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044 推し活

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「それにしても、そんな風に位置とかバレるって考えたこともなかった……」
「無防備すぎ!」
「だって、人気があるとか考えたこともなかったっし」
「どうしてそんな可愛さで、人気がないって思うのよ!」
「いやぁ……」

 可愛い? ボクは可愛いのか?
 そもそも、そんなこと自分では分からないし。
 面と向かって言われたこともないし。

 そもそも……。

「だってボク、獣人なんだよ?」
「それがいいんじゃない! まずそのやや垂れた茶色い耳。小さくて時折見える尻尾。しかも庇護欲をそそられる愛らしい顔立ち。からの~小ささ。もう、いいとこしかない」
「えええ」

 まくしたてるように一気に言うアイリに、さすがのリーシャも引いている。
 そしてボクたちが唖然としているのも気にせずに、アイリは永遠とボクの良い点を語っていた。

 なんだかそれが、自分のことに思えなかったのは言わないでおこう。

「獣人って、嫌われてるって思ってたから……なんか、ありがとう」
「種族を一括りにしたがる輩もいるけど、アタシはそういうのは反対かな。だって人だっていい人もいれば、そうじゃないのなんて山ほどいるわけでしょう?」
「まぁ、確かに」
「自分と見た目が違うからといって、迫害するというのはやっぱり違うんじゃないかな」

 ボクだって初めはそう思ってた。
 だけど獣人は~って言われるうちに、どこか慣れてしまってたんだ。

 でもアイリの言うように、本当は慣れるべきことじゃなかったんだ。
 
「アイリに会えてよかったよ。遠くなのに、たくさん教えに来てくれて本当に」
「いいの。だって、ルルド君に会いたかったんだもん。推しに会うためなら、距離なんて関係ないわ」

 推し……。
 昔聞いたことある。
 推し活って言うんだっけ。

 それのためなら、遠征も当たり前だって言っていた子いたなぁ。
 この世界にもあるって不思議。

「それにちょうどいいタイミングっていうか……。今を逃したら、もう会えないからさ」
「ん? 忙しいの?」
「そう……。アタシの仕事が特殊でね、その一度始まったら中々外に出るとか難しいのよ」
「大変なお仕事に就くんだね」

 休みがあんまりない職業なのかな。
 しかも外出もままらないなんて。

「大変だね。嫌じゃない?」
「え……」

 ボクの言葉に、今までずっと話続けていたアイリが止まった。
 そして何かを考えるように、視線を逸らす。

「嫌か……、そういうの考えたこともなかった。だって、気づいた時にはもう決まっていたし」
「仕方ないって思ってた?」
「仕方ない……。どうなんだろう……」

 ボクはそんな決められたレールの上を走ったことはないから、アイリの気持ちはよくわからない。
 だけど自由に道を選べない辛さは、ボクでも分かる。

 自分で決めた道を行きたい。
 だけどみんなが、それを出来るわけではない。

 でもその道が辛いのならば、何とかしてあげたいって思ってしまう。

「ゆっくり考えればいいんじゃない? どうせ次の街まではあと一日かかるし」

 ため息をつきながら、リーシャが助け舟を出す。
 確かに今朝街を出たばかりだし。
 次までは時間がある。

 今まで考えたことがなかったのならば、余計にゆっくり考えた方がいい気がした。
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