異世界配信で、役立たずなうっかり役を演じさせられていたボクは、自称姉ポジのもふもふ白猫と共に自分探しの旅に出る。

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化

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034 変わり者の店主

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「人を見かけで判断しないのも、キチンと挨拶ができるのも高得点じゃぞ、ルルド」
「え、あ、はい。ありがとうございます?」
「なぜそこは疑問形なのじゃ」
「えっと、あんまり意味が通じてなくてすみません」

 挨拶なんて普通のことだし、本人が年上だって言ってるんだったら、そうじゃないのかな。
 その上で、ボクはただのお客なんだし、キチンとしとかないとって思っただけなんだけど。

「ワシの店は特殊でな。それこそ、こんな小さな街のわりには、品ぞろえは王都よりもいい。だが、特殊な品を扱っている分、客を選ばせてもらっておるんじゃ」

 店のカウンターから、ぽてぽてとユメリが出てくる。
 ボクの頭半分くらい背が低いだろうか。

 だけどしゃべり方もそうだけど、確かに年下感はない。
 見た目以上に、この中で誰よりも年上かも。

 長命種かな。
 でもあの有名なエルフみたいに、耳は長くないけど。

「ふむふむ」

 ユメリはぽちではなく、その頭の上にいるリーシャを見ていた。

「あ、違うんです。首輪って言っても、リーシャのではなくて」

 ちゃんと先に説明しておくべきだった。
 普通首輪って言ったら、猫用だよね。

「おん? ああいや。それはわかっておる」
「それなら……」
「ん-。お主が探しておるアレは昔一度手に入れたことはあるが、今は持っておらぬ。だがそうじゃな……ワシからもギルドに言っておこう。入ったら、すぐ連絡してやるさ」
「え?」

 二人にしか分からない会話をユメリはしていた。
 リーシャは初め何を言われたのか分からないようだったが、ユメリがアレと言った瞬間に、その瞳が大きくなる。

 リーシャはリーシャで探し物があったんだ。
 しかもユメリの言葉からすると、なんだかすごく重要な気がする。

「……そう、ありがとう」
「リーシャ……」

 人前なのに普通に話すリーシャは、すごく悲しそうな顔をしていた。

「ユメリさん、それ見つかったらすぐ連絡ください。ボク、リーシャのためにたくさんお金稼いで貯めておきますから」
「ルルド、そんなのいいのに」
「ダメだよ、リーシャ。君の探してるものだもん。ボクの旅に付き合ってくれてるお礼さ」

 いくらかかるか分からないけど、また一つ目標が出来ちゃった。
 旅配信をしてみたらってランタスにも言われていたし。

 頑張って稼いで、リーシャにプレゼントをしよう。

「ルルド……」
「人たらしなのは種族のせいか……それとも生まれのせいか……。興味深いものじゃのう」
「ユメリさんは犬の獣人に会ったことあるんですか?」
「まぁ、長く生きておるからのう。いろんな種族は見てきたさ。それこそ異世界人とてな」

 一瞬、ボクの中身を見透かされた気がした。
 なんだろう、見た目以上に不思議な人だ。

 異世界人がこの世界に来たのって、かなり前だって聞いたことあるのに。
 その人にも会ったことがあるなんて。

「さてさて、今欲しいのはそっちの鳥の首輪じゃな」
「はい、そうです。なんか暴走した時とかに止めることも出来るやつがあるって、ギルド長から聞きました」
「そうさね。あるにはあるのじゃが……」

 ぽちの周りを一周し、あごに手を当てながらユメリは何かを考えているようだった。

「首太すぎとかですか?」
「いやそうじゃないんだが。そうじゃのう、ルルド。暴走したコレを止める首輪っていうのは、どんな仕組みじゃと思う?」

 急にボクに向き直り、ユメリはボクを見た。
 仕組み? なんだろう。

 急にそんなことを振られると思わなかったボクは、ぽちを見た。

「暴走したぽちを止める、か……」

 見た目は可愛らしい鳥でしかないけど、ぽちはモンスターだ。
 しかも大きくなれば、力ではボクは敵わない。

 親鳥にだって、簡単に投げ飛ばされてしまったし。
 それを止めることの出来る首輪。

 そう考えると、あまり良い考えは浮かんではこなかった。

「ルルド。ここに二つの首輪がある」

 ボクが考える間に、いつの間にかユメリは店の奥から首輪を出してきていた。
 
 一つは紫色の魔法石のようなものがはめられた首輪。
 もう一つは、それこそペットに付けるような皮の首輪だった。

「この魔石の付いた方は、暴走を止めることが出来る。しかしこっちの皮の首は、ただの所有者ありの魔物の印でしかない。お主ならどちらを選ぶ」

 まっすぐなユメリの瞳。
 ボクは試されている気がした。

 たぶんボクの考えが間違っていなかったら、正解はこっちだ。
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