42 / 49
042 うっかりで役立たずなボクじゃなくて
しおりを挟む
「ストーカーって、リーシャ。それはちょっと……」
こっちでもその言葉あったんだ。
なんて、今はそういう場合じゃないよね。
「この前からあの視線が気になってたのよね。あなたでしょう? ずっと私たちを付けて来たのは」
リーシャは街でのことを言ってるんだ。
確かに二度ほど感じた、あの視線。
ボクはてっきり敵対している人とかじゃないかって思ってたのに。
「街で感じた視線も、アイリだったの?」
「敵意はなさそうだから放置しておいたんだけど、まさかルルドのストーカーだったなんて。あの街でどうにかしておけばよかったわ」
リーシャは頭を横に降りながら、ため息をついた。
リーシャはあの視線を気にしてなさそうだったけど。
敵意がなかったから、放置してたんだ。
「ストーカーなんて失礼ね。アタシは、ルルド君が心配で心配で、見守っていただけよ。ファンなのよ、ファン!」
アイリは腰に手を当て、胸を張った。
ドーンという効果音でもあったら、ピッタリな状況だ。
ファンって、そういうものだったっけ。
ああでも、追っかけみたいなのってそうなのかな。
昔テレビで見たことある。
出待ちとか言って、そのお目当てのアイドルとかが撮影の後出てくるのを待ってるみたいな。
「って、ファン⁉ ボクの?」
「なにをそんなに驚いてるんですの? ルルド君以外、いないじゃないの」
慌てるボクとは違い、アイリはきょとんとした顔をしていた。
「いやだって、前の配信でもサイラスに人気があったのは知ってるけど」
「サイラス? ああ、あのいけ好かない顔だけリーダーね」
「「ぶっ」」
ボクとリーシャが同時に吹き出す。
まさかそんな風に言う人がいるなんて。
ボクが効いていた話では、すごい人気があってあの配信は持ってるって言ってたのに。
まぁ、人間好き嫌いはあるからね。
アイリみたいな人がいても、おかしくないってことかな。
「アタシ、何か変なこと言ったかしら」
「いや、だって。サイラスはすごく人気の配信者だったんだよ。それを顔だけって言うのが、なんか」
「本当のことじゃない。それにあの配信で人気だったのは、あんなヤツじゃなくてルルド君よ?」
「え?」
ボクが人気?
だって、あんな役なのに……。
「ボクは役に立たない、ただのうっかり役だよ?」
「そうね」
「……うん」
「一生懸命、健気に役をこなす可愛い役でしょう?」
さも当たり前だというアンリ。
「や、やだ! 泣かないでルルド君。ちょっと、えええ? なになになに。アタシ、何か変なコト言った?」
「変なコトは言ってないわね。でもルルドにとっては……ずっと苦しんできたことなのよ」
悲しいのか、そうじゃないのか。
自分でもよく分からない感情だった。
そんなものがグルグルと自分の中を駆け巡り、気づけばぼろぼろと涙が溢れていた。
「ルルド?」
「……ご、めん。あの役ね、本当に嫌で嫌で仕方なかったんだ」
「ルルド君」
「みっともなくて、役にも立たなくて……。言われるままに演じるしかなくて……」
ずっと逃げたかった。
逃げれるはずもないのに。
「見てる人たちもさ、ボクなんてただの引き立て役で、好きじゃないんだろうなって……。ずっと思ってた」
「ルルド君……。みんなね、ルルド君が台本でやらされてるんだろうなって分かってたよ。でもね、それでも嫌な顔せず毎回やってて。しかも健気で頑張るルルド君が可愛くて。ルルド君ファンはみんな、そんなルルド君のことが好きなんだよ?」
「ありがとう……ありがとう、アンリ。その言葉を届けてくれて。ボク、すごくうれしいよ」
今までのわだかまりが、全部消えていく気がした。
「うん」
そう微笑むアンリも、どこかホッとしたように眉を下げる。
ボクたちは少し早いとは思いつつ、近くの水場で野宿することになった。
こっちでもその言葉あったんだ。
なんて、今はそういう場合じゃないよね。
「この前からあの視線が気になってたのよね。あなたでしょう? ずっと私たちを付けて来たのは」
リーシャは街でのことを言ってるんだ。
確かに二度ほど感じた、あの視線。
ボクはてっきり敵対している人とかじゃないかって思ってたのに。
「街で感じた視線も、アイリだったの?」
「敵意はなさそうだから放置しておいたんだけど、まさかルルドのストーカーだったなんて。あの街でどうにかしておけばよかったわ」
リーシャは頭を横に降りながら、ため息をついた。
リーシャはあの視線を気にしてなさそうだったけど。
敵意がなかったから、放置してたんだ。
「ストーカーなんて失礼ね。アタシは、ルルド君が心配で心配で、見守っていただけよ。ファンなのよ、ファン!」
アイリは腰に手を当て、胸を張った。
ドーンという効果音でもあったら、ピッタリな状況だ。
ファンって、そういうものだったっけ。
ああでも、追っかけみたいなのってそうなのかな。
昔テレビで見たことある。
出待ちとか言って、そのお目当てのアイドルとかが撮影の後出てくるのを待ってるみたいな。
「って、ファン⁉ ボクの?」
「なにをそんなに驚いてるんですの? ルルド君以外、いないじゃないの」
慌てるボクとは違い、アイリはきょとんとした顔をしていた。
「いやだって、前の配信でもサイラスに人気があったのは知ってるけど」
「サイラス? ああ、あのいけ好かない顔だけリーダーね」
「「ぶっ」」
ボクとリーシャが同時に吹き出す。
まさかそんな風に言う人がいるなんて。
ボクが効いていた話では、すごい人気があってあの配信は持ってるって言ってたのに。
まぁ、人間好き嫌いはあるからね。
アイリみたいな人がいても、おかしくないってことかな。
「アタシ、何か変なこと言ったかしら」
「いや、だって。サイラスはすごく人気の配信者だったんだよ。それを顔だけって言うのが、なんか」
「本当のことじゃない。それにあの配信で人気だったのは、あんなヤツじゃなくてルルド君よ?」
「え?」
ボクが人気?
だって、あんな役なのに……。
「ボクは役に立たない、ただのうっかり役だよ?」
「そうね」
「……うん」
「一生懸命、健気に役をこなす可愛い役でしょう?」
さも当たり前だというアンリ。
「や、やだ! 泣かないでルルド君。ちょっと、えええ? なになになに。アタシ、何か変なコト言った?」
「変なコトは言ってないわね。でもルルドにとっては……ずっと苦しんできたことなのよ」
悲しいのか、そうじゃないのか。
自分でもよく分からない感情だった。
そんなものがグルグルと自分の中を駆け巡り、気づけばぼろぼろと涙が溢れていた。
「ルルド?」
「……ご、めん。あの役ね、本当に嫌で嫌で仕方なかったんだ」
「ルルド君」
「みっともなくて、役にも立たなくて……。言われるままに演じるしかなくて……」
ずっと逃げたかった。
逃げれるはずもないのに。
「見てる人たちもさ、ボクなんてただの引き立て役で、好きじゃないんだろうなって……。ずっと思ってた」
「ルルド君……。みんなね、ルルド君が台本でやらされてるんだろうなって分かってたよ。でもね、それでも嫌な顔せず毎回やってて。しかも健気で頑張るルルド君が可愛くて。ルルド君ファンはみんな、そんなルルド君のことが好きなんだよ?」
「ありがとう……ありがとう、アンリ。その言葉を届けてくれて。ボク、すごくうれしいよ」
今までのわだかまりが、全部消えていく気がした。
「うん」
そう微笑むアンリも、どこかホッとしたように眉を下げる。
ボクたちは少し早いとは思いつつ、近くの水場で野宿することになった。
65
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる