44 / 49
044 推し活
しおりを挟む
「それにしても、そんな風に位置とかバレるって考えたこともなかった……」
「無防備すぎ!」
「だって、人気があるとか考えたこともなかったっし」
「どうしてそんな可愛さで、人気がないって思うのよ!」
「いやぁ……」
可愛い? ボクは可愛いのか?
そもそも、そんなこと自分では分からないし。
面と向かって言われたこともないし。
そもそも……。
「だってボク、獣人なんだよ?」
「それがいいんじゃない! まずそのやや垂れた茶色い耳。小さくて時折見える尻尾。しかも庇護欲をそそられる愛らしい顔立ち。からの~小ささ。もう、いいとこしかない」
「えええ」
まくしたてるように一気に言うアイリに、さすがのリーシャも引いている。
そしてボクたちが唖然としているのも気にせずに、アイリは永遠とボクの良い点を語っていた。
なんだかそれが、自分のことに思えなかったのは言わないでおこう。
「獣人って、嫌われてるって思ってたから……なんか、ありがとう」
「種族を一括りにしたがる輩もいるけど、アタシはそういうのは反対かな。だって人だっていい人もいれば、そうじゃないのなんて山ほどいるわけでしょう?」
「まぁ、確かに」
「自分と見た目が違うからといって、迫害するというのはやっぱり違うんじゃないかな」
ボクだって初めはそう思ってた。
だけど獣人は~って言われるうちに、どこか慣れてしまってたんだ。
でもアイリの言うように、本当は慣れるべきことじゃなかったんだ。
「アイリに会えてよかったよ。遠くなのに、たくさん教えに来てくれて本当に」
「いいの。だって、ルルド君に会いたかったんだもん。推しに会うためなら、距離なんて関係ないわ」
推し……。
昔聞いたことある。
推し活って言うんだっけ。
それのためなら、遠征も当たり前だって言っていた子いたなぁ。
この世界にもあるって不思議。
「それにちょうどいいタイミングっていうか……。今を逃したら、もう会えないからさ」
「ん? 忙しいの?」
「そう……。アタシの仕事が特殊でね、その一度始まったら中々外に出るとか難しいのよ」
「大変なお仕事に就くんだね」
休みがあんまりない職業なのかな。
しかも外出もままらないなんて。
「大変だね。嫌じゃない?」
「え……」
ボクの言葉に、今までずっと話続けていたアイリが止まった。
そして何かを考えるように、視線を逸らす。
「嫌か……、そういうの考えたこともなかった。だって、気づいた時にはもう決まっていたし」
「仕方ないって思ってた?」
「仕方ない……。どうなんだろう……」
ボクはそんな決められたレールの上を走ったことはないから、アイリの気持ちはよくわからない。
だけど自由に道を選べない辛さは、ボクでも分かる。
自分で決めた道を行きたい。
だけどみんなが、それを出来るわけではない。
でもその道が辛いのならば、何とかしてあげたいって思ってしまう。
「ゆっくり考えればいいんじゃない? どうせ次の街まではあと一日かかるし」
ため息をつきながら、リーシャが助け舟を出す。
確かに今朝街を出たばかりだし。
次までは時間がある。
今まで考えたことがなかったのならば、余計にゆっくり考えた方がいい気がした。
「無防備すぎ!」
「だって、人気があるとか考えたこともなかったっし」
「どうしてそんな可愛さで、人気がないって思うのよ!」
「いやぁ……」
可愛い? ボクは可愛いのか?
そもそも、そんなこと自分では分からないし。
面と向かって言われたこともないし。
そもそも……。
「だってボク、獣人なんだよ?」
「それがいいんじゃない! まずそのやや垂れた茶色い耳。小さくて時折見える尻尾。しかも庇護欲をそそられる愛らしい顔立ち。からの~小ささ。もう、いいとこしかない」
「えええ」
まくしたてるように一気に言うアイリに、さすがのリーシャも引いている。
そしてボクたちが唖然としているのも気にせずに、アイリは永遠とボクの良い点を語っていた。
なんだかそれが、自分のことに思えなかったのは言わないでおこう。
「獣人って、嫌われてるって思ってたから……なんか、ありがとう」
「種族を一括りにしたがる輩もいるけど、アタシはそういうのは反対かな。だって人だっていい人もいれば、そうじゃないのなんて山ほどいるわけでしょう?」
「まぁ、確かに」
「自分と見た目が違うからといって、迫害するというのはやっぱり違うんじゃないかな」
ボクだって初めはそう思ってた。
だけど獣人は~って言われるうちに、どこか慣れてしまってたんだ。
でもアイリの言うように、本当は慣れるべきことじゃなかったんだ。
「アイリに会えてよかったよ。遠くなのに、たくさん教えに来てくれて本当に」
「いいの。だって、ルルド君に会いたかったんだもん。推しに会うためなら、距離なんて関係ないわ」
推し……。
昔聞いたことある。
推し活って言うんだっけ。
それのためなら、遠征も当たり前だって言っていた子いたなぁ。
この世界にもあるって不思議。
「それにちょうどいいタイミングっていうか……。今を逃したら、もう会えないからさ」
「ん? 忙しいの?」
「そう……。アタシの仕事が特殊でね、その一度始まったら中々外に出るとか難しいのよ」
「大変なお仕事に就くんだね」
休みがあんまりない職業なのかな。
しかも外出もままらないなんて。
「大変だね。嫌じゃない?」
「え……」
ボクの言葉に、今までずっと話続けていたアイリが止まった。
そして何かを考えるように、視線を逸らす。
「嫌か……、そういうの考えたこともなかった。だって、気づいた時にはもう決まっていたし」
「仕方ないって思ってた?」
「仕方ない……。どうなんだろう……」
ボクはそんな決められたレールの上を走ったことはないから、アイリの気持ちはよくわからない。
だけど自由に道を選べない辛さは、ボクでも分かる。
自分で決めた道を行きたい。
だけどみんなが、それを出来るわけではない。
でもその道が辛いのならば、何とかしてあげたいって思ってしまう。
「ゆっくり考えればいいんじゃない? どうせ次の街まではあと一日かかるし」
ため息をつきながら、リーシャが助け舟を出す。
確かに今朝街を出たばかりだし。
次までは時間がある。
今まで考えたことがなかったのならば、余計にゆっくり考えた方がいい気がした。
60
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
魔力ゼロの出来損ない貴族、四大精霊王に溺愛される
日之影ソラ
ファンタジー
魔法使いの名門マスタローグ家の次男として生をうけたアスク。兄のように優れた才能を期待されたアスクには何もなかった。魔法使いとしての才能はおろか、誰もが持って生まれる魔力すらない。加えて感情も欠落していた彼は、両親から拒絶され別宅で一人暮らす。
そんなある日、アスクは一冊の不思議な本を見つけた。本に誘われた世界で四大精霊王と邂逅し、自らの才能と可能性を知る。そして精霊王の契約者となったアスクは感情も取り戻し、これまで自分を馬鹿にしてきた周囲を見返していく。
HOTランキング&ファンタジーランキング1位達成!!
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最弱引き出しの逆襲 ― クラス転移したのはいいけど裏切られたけど実は最強だった件
ワールド
ファンタジー
俺、晴人は普通の高校生。だけど、ある日突然、クラス全員と一緒に異世界に飛ばされた。
そこで、みんなは凄い能力を手に入れた。炎を操ったり、風を呼んだり。でも、俺だけが"引き出し"なんていう、見た目にも無様な能力を授かった。戦いになんの役にも立たない。当然、俺はクラスの笑い者になった。
だけど、この"引き出し"、実はただの引き出しではなかった。この中に物を入れると、時間が経つにつれて、その物が成長する。最初は、その可能性に気づかなかった。
でも、いつしか、この能力がどれほどの力を秘めているのかを知ることになる。
クラスメイトたちからは裏切られ、孤立無援。でも、俺の"引き出し"が、みんなが見落としていた大きな脅威に立ち向かう唯一の鍵だったんだ。知恵と工夫で困難を乗り越えて、俺は最弱から最強へと変貌する。
工夫次第で幾らでも強くなれる引き出し能力で俺は成りあがっていこう。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる