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045 女子トーク

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 翌朝、まだ朝霧が立ち込める中、ボクたちは次の街へ歩き出した。
 昨日早くに一日を終えてしまったから、何とかその分を取り戻さないと。

 少し肌寒いかと思った陽気も、歩き始めると気にならないほど心地いい。
 むしろここ数日で日差しも、かなり強くなってきた気はする。

 気温が上がり過ぎたら、移動距離の速度は落ちそうだ。

「まったくいいわよね、猫は。歩かなくていいんだから」
「あら。別に今まではちゃんと歩いてましたけど」
「その短い足じゃあ、歩くの遅そうだもんね」
「体力のなさそうなどこかのお嬢さんよりかはマシだと思いますけど?」
「なんですって!」

 ある意味、気温問題よりも熱いバトルみたいな?
 朝ごはんはしっかり食べたとはいえ、二人とも元気だなぁ。

 こんな二人のやり取りは、すでに何回目だろうか。
 そのたびに間に入ってはいるんだけど、何せリーシャとアイリの仲が悪いっていうか、なんというか。

 少し収まったかと思うと、またすぐにこんな感じになってしまう。
 
 相性かなぁ。
 そもそも、何をそんなに揉めることがあるのか理解できないとこがダメなんだよね。

 元々ボクは事なかれ主義の空気のようなモブとして生きてきたから、ああいう風に言い争うってことをしたことないから。

 イマイチ気持ちが理解できないんだよね。
 二人を観察してたら、いつか出来るのうになるのかな。

 あー、そう考えるとこれも一種の勉強みたいな?

「アタシが可愛いからって、そういう嫉妬はやめてくれる?」
「はぁ? あんた、可愛さが猫に勝てると思ってるの?」

「所詮は動物でしょう」
「人だって動物じゃないの」
「馬鹿ねぇ。人と動物は結婚出来ないのよ」
「ルルドは獣人だから大丈夫よ」
「ボク?」

 なんでここでボクの話が飛んでくるの。
 いや、確かに獣人って人と動物の中間みたいな位置かもしれないけど。

 見た目はそうでも、根本的に種族が違うって話だし。
 そもそも、これ何の話してたんだっけ?

「だいたい、推しは愛でるモノでしょう? 接近してきてどーするのよ」
「ムキーーー。いいじゃない。一生に一度、会いに行ったって。会える推しってサイコーじゃないの」

「そんなこと言い出したら、あんた以外も集まるんだからね」
「絶対に阻止してやる」
「そこだけは同意見だわ」

 決して足場の良いとは言えない、草や木の根が生える道を二人はピタリと並んで歩いている。

 それにこれだけ声を出しているのに、疲れた感じもない。
 まぁ、リーシャはぽちの頭の上なんだけど。

 それでもまぁ、うん……元気だなぁ。

「なんて言うか……うん。二人とも仲良しだね」
「どこをどうしたら、そんな風に見えるのよ、ルルド」
「アタシはルルド君のみと、仲良くなりたいの」
「えー。でも、ボク抜きで楽しそうだし」
「「どこが」」

 息もぴったりだし。
 こういうのも女子トークって感じかな。

 でも学校での女子トークって、もっとこう肯定的なっていうか『だよね』とか『わかるー』みたいな単語ばっかりだった気がするけど。

「でもさぁ、本当に仲が良くなかったらきっと会話すらしないと思うんだよね」
「無視ってこと?」
「そうだね。言い方は少し悪いけど」
「同じ空間にいるのに、それは感じ悪くないの?」

 リーシャが小首をかしげる。
 リーシャなら、何となくそう言う気がしていた。

 嫌いでも基本は無視とかしないっていうか。
 最低限のコミュニケーションとかはしてくれるって。

「リーシャは本当に面倒見のいいお姉さんって感じだよね」
「ルルド君、アタシは? アタシは?」

 急にボクとの距離を秒で縮めてきたアイリが、右手をピンっと上に上げながら、軽くジャンプをしている。

「明るくて、優しくて、しかも実行力もある。そういうとこが素敵だなって思ってるよ?」
「聞いた? ねぇ、聞いた? 素敵だって。ねぇねぇねぇねぇ」

 興奮気味にリーシャに近寄り、ぽちをぽふぽふとアイリは叩く。
 ぽちはなぁに? というキョトンとした顔をしていた。

「はいはい。どーでもいいけど、街が見えてきたわよ」

 リーシャの言葉にボクたちは、前を見た。
 どこまであるかここからは見通せないくらいの、大きな壁とその中心に門が見える。

 ボクたちが出発した一番初めの街よりも、かなり大きいのが見てとれた。 
 
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