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閑話:辺境の若き狼2
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「初めての森はどうですか?」
「自分が未熟だったと言うことを痛感しているよ。そしてお二人の強さに驚愕だな。あのような態度をしてしまったことを謝罪させてくれ」
「いえいえ、気にして無いから大丈夫ですよ。戦闘に関しては初めてですから仕方が無いですよ。こういうのは実践しないと分からないものですから」
「はぁ、同行を許してくれたのは感謝しているが、本当に足手纏いになってしまってるな」
「そんな事無いですよ。そのお歳にしては十分に戦えています」
「自分が一番分かっているからお世辞は大丈夫だ。それより俺に足りていない部分を素直に言ってくれないか?」
十分戦えていると言うがそれはクロガネ殿とブレスト殿が場を綺麗に整え、ロシェによる援護があって戦えている訳で俺の力では無い。クロガネ殿とブレスト殿だけであればあっという間に森を進めているだろうに、森に不慣れな俺に合わせて歩を遅くしてくれている。どこからどう見ても俺は足手纏いだな。
「素直にですか?」
「あぁ素直かつ率直に」
「ん~・・・・」
「大丈夫だ。なにも文句は言わないし事実として受け止める」
「そうですか?それじゃあ、歯に衣着せずに言うと明らかな実戦不足ですね。周囲の気配を捉えられていませんし、森にある木々などの障害物があると明らかに足踏みが悪くなって動きが悪くなっています。その所為で折角の力を武器に乗せられていませんし、予想外の事が起きると一瞬硬直しているのは致命的です。それに、魔物に関する知識はあるみたいですけど、それを戦闘に活かせていませんね。あと魔法の発動も遅いですし、戦闘中は集中し過ぎて周囲の警戒が疎かになっています。もっと柔軟に対応できるようになった方が良いとは思いますよ」
少し悩んだ様子を見せていたブレスト殿だが言ってくれと頼むと、覚悟はしていたが耳が痛い程の指摘を貰い少し落ち込んでしまうがすべて事実なので受け止めなければならないな。
「まぁ今俺が上げたのは実戦経験を積んで学んでいくものなので、これからの戦闘で学んでいけば良いんですよ。素の力はしっかりと持っているようなので後は馴れと応用ですよ」
「クロガネ殿はそれらをこなしているのか・・・・」
「クロガネは特殊ですよ。生まれながらに自分の命を守り生き延びなければならない環境で育った所為で、警戒心と観察眼が優れているんですよ。魔法も自然と身に付けたようですし、生きている中で鍛えられたものを俺が実戦で使えるようにしただけすからね」
「そうだったのか・・・・苦労しているのだな」
「一見凄いように見えるクロガネも足りない部分が多いんですよ」
「そうなのか?もう十分過ぎるほど強いように見えるが」
森の魔物を倒す手際は見事なもので、俺達では感じ取れ無い程遠くの気配を察知し素早く状況を判断し進むルートを決めている。そんなクロガネ殿に足りていない点があるのか?
「これは俺の所為でもあるんですが普段二人パーティーの所為で、基本的に単独で攻撃することが多いんですよ。だから連携という点ではまだ甘い所が多いですし、一撃が軽い所為で硬い相手には火力不足です。しかも、手数と攻撃の種類は豊富ですが、その一つ一つを極めた訳では無いので、器用貧乏になりがちなんですよね。そこを直さないといけないんですが、ちょっと悩んでいるんですよね」
「そんな一面があったのか」
俺から見れば完璧に見えるクロガネ殿だがブレスト殿からするとまだ足りない部分だらけなのか。
「完璧な人間なんて居ないんですよ。かく言う俺も色々と足りない所ばかりですしね」
そう言って苦笑いを浮かべるブレスト殿だが、それこそブレスト殿は欠点が無いように見えるんだがな。
「お、あれがクロガネが言ってたボアですね」
「む、あれか。離れていても正確に気配が分かるのだな」
「あれ相手はテセウ様にお任せしますね。危なかったら助けますんで、思いっきり行ってください」
少し先の茂みにボアの姿を見つけたブレスト殿は俺に任せてくれたので、武器をしっかりと握りしめそのまま飛び込もうとすると襟を掴まれてしまった。
「ちょっと待った。そのまま行ったら逃げられますよ」
「あぁそうか、すまない」
「近くまで息を殺して一気に行った方が確実です」
言われた通り苦手だが俺が息を殺し相手に悟られないようギリギリまで近づき、一気に飛び込むと反応が遅れたボアの首元に深く一撃を入れられた。だが、ボアも黙ってやられる訳なくこちらに突進してきたので俺はスキルを使い受け止めそのまま脳天に一撃を入れボアを倒した。
「ふぅ」
「うん、中々ですね」
「はっきり言って構わないぞ」
「成長の余地ありって感じですね。これは俺が担いでいきますからテセウ様は薪をお願いします」
そう言ってブレスト殿は軽々と巨体のボアを担ぎあげる。言われた通り薪を集め歩ながら歩いていると
「もし、自分を変えて成長したいと思っているならクロガネと話すと良いかもしれませんよ。意外な視点を持ってますからね」
「む、確かにクロガネ殿は俺が持っていない視点や知識があるだろうな」
最初の出会いは最悪だったが謝罪と他にも色々話してみたいと思っていたのだ。是非機会があれば話し掛けてみたいな。考える俺をブレスト殿は凄く優しい笑顔で見ていて不思議に思ったが、皆の元へ戻ると野営の準備が整っていた。その後ブレスト殿の手腕でただの肉が町で食べるものとも遜色の無い物に変わり、食事を楽しんでいると夜番の話となった。
夜番、その役目の重要性については本で学んだ。是非ともその役目を務めたかったがブレスト殿の言う通り俺では力不足だろう。残念だが夜番を二人に任せ明日に備え横になるが、土の上で初めて寝るので硬い感触に慣れず中々寝付けずにいると、他の2人は眠りに就いてしまったようだ。
今日は初めての事が沢山で体は疲れているはずなのに、眠気はやって来ず頭は冴えてしまっている。このままでは眠れないと判断した俺は起き上がると、クロガネ殿は焚き火の傍で何やら魔法の練習をしている様だ。
あれは・・・・なんの魔法だ?木材が消えたり現れたりしているみたいが・・・・木魔法か?クロガネ殿の事だから起き上がった俺に気付いているだろうが一切視線を向ける事無く魔法を練習しながら時折空を眺めている。
今なら二人っきりで話す良い機会なのでは無いか?
俺は立ち上がりクロガネ殿の後ろから声を掛ける。
「少し隣良いだろうか」
「どうぞ」
許しを得た俺は隣に座るが、クロガネ殿は俺の事を一切気にすることなく魔法の練習をしている。初めが初めだった故になんて声を掛けたら良いのか分からず少しの間黙ってしまったが覚悟を決め
「涼しい夜だな」
いや、何を言っているんだ俺は!そうじゃ無くて、今日の事を謝罪しなければ!何とか言葉を繋ぎ、今日の出会いの事や戦いの事に関して謝り自分の情けなさを話すと、クロガネ殿は意外な言葉を返してくれた。
「それぐらい人間味に溢れてた方が俺は好きですけどね」
あんな態度を取った俺に親しみを感じてくれていたのか?まさかの返しに俺は困惑していると、クロガネ殿は少し笑いながら理由を離してくれた。人間味があるからこそ、人々は親しみを感じ尊敬するか・・・・そんなこと考えたことも無かったな。初めて言われたことに、話し掛けるまで色々と考えていたことが吹き飛びその言葉にどこか安心感を感じた俺は心が落ち付き冷静になっていた。
こんな俺でも領主として相応しいか・・・・そうだったら良いな。
その言葉に悩んでいたことは吹き飛び、俺は心穏やかにクロガネ殿と一緒に星の綺麗な空を眺めていた。
「自分が未熟だったと言うことを痛感しているよ。そしてお二人の強さに驚愕だな。あのような態度をしてしまったことを謝罪させてくれ」
「いえいえ、気にして無いから大丈夫ですよ。戦闘に関しては初めてですから仕方が無いですよ。こういうのは実践しないと分からないものですから」
「はぁ、同行を許してくれたのは感謝しているが、本当に足手纏いになってしまってるな」
「そんな事無いですよ。そのお歳にしては十分に戦えています」
「自分が一番分かっているからお世辞は大丈夫だ。それより俺に足りていない部分を素直に言ってくれないか?」
十分戦えていると言うがそれはクロガネ殿とブレスト殿が場を綺麗に整え、ロシェによる援護があって戦えている訳で俺の力では無い。クロガネ殿とブレスト殿だけであればあっという間に森を進めているだろうに、森に不慣れな俺に合わせて歩を遅くしてくれている。どこからどう見ても俺は足手纏いだな。
「素直にですか?」
「あぁ素直かつ率直に」
「ん~・・・・」
「大丈夫だ。なにも文句は言わないし事実として受け止める」
「そうですか?それじゃあ、歯に衣着せずに言うと明らかな実戦不足ですね。周囲の気配を捉えられていませんし、森にある木々などの障害物があると明らかに足踏みが悪くなって動きが悪くなっています。その所為で折角の力を武器に乗せられていませんし、予想外の事が起きると一瞬硬直しているのは致命的です。それに、魔物に関する知識はあるみたいですけど、それを戦闘に活かせていませんね。あと魔法の発動も遅いですし、戦闘中は集中し過ぎて周囲の警戒が疎かになっています。もっと柔軟に対応できるようになった方が良いとは思いますよ」
少し悩んだ様子を見せていたブレスト殿だが言ってくれと頼むと、覚悟はしていたが耳が痛い程の指摘を貰い少し落ち込んでしまうがすべて事実なので受け止めなければならないな。
「まぁ今俺が上げたのは実戦経験を積んで学んでいくものなので、これからの戦闘で学んでいけば良いんですよ。素の力はしっかりと持っているようなので後は馴れと応用ですよ」
「クロガネ殿はそれらをこなしているのか・・・・」
「クロガネは特殊ですよ。生まれながらに自分の命を守り生き延びなければならない環境で育った所為で、警戒心と観察眼が優れているんですよ。魔法も自然と身に付けたようですし、生きている中で鍛えられたものを俺が実戦で使えるようにしただけすからね」
「そうだったのか・・・・苦労しているのだな」
「一見凄いように見えるクロガネも足りない部分が多いんですよ」
「そうなのか?もう十分過ぎるほど強いように見えるが」
森の魔物を倒す手際は見事なもので、俺達では感じ取れ無い程遠くの気配を察知し素早く状況を判断し進むルートを決めている。そんなクロガネ殿に足りていない点があるのか?
「これは俺の所為でもあるんですが普段二人パーティーの所為で、基本的に単独で攻撃することが多いんですよ。だから連携という点ではまだ甘い所が多いですし、一撃が軽い所為で硬い相手には火力不足です。しかも、手数と攻撃の種類は豊富ですが、その一つ一つを極めた訳では無いので、器用貧乏になりがちなんですよね。そこを直さないといけないんですが、ちょっと悩んでいるんですよね」
「そんな一面があったのか」
俺から見れば完璧に見えるクロガネ殿だがブレスト殿からするとまだ足りない部分だらけなのか。
「完璧な人間なんて居ないんですよ。かく言う俺も色々と足りない所ばかりですしね」
そう言って苦笑いを浮かべるブレスト殿だが、それこそブレスト殿は欠点が無いように見えるんだがな。
「お、あれがクロガネが言ってたボアですね」
「む、あれか。離れていても正確に気配が分かるのだな」
「あれ相手はテセウ様にお任せしますね。危なかったら助けますんで、思いっきり行ってください」
少し先の茂みにボアの姿を見つけたブレスト殿は俺に任せてくれたので、武器をしっかりと握りしめそのまま飛び込もうとすると襟を掴まれてしまった。
「ちょっと待った。そのまま行ったら逃げられますよ」
「あぁそうか、すまない」
「近くまで息を殺して一気に行った方が確実です」
言われた通り苦手だが俺が息を殺し相手に悟られないようギリギリまで近づき、一気に飛び込むと反応が遅れたボアの首元に深く一撃を入れられた。だが、ボアも黙ってやられる訳なくこちらに突進してきたので俺はスキルを使い受け止めそのまま脳天に一撃を入れボアを倒した。
「ふぅ」
「うん、中々ですね」
「はっきり言って構わないぞ」
「成長の余地ありって感じですね。これは俺が担いでいきますからテセウ様は薪をお願いします」
そう言ってブレスト殿は軽々と巨体のボアを担ぎあげる。言われた通り薪を集め歩ながら歩いていると
「もし、自分を変えて成長したいと思っているならクロガネと話すと良いかもしれませんよ。意外な視点を持ってますからね」
「む、確かにクロガネ殿は俺が持っていない視点や知識があるだろうな」
最初の出会いは最悪だったが謝罪と他にも色々話してみたいと思っていたのだ。是非機会があれば話し掛けてみたいな。考える俺をブレスト殿は凄く優しい笑顔で見ていて不思議に思ったが、皆の元へ戻ると野営の準備が整っていた。その後ブレスト殿の手腕でただの肉が町で食べるものとも遜色の無い物に変わり、食事を楽しんでいると夜番の話となった。
夜番、その役目の重要性については本で学んだ。是非ともその役目を務めたかったがブレスト殿の言う通り俺では力不足だろう。残念だが夜番を二人に任せ明日に備え横になるが、土の上で初めて寝るので硬い感触に慣れず中々寝付けずにいると、他の2人は眠りに就いてしまったようだ。
今日は初めての事が沢山で体は疲れているはずなのに、眠気はやって来ず頭は冴えてしまっている。このままでは眠れないと判断した俺は起き上がると、クロガネ殿は焚き火の傍で何やら魔法の練習をしている様だ。
あれは・・・・なんの魔法だ?木材が消えたり現れたりしているみたいが・・・・木魔法か?クロガネ殿の事だから起き上がった俺に気付いているだろうが一切視線を向ける事無く魔法を練習しながら時折空を眺めている。
今なら二人っきりで話す良い機会なのでは無いか?
俺は立ち上がりクロガネ殿の後ろから声を掛ける。
「少し隣良いだろうか」
「どうぞ」
許しを得た俺は隣に座るが、クロガネ殿は俺の事を一切気にすることなく魔法の練習をしている。初めが初めだった故になんて声を掛けたら良いのか分からず少しの間黙ってしまったが覚悟を決め
「涼しい夜だな」
いや、何を言っているんだ俺は!そうじゃ無くて、今日の事を謝罪しなければ!何とか言葉を繋ぎ、今日の出会いの事や戦いの事に関して謝り自分の情けなさを話すと、クロガネ殿は意外な言葉を返してくれた。
「それぐらい人間味に溢れてた方が俺は好きですけどね」
あんな態度を取った俺に親しみを感じてくれていたのか?まさかの返しに俺は困惑していると、クロガネ殿は少し笑いながら理由を離してくれた。人間味があるからこそ、人々は親しみを感じ尊敬するか・・・・そんなこと考えたことも無かったな。初めて言われたことに、話し掛けるまで色々と考えていたことが吹き飛びその言葉にどこか安心感を感じた俺は心が落ち付き冷静になっていた。
こんな俺でも領主として相応しいか・・・・そうだったら良いな。
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---------------------------------------------
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