異世界配信で、役立たずなうっかり役を演じさせられていたボクは、自称姉ポジのもふもふ白猫と共に自分探しの旅に出る。

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化

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043 位置ばれ

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 焚火に入れた木が、ぱちぱちという音を立てながら時折はぜる。
 その度に小さな火の粉が、空に舞い上がった。

 それを囲うようにボクたちは座り、携帯食で作ったスープに口を付ける。

「ルルド君、なんか変わったね?」
「え? なんかダメでしたか?」

 ぽつりと呟くように言ったアイリの言葉に、ボクは手を止めた。

「あ、いや。いい意味でってことね」
「いい意味ですか」
「そう。なんか少し、大人になったっていうか……。自信がついたって感じかな」

 自信かぁ。
 どうかな。
 でもリーシャと旅をするようになってから、確かにいろんなことは変わったと思う。

「自分で考えて行動するようになったからですかね」
「そうかもしれないわね。前のように台本に縛られてもいないようだし」
「あー、そうですね。それはあります」

 今では自分で台本を作って手伝ってもらう立場になってるもんなぁ。
 先日の放送はまだやってないかもだけど。

 結構よく撮れてると思う。

「今回から旅配信も始めたんです」
「ああ、そうよ。それで言いたいことがあったから、来たのよ!」

 思い出したように声を大きくしたアイリは、ボクにずいっと顔を近づける。
 するとそれを横で見ていたリーシャが、咳払いする。

 そしてそのままリーシャはボクの膝の上にちょこんと座り、ボクたちの間に割って入った。

「また邪魔する」
「近すぎるからでしょう。そういうの、ルルドに嫌われるからね」
「⁉」

 リーシャの容赦ない言葉に、アイリ座ったまま数歩後ろにずり下がった。

「んで? ルルドに言いたかったことって何なの?」
「……あんたにじゃないのに……。まぁ、いいわ。ルルド君、配信で録画したものを、すぐ放送で申請しているでしょう?」

 アイリに言われて、ボクはふとその仕組みを思い出す。
 あの水晶は録画が終わった後、申請をして許可されたものから配信が始まるんだっけ。

 いつも考えず、流れ作業のようにやちゃってたけど。

「うん。ダメだった? 編集とかいる感じ?」
「そうじゃなくって。例えば今日、あの湖を撮影していたわよね」
「うん」
「で、それをすぐ配信にかけて許可が下りれば、最短で夜には映像が流れだす」
「へー。そんなに早いんだー」

 もっと数日かかると思ってたのに、結構迅速な仕組みなんだなぁ。
 ということは、ボクが配信を上げれば上げるほど、その向こう側の人も仕事が増えて大変そう。

「あのね。早いってことは、もしかするとその位置がバレるってことなの」
「ああ、そういうことね」

 すぐに納得するリーシャとは違い、ボクはアイリが言いたいことがイマイチ伝わらない。
 配信が早いから、位置がバレる?

 位置っていうのは、ボクたちの位置ってことだよね。
 でもそれが見ている人にバレたら、なんでダメなのかな。

 だって旅配信で、場所とかオススメしているわけだし。
 場所分からないと、みんな行けないのに。

「えっと?」
「私たちが今どこにいるか場所がバレるってことは、今回のアイリのように凸される可能性があるってこと。今回は、あんまり迷惑なヤツじゃなかったからよかったけど」
「あーーー。過激な人とか、迷惑な人に凸されたら困るってことか」
「そうよ。って、アタシは全然迷惑じゃないでしょう? 親切にルルド君に教えに来てあげたのよ。もし変なヤツにルルド君が狙われたら困るもの!」

 そっか。そんな危険性があったんだ。
 ボク考えたこともなかったよ。

「それを伝えるために、わざわざこんな遠くまで来てくれたんだね」
「そーよ。アタシにとって、ルルド君を見ている時は本当に幸せから」

 だった。
 なんでアイリは過去形なんだろう。

 もうボクの配信が飽きちゃったのかな。
 それか実物に会えたから、もう満足みたいな?

 聞き返そうとしてアイリを見ると、どこか悲しそうな顔でボクを見ている。

 人の過去や、その人の深いところ、そういったことを聞いてもいいものなのか。
 リーシャの時もそうだけど。
 
 聞いてもらいたい人もいれば、聞かれたくない人もいる。
 ボクはそのどっちも知っているから。

「あー、ルルド君のことはずっと好きよ。うん、これからもずっと応援はするよ」
「うん、ありがとう」

 困ったような表情を見たアイリは、慌ててボクに声をかけてくる。
 だけどボクはそんな、当たりさわりのない返事しか出来なかった。
 
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