異世界配信で、役立たずなうっかり役を演じさせられていたボクは、自称姉ポジのもふもふ白猫と共に自分探しの旅に出る。

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化

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042 うっかりで役立たずなボクじゃなくて

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「ストーカーって、リーシャ。それはちょっと……」

 こっちでもその言葉あったんだ。
 なんて、今はそういう場合じゃないよね。

「この前からあの視線が気になってたのよね。あなたでしょう? ずっと私たちを付けて来たのは」

 リーシャは街でのことを言ってるんだ。
 確かに二度ほど感じた、あの視線。

 ボクはてっきり敵対している人とかじゃないかって思ってたのに。

「街で感じた視線も、アイリだったの?」
「敵意はなさそうだから放置しておいたんだけど、まさかルルドのストーカーだったなんて。あの街でどうにかしておけばよかったわ」

 リーシャは頭を横に降りながら、ため息をついた。

 リーシャはあの視線を気にしてなさそうだったけど。
 敵意がなかったから、放置してたんだ。

「ストーカーなんて失礼ね。アタシは、ルルド君が心配で心配で、見守っていただけよ。ファンなのよ、ファン!」

 アイリは腰に手を当て、胸を張った。
 ドーンという効果音でもあったら、ピッタリな状況だ。

 ファンって、そういうものだったっけ。
 ああでも、追っかけみたいなのってそうなのかな。

 昔テレビで見たことある。
 出待ちとか言って、そのお目当てのアイドルとかが撮影の後出てくるのを待ってるみたいな。

「って、ファン⁉ ボクの?」
「なにをそんなに驚いてるんですの? ルルド君以外、いないじゃないの」

 慌てるボクとは違い、アイリはきょとんとした顔をしていた。

「いやだって、前の配信でもサイラスに人気があったのは知ってるけど」
「サイラス? ああ、あのいけ好かない顔だけリーダーね」
「「ぶっ」」

 ボクとリーシャが同時に吹き出す。
 まさかそんな風に言う人がいるなんて。

 ボクが効いていた話では、すごい人気があってあの配信は持ってるって言ってたのに。
 まぁ、人間好き嫌いはあるからね。

 アイリみたいな人がいても、おかしくないってことかな。

「アタシ、何か変なこと言ったかしら」
「いや、だって。サイラスはすごく人気の配信者だったんだよ。それを顔だけって言うのが、なんか」
「本当のことじゃない。それにあの配信で人気だったのは、あんなヤツじゃなくてルルド君よ?」
「え?」

 ボクが人気?
 だって、あんな役なのに……。

「ボクは役に立たない、ただのうっかり役だよ?」
「そうね」
「……うん」
「一生懸命、健気に役をこなす可愛い役でしょう?」

 さも当たり前だというアンリ。

「や、やだ! 泣かないでルルド君。ちょっと、えええ? なになになに。アタシ、何か変なコト言った?」
「変なコトは言ってないわね。でもルルドにとっては……ずっと苦しんできたことなのよ」

 悲しいのか、そうじゃないのか。
 自分でもよく分からない感情だった。

 そんなものがグルグルと自分の中を駆け巡り、気づけばぼろぼろと涙が溢れていた。

「ルルド?」
「……ご、めん。あの役ね、本当に嫌で嫌で仕方なかったんだ」
「ルルド君」
「みっともなくて、役にも立たなくて……。言われるままに演じるしかなくて……」

 ずっと逃げたかった。
 逃げれるはずもないのに。

「見てる人たちもさ、ボクなんてただの引き立て役で、好きじゃないんだろうなって……。ずっと思ってた」
「ルルド君……。みんなね、ルルド君が台本でやらされてるんだろうなって分かってたよ。でもね、それでも嫌な顔せず毎回やってて。しかも健気で頑張るルルド君が可愛くて。ルルド君ファンはみんな、そんなルルド君のことが好きなんだよ?」
「ありがとう……ありがとう、アンリ。その言葉を届けてくれて。ボク、すごくうれしいよ」

 今までのわだかまりが、全部消えていく気がした。

「うん」

 そう微笑むアンリも、どこかホッとしたように眉を下げる。
 
 ボクたちは少し早いとは思いつつ、近くの水場で野宿することになった。
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