異世界配信で、役立たずなうっかり役を演じさせられていたボクは、自称姉ポジのもふもふ白猫と共に自分探しの旅に出る。

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化

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046 自分で選んだ道だから

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 ギルドからの証明書を見せると、街にはすんなりと入れた。
 大きな街だとはガルドたちから聞いていたが、その奥までは見渡せないほどかなりのもの。

 中央の道を挟んでいろんな店が立ち並び、さらにその奥が居住区のようだった。
 行き交う人々はその多さからか、獣人であるボクやぽちにすら、誰も興味を示しはしない。

 その雰囲気は、いつか修学旅行で行った大都会に似たものがあった。

「さて、まずは冒険者ギルドに立ち寄ろうか」
「そうね」
「にゃー」

 どうやらココではリーシャはまた猫になるらしい。
 にゃーと鳴くリーシャにアイリは一瞬怪訝そうな顔をしたものの、特に何も言うことはなかった。

「その後、どこでご飯……」
「わぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ボクの言葉を遮るくらいの大きな声が、通り過ぎようとした路地から聞こえてくる。
 
「なに⁉」

 数歩戻り路地を確認しようとするボクの腕を、アイリが掴む。
 そして無言のまま首を横に振った。

 行かない方がいい。
 アイリの顔はそう言っている。

 だけどボクはどうしてもやめることは出来なかった。
 それは決して軽い好奇心などではなく、いつか見た日の光景に似ていたから。

「やめてよぅ!」

 路地にそっと近づくと、三人の冒険者らしき背の高い男女が、一人のやや小さな子を取り囲んでいた。
 冷たい地面で小さく丸くなりながら、うずくまっている。

「お前が何度言ってもグズだからだろ」
「本当に使えないわね。アイツの代わりで入れたっていうのに」
「まだ前のがマシだな。のくせに、人より劣るってどうなんだ」

 やや半笑いを浮かべながら、代わる代わるにその子を足蹴にしていく。
 心臓の音が早くなるのが分かった。

 あの子はボクじゃない。
 ボクじゃないけど、どうしてもその光景はかぶって見えた。

 サイラスたちにいじめられていたボクと。

「ダメだよ、ルルド君。君では、どうしようも出来ない」

 小さな声で、アイリが囁く。
 ボクだって分かっている。

 こんな裏路地。
 しかもあの獣人の子が叫んでも、誰も足を止めようとはしない。

 みんな無関心な状態で、ボクだけが突っ込んでも勝ち目なんてないだろう。
 ボクは戦闘要員でもないし、あの冒険者たちはその豪華な装備からしても上級者なのだろう。

 ガルドたちのような良い上級者もいれば、こんなに酷い奴らもいる。
 元々冒険者自体が粗暴な人間が多いのもあるけど、さすがにこれは……。

「……あいつら……」
「リーシャ?」

 リーシャはボクなんかよりも、今にもとびかかりそうな勢いだった。

 ガルドたちと別れる前に言っていたリーシャの言葉がよぎる。
 あの時、リーシャはかなり怒った感じだった。
 
 『上の奴らを潰して欲しい』と。
 もし今目の前にいる彼らがそうだとしたら……。

 アイリが止めるのも分かる。
 きっとボクでは一ミリの勝ち目もないのだろう。

「ルルド君?」

 焦るアイリにボクはただ微笑んだ。
 そして荷物から水晶をさっと取りだし、すぐにボタンを押す。

 いつもとは違うボタン。
 もちろんこれが通るかも、上手くいく保障もない。

 それでもボクは止める気はなかった。

「ダメよ、ルルド君。本当に危険すぎる」
「うん。分かってる。分かってるからこそだよ? ボクはねアイリ、したいことをするためにこの旅を始めたんだ。だから……ボクはボクの決めた道を行きたい」
「ルルド君……」

 アイリに微笑めば、諦めたようにボクから手を離した。

 大丈夫。きっとうまくいくさ。
 行かなかったら、それは後から考えればいい。

 それくらいの気持ちで、ボクは深呼吸をしたあと、またいつものように声を上げたのだった。
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