スラムの悪ガキが異世界転生ソロ冒険者の物を盗んだら一緒に旅をすることに!?

和吉

文字の大きさ
上 下
163 / 192

紙の謎

しおりを挟む
 次々と紹介されていく魔道具を見ていると、木魔法と水魔法を使うドライアドだけあってどれも植物を使った魔道具だな。どれも魅力的だけど、紹介された魔道具の中でもう一つ買ったものは、魔法植物の蔦で編まれた小さな縄だ。掌の大きさほどしか無いが、これは水を掛ければどこまでも伸びるという面白い効果を持っているのだ。何かを縛る時とかに長さを調整出来るし、火耐性も付いて耐久力も高いから色々な場面で使えそうだよな。俺は完全に姿を変えて命が宿っていない物で作ることが多いけど、こうやって生かしたまま使う方法もあるんだよな~だけど、命を宿したまま魔道具にするのは繊細な作業だから戦闘中は作れないんだよな。

「てな感じかな」
「どれも難しい作業が必要なのに繊細で洗練してますね」
「時間だけはあるからね~長い間やってるとこれくらいは出来るようになるよ」
「新たな命を生み出すか・・・・ふむ」
「その顔だと、クロガネ君も魔道具を作れるのかな?」
「錬金魔法を練習してはいますけど、テラリさんの技量には遠く及びませんよ」
「まぁこういうのは積み重ねだからね。あとは楽しむことも結構重要だよ。物を作るのは楽しい?」
「はい、好きな物を作り出したり狙い通りの物を作れるのは凄く楽しいです」
「なら、その内上手くなるよ」

 錬金魔法は俺に足りていない火力を補うために学び出した魔法だけど、練習している内に自分が望んだ物、思い付いた物を形にするのが楽しくなってきた。今は本当に簡単なものしか作れないけど、もっと上手くなったら宝石とかを使って色々な装飾品を作ったり、魔道具を沢山作るつもりだ。あのビーアンバーも装飾品にするつもりだしな。

「楽しい事ってやっていると段々上達していきますからね~私の薬作りもそうでした」
「物作りは、一朝一夕で上達するもんじゃ無いからね~楽しんでいれば上達速度も上がるし継続も出来るから生きている内に上達するよね」
「俺は早く上手くなりたいですけど、焦らないようにしますよ」
「そうそう、焦っても仕方が無いからね」

 二人は長寿だからこそゆったりと長く続けられるから上達したんだろうけど、人間の寿命は短いからな~でも焦っても失敗するだけだからしっかりと徐々に上手くなろう。

「そうそう、クロガネはゆっくり成長すれば良いんだからな」
「そう言うブレストは何歳で三級になったんだよ」
「師匠の下を離れたのが一年と少し前だから、一年くらいだな」
「・・・・」

 たった一年で三級に上がるとかあり得ないだろ。俺はもう半年以上やってるのにまだ五級だし、改めてブレストの凄さが分かるよな・・・・せめて一年の間に四級までは上がりたいもんだ。

「それって凄い事なんですか?」
「三級に上がるのに普通は六年以上掛かるし実力も相応しくないとなれないんだ」
「そうなんですね~」
「あたしは少しの間人間の国に居たから知ってるけど凄いね。その若さで」
「ブレストって16だから15で冒険者になったのか~」
「え、まだ赤ちゃんじゃないですか」
「ぶふっ」

 ブレストの歳を聞いてペシェさんは驚いたようにブレストを見ながら言うが、ブレストが赤ちゃん・・・・あはははは、面白過ぎる。赤ちゃんと言われて読んでいた魔導書から顔を上げて苦笑いしてるのも面白いし、やめて笑わせないで!

「ペシェちゃん人間は15でもう大人と言われるのよ」
「そうなんですか・・・・成長が早いんですね」
「えぇ、まぁ人間ですからね」
「15歳か~私は何してたかしら」
「昔過ぎて覚えてませんね~」
「ペシェちゃんは、道端にある草をよく混ぜたりして遊んでたね」
「え、そうなんですか!?」
「その時から薬草とか大好きだったからね~ブレスト君は小さい頃何してた?」
「ん~色々ですね。そんな俺の話よりこの魔導書の事を聞きたいんですけど」
「ん?何でもどうぞ!」

 テラリさんはペシェさんの子供の頃を知っているみたいだし、ペシェさんと同じくらい見えるけど年上ってことだよな。二人にとっては15というのかなり昔の事のようだし、二人は本当にいったいいくつなんだ?

「この魔導書、この部屋にあるのに全く水の魔力が移ってないみたいですし紙も湿気っていないですしどうなっているんですか?保護の魔法も掛かって無いみたいですし・・・・」
「あぁそれはね。あたしの魔導書の為に紙を専用に作って貰っているんだよ」
「専用の紙ですか」
「うん。あたしって水が無いと生活出来ないし部屋も水を沢山流すから普通の紙だとすぐに水を吸って駄目になっちゃうから、ペクさんに頼んで水を吸わない丈夫な紙を作って貰っているんだよ」
「ペクさんと言うのはこの町に居るんですか?」
「居るよ~うちの町の紙職人はペクさんだけだからね」
「なるほど・・・・」
「ペクさんは凄いんだよ。魔導書にピッタリの紙も作れるし、数千年も持つ紙をつくれるんだ。私達は寿命が長いから普通の紙だとあっという間に駄目になっちゃうから、ペクさんに頼んで作って貰っているんだ~」

 魔導書は魔法を掛けてあるから長い間持つけれど、魔法の掛けていない紙はどうしても時間が経過するとボロボロになってしまう。だから、何か重要なものを記す時は質の良い紙を用意し書くのが当たり前だ。それが、魔法に関する事なら尚更だな。そもそも紙を作るには特別な製法が必要で、質の良い木から出来た紙を作れるのは熟練の紙職人ぐらいで殆どの場合羊皮紙を使う事が多かったりする。どちらも、熟練の技術が必要だけど羊皮紙の方が職人が多いんだよな。

「だから、こんなに手触りが良いのに色も薄いんですね・・・・」
「本当だ、全然茶色くないな」
「そのペクさんは、町民以外にも紙を作ってくれますか?」
「大丈夫だと思うよ~念の為に私が紹介状書いてあげようか?」
「是非お願いします。あと、この泉を作り出す魔導書とツリーハウスを作る魔導書それと植物で物を作る魔導書を購入させてください」
「は~い、お買い上げありがとうございます~」

 ブレストは読んでいた魔導書を数冊購入することに決めたようだ。魔導書なだけあって、値段はかなりするけどブレストなら支払えるし聞いただけでも面白そうな魔法だな。戦いには使えないだろうけど、ブレストはもう十分な程の攻撃魔法を持っているから要らないもんな。

「それじゃあ、これが紹介状ね。今の時期はみんな忙しく無いから多分すぐに依頼を受けて貰えると思うよ」
「ありがとうございます」

 ブレストは紹介状を受け取り代金を払うと、俺達は面白く楽しかった魔法屋を後にした。他にも色々使えそうなものがあったから稼いだらまた来よ~っと。俺が使える魔法は無かったけど、魔導書は自由に見て良いって言われたから何か参考になるものがあるかもしれないしな。

「さっき紙の事気にしてたけど、紙不足なの?」
「ん?あぁ、そういう訳じゃ無いがちょっと珍しい紙をしていたから気になったんだ。それと、この後使う予定があるからな」
「そうなのか~」

 紙を使う予定と言えば手紙とかか?あっ・・・・そうだ、俺もテセウに送るための紙をそのペクさんという紙職人に頼もうかな。王都で買っておいた紙は沢山あるけど、どうせなら良い紙を使いたいしテセウにこんな綺麗な紙がフォレシアにはあるんだよって教える事も出来るしな。そうと決まったら、俺も頼んでみようかな~紙ってかなりの値段するし、手持ちはあるけど使ってばかりじゃ金は減るから依頼もちゃんとこなさなきゃな。

「この後ペクさんの所に行かれますか?それとも後日にしますか?」
「ん~拘りたいし時間も掛かると思うから後日で」

 そうだな~細かな条件も指定できるとなると使う用途に合わせて色々拘りたいものだよな。俺も手紙用なら模様とかつけても華やかになるかもしれないな。王都で売ってる手紙用の物はそう言うのが多かったし、フォレシアなら何かしらの植物を描いた物でも良いかもしれない。

「それじゃあ、その時も私が案内しますね。では次は冒険者の方が集まっている広場に行きましょうか」
「了解です」
「どんな人が居るのかな~」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...