スラムの悪ガキが異世界転生ソロ冒険者の物を盗んだら一緒に旅をすることに!?

和吉

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紙の謎

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 次々と紹介されていく魔道具を見ていると、木魔法と水魔法を使うドライアドだけあってどれも植物を使った魔道具だな。どれも魅力的だけど、紹介された魔道具の中でもう一つ買ったものは、魔法植物の蔦で編まれた小さな縄だ。掌の大きさほどしか無いが、これは水を掛ければどこまでも伸びるという面白い効果を持っているのだ。何かを縛る時とかに長さを調整出来るし、火耐性も付いて耐久力も高いから色々な場面で使えそうだよな。俺は完全に姿を変えて命が宿っていない物で作ることが多いけど、こうやって生かしたまま使う方法もあるんだよな~だけど、命を宿したまま魔道具にするのは繊細な作業だから戦闘中は作れないんだよな。

「てな感じかな」
「どれも難しい作業が必要なのに繊細で洗練してますね」
「時間だけはあるからね~長い間やってるとこれくらいは出来るようになるよ」
「新たな命を生み出すか・・・・ふむ」
「その顔だと、クロガネ君も魔道具を作れるのかな?」
「錬金魔法を練習してはいますけど、テラリさんの技量には遠く及びませんよ」
「まぁこういうのは積み重ねだからね。あとは楽しむことも結構重要だよ。物を作るのは楽しい?」
「はい、好きな物を作り出したり狙い通りの物を作れるのは凄く楽しいです」
「なら、その内上手くなるよ」

 錬金魔法は俺に足りていない火力を補うために学び出した魔法だけど、練習している内に自分が望んだ物、思い付いた物を形にするのが楽しくなってきた。今は本当に簡単なものしか作れないけど、もっと上手くなったら宝石とかを使って色々な装飾品を作ったり、魔道具を沢山作るつもりだ。あのビーアンバーも装飾品にするつもりだしな。

「楽しい事ってやっていると段々上達していきますからね~私の薬作りもそうでした」
「物作りは、一朝一夕で上達するもんじゃ無いからね~楽しんでいれば上達速度も上がるし継続も出来るから生きている内に上達するよね」
「俺は早く上手くなりたいですけど、焦らないようにしますよ」
「そうそう、焦っても仕方が無いからね」

 二人は長寿だからこそゆったりと長く続けられるから上達したんだろうけど、人間の寿命は短いからな~でも焦っても失敗するだけだからしっかりと徐々に上手くなろう。

「そうそう、クロガネはゆっくり成長すれば良いんだからな」
「そう言うブレストは何歳で三級になったんだよ」
「師匠の下を離れたのが一年と少し前だから、一年くらいだな」
「・・・・」

 たった一年で三級に上がるとかあり得ないだろ。俺はもう半年以上やってるのにまだ五級だし、改めてブレストの凄さが分かるよな・・・・せめて一年の間に四級までは上がりたいもんだ。

「それって凄い事なんですか?」
「三級に上がるのに普通は六年以上掛かるし実力も相応しくないとなれないんだ」
「そうなんですね~」
「あたしは少しの間人間の国に居たから知ってるけど凄いね。その若さで」
「ブレストって16だから15で冒険者になったのか~」
「え、まだ赤ちゃんじゃないですか」
「ぶふっ」

 ブレストの歳を聞いてペシェさんは驚いたようにブレストを見ながら言うが、ブレストが赤ちゃん・・・・あはははは、面白過ぎる。赤ちゃんと言われて読んでいた魔導書から顔を上げて苦笑いしてるのも面白いし、やめて笑わせないで!

「ペシェちゃん人間は15でもう大人と言われるのよ」
「そうなんですか・・・・成長が早いんですね」
「えぇ、まぁ人間ですからね」
「15歳か~私は何してたかしら」
「昔過ぎて覚えてませんね~」
「ペシェちゃんは、道端にある草をよく混ぜたりして遊んでたね」
「え、そうなんですか!?」
「その時から薬草とか大好きだったからね~ブレスト君は小さい頃何してた?」
「ん~色々ですね。そんな俺の話よりこの魔導書の事を聞きたいんですけど」
「ん?何でもどうぞ!」

 テラリさんはペシェさんの子供の頃を知っているみたいだし、ペシェさんと同じくらい見えるけど年上ってことだよな。二人にとっては15というのかなり昔の事のようだし、二人は本当にいったいいくつなんだ?

「この魔導書、この部屋にあるのに全く水の魔力が移ってないみたいですし紙も湿気っていないですしどうなっているんですか?保護の魔法も掛かって無いみたいですし・・・・」
「あぁそれはね。あたしの魔導書の為に紙を専用に作って貰っているんだよ」
「専用の紙ですか」
「うん。あたしって水が無いと生活出来ないし部屋も水を沢山流すから普通の紙だとすぐに水を吸って駄目になっちゃうから、ペクさんに頼んで水を吸わない丈夫な紙を作って貰っているんだよ」
「ペクさんと言うのはこの町に居るんですか?」
「居るよ~うちの町の紙職人はペクさんだけだからね」
「なるほど・・・・」
「ペクさんは凄いんだよ。魔導書にピッタリの紙も作れるし、数千年も持つ紙をつくれるんだ。私達は寿命が長いから普通の紙だとあっという間に駄目になっちゃうから、ペクさんに頼んで作って貰っているんだ~」

 魔導書は魔法を掛けてあるから長い間持つけれど、魔法の掛けていない紙はどうしても時間が経過するとボロボロになってしまう。だから、何か重要なものを記す時は質の良い紙を用意し書くのが当たり前だ。それが、魔法に関する事なら尚更だな。そもそも紙を作るには特別な製法が必要で、質の良い木から出来た紙を作れるのは熟練の紙職人ぐらいで殆どの場合羊皮紙を使う事が多かったりする。どちらも、熟練の技術が必要だけど羊皮紙の方が職人が多いんだよな。

「だから、こんなに手触りが良いのに色も薄いんですね・・・・」
「本当だ、全然茶色くないな」
「そのペクさんは、町民以外にも紙を作ってくれますか?」
「大丈夫だと思うよ~念の為に私が紹介状書いてあげようか?」
「是非お願いします。あと、この泉を作り出す魔導書とツリーハウスを作る魔導書それと植物で物を作る魔導書を購入させてください」
「は~い、お買い上げありがとうございます~」

 ブレストは読んでいた魔導書を数冊購入することに決めたようだ。魔導書なだけあって、値段はかなりするけどブレストなら支払えるし聞いただけでも面白そうな魔法だな。戦いには使えないだろうけど、ブレストはもう十分な程の攻撃魔法を持っているから要らないもんな。

「それじゃあ、これが紹介状ね。今の時期はみんな忙しく無いから多分すぐに依頼を受けて貰えると思うよ」
「ありがとうございます」

 ブレストは紹介状を受け取り代金を払うと、俺達は面白く楽しかった魔法屋を後にした。他にも色々使えそうなものがあったから稼いだらまた来よ~っと。俺が使える魔法は無かったけど、魔導書は自由に見て良いって言われたから何か参考になるものがあるかもしれないしな。

「さっき紙の事気にしてたけど、紙不足なの?」
「ん?あぁ、そういう訳じゃ無いがちょっと珍しい紙をしていたから気になったんだ。それと、この後使う予定があるからな」
「そうなのか~」

 紙を使う予定と言えば手紙とかか?あっ・・・・そうだ、俺もテセウに送るための紙をそのペクさんという紙職人に頼もうかな。王都で買っておいた紙は沢山あるけど、どうせなら良い紙を使いたいしテセウにこんな綺麗な紙がフォレシアにはあるんだよって教える事も出来るしな。そうと決まったら、俺も頼んでみようかな~紙ってかなりの値段するし、手持ちはあるけど使ってばかりじゃ金は減るから依頼もちゃんとこなさなきゃな。

「この後ペクさんの所に行かれますか?それとも後日にしますか?」
「ん~拘りたいし時間も掛かると思うから後日で」

 そうだな~細かな条件も指定できるとなると使う用途に合わせて色々拘りたいものだよな。俺も手紙用なら模様とかつけても華やかになるかもしれないな。王都で売ってる手紙用の物はそう言うのが多かったし、フォレシアなら何かしらの植物を描いた物でも良いかもしれない。

「それじゃあ、その時も私が案内しますね。では次は冒険者の方が集まっている広場に行きましょうか」
「了解です」
「どんな人が居るのかな~」
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