を斬れる訳が無いよな。金属のような毛皮にナイフは阻まれ表面と毛を少しが切れた程度しか傷を負わせられなかったが俺は冷静に、ジャイアントキリングベアの身体を蹴り距離を取ると俺が居た場所に空気を斬り裂く音と共に8つの爪が襲い掛かった。

「ふ~時間掛かりそうだな」

 ジャイアントキリングベアは手の甲から伸びている四つの爪を使い相手を斬り刻む戦い方をする魔物だ。爪には風魔法を纏いその剛腕で岩や骨でさえ切断する恐るべき相手なのだが、この戦い方に覚えがある。そうシュナイザー様の剣と似ているのだ。だけど、ジャイアントキリングベアはシュナイザー様の様に至る場所に斬撃を発生させられる訳でもしなやかな身体も無いためはっきり言ってしまえばシュナイザー様の劣化版なのだ。

ズバンッ

「おっと」

 距離を取った俺に爪によって斬撃を飛ばしてくるが大振り過ぎて回避は余裕で間に合うし、シュナイザー様ほどの鋭さも速さも無い。だけど斬撃を飛ばされると周囲の被害が甚大になってしまうから肉薄し近接戦へと持ち込むことにした。

避けるのは楽なんだけどな~こっちの攻撃があまり効かないのが問題だよな。

 次々と繰り出させる爪による攻撃を避けながら隙を狙って膝や肘、鳩尾に脇腹と弱い部分を狙ってナイフで斬りつけるが大した傷になっていない。今は余裕で避け続けられるけど、俺は一撃でも食らえば致命傷だっつーのにこの状況が続くのは良く無いよな~滅茶苦茶時間を掛ければ何とか倒せるだろうけど、流石にそんなに時間を掛けたくない。

ん~狙うべきなのは目か口、それか鼻なんだけど流石に急所を狙わせてくれるような隙は晒してくれないよな。

 急所を狙うならば何か大きな隙が欲しいのだが流石に三級の魔物はそんな隙をそうそう晒さない。ということは、俺が無理やり隙を作るしか無いのだが俺の闇魔法の強度じゃ簡単に魔法を破壊されちまうし耐えれる鎖を作るには少し時間が掛かっちまう。なら棒手裏剣を使うか・・・・いや道具の使い方も自分の力だけど今は素の力を上げたいしな~

 こうやって派手に戦い続けていれば戦いの気配を感じた魔物達が集まってきているがそれを全てブレストが瞬殺しているけど、長く続ける訳には行かないよな。仕方が無い棒手裏剣を・・・・

「クロガネ~あと300秒で倒せ~」
「え、急に!?」
「あの魔法棒手裏剣は使うなよ~」
「は!?」

 集まってきている魔物達を地面に座りながら倒し、まるでピクニックに来ているかのような緩さで俺の戦いを見ていたブレストが急に条件を出してきた。あれを使えば可能だろうけど魔法棒手裏剣無しでそれは無理だぞ!?

「頑張れ~」
「ぬぉおお~」

 無理だと目で訴えかけているのに無視し頑張れというブレスト。これはもうやるしかない!俺はクロスボウに魔力を集め圧縮しながら攻撃を避け、この一撃を決める準備のために無数の魔法の矢を展開する。

 それを一瞬警戒してきたが魔力量からして自分を傷つけないと判断したジャイアントキリングベアは攻撃を受けながらも無視してそのまま攻撃を続けてくる。よし、これで魔法の矢に対する警戒が消えたな。ある程度の知性があるのは本当に有り難いぜ。

「100秒~」

 よし、クロスボウへの魔力の圧縮は終わった。あとは姿を消して・・・・俺は闇魔法を使い姿を消すと見失ったジャイアントキリングベアは周囲に無作為に斬撃を飛ばし始めた。

姿は消しているけど攻撃を食らわない訳じゃ無いから慎重に避けてっと

 姿を消している間も魔法の矢は絶え間なく襲い掛かるが全く気にも留めていないジャイアントキリングベア。ただ俺と言う獲物だけに集中してくれている。俺は闇の鎖を地面に作り出し準備を終え少し離れた場所に俺の分身の姿を現した。

「グオオオオオ」

 姿を見つけたジャイアントキリングベアは俺目掛けて走り出しそれを魔法の矢で迎撃するがそれを無視して突っ込んできてくれている。そして分身の目の前までやって来た時、木の上で待機していた俺は気配を消しながら矢を放った。

 この矢はシュナイザー様の時のような完全に姿を消し気配を消した矢ではなく、普通の魔法の矢程度に隠蔽した矢だ。普通なら完璧に気配を消した物を使った方が良いだろうけど、あれは消耗が激しいし野生の本能で気付かれてしまったら終わりだ。

それにこいつはもう魔法の矢を脅威だと思っていない。だから、絶対この矢も無視する!

パァン
「グルルゥ!!!」

 俺の想定通り分身を斬り裂こうとしていたジャイアントキリングベアは無数の魔法の矢に混じった本気の矢に気付かずそのまま右目に直撃し血を噴き出した。痛みに咆哮を上げながらも、分身を斬り裂くがそれは俺じゃない。そのまま仕掛けておいた鎖で体を拘束し口を強引に開かせると、その口の中にクロスボウを突っ込む。

「これなら効くだろ!!」

 俺は予め収束しておいた二発目の雷の矢を口から体内へと叩む。

「ゥゥゥウウウウ」

 まだ息があるのか・・・・それなら何度でも!痛みと俺への殺意で暴れまわるジャイアントキリングベアにしがみつき、鎖で何とか動きを封じながらそのまま体内に魔法の矢を連発し叩き込み何十発も撃ち込んだ頃ようやく動きを止めその命を奪うことが出来た。

「ふ~・・・・」
「213秒、条件はクリアだけど最後に時間が掛かり過ぎたな」
「こいつ頑丈過ぎだろ・・・・」
「一発で倒せないことを考慮してあの強力な矢を何本も用意しておくべきだったな」
「そうだな~でも何本も強力な魔法を籠めた矢を保持してると流石に魔力感知でバレちまうんだよ」
「それか、圧縮を一瞬で出来るよう練習するかだ」
「そっちの方が良いよな~」

 一発で倒せるとは思ってはいなかったけど、暴れまわる余裕があるほど軽傷なのは予想外だった。鎖も限界に近かったしもっと強力な攻撃を直ぐに撃てるようにしなきゃ駄目だな。

「まぁ作戦自体は文句無しだったぞ」
「ありがと」

 反省点と改善点はあるけれど悪くない作戦だったな。それに今は俺に足りない部分と伸ばすべき点を見つけてそれを鍛えようって時期なんだし、反省するのは良いけど次に繋げないとな。

「んじゃ素材を回収して次行くぞ」
「は~い」
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