異世界配信で、役立たずなうっかり役を演じさせられていたボクは、自称姉ポジのもふもふ白猫と共に自分探しの旅に出る。

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化

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004 最悪な決定事項

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 あくまでもボクたちがしているのは芝居だ。

 確かに、サイラスたちは弱くはない。
 だけど本物の戦闘と、お芝居の戦闘ではワケが違う。

 特にこの街の西に広がる森は深く、あんな初級者ダンジョンのような簡単に倒せるモンスターばかりではない。
 しかも区切られた空間でもないから、何が出てくるかなんて運だ。

 そんなところで芝居を行いながら、いつも通りに撮影するなんて無謀すぎるよ。

「でもでも! もし何かあったら……」
「臆病者だな。それでもお前は冒険者か?」
「そうよ。それにどうせ、あんたなんて逃げ回るだけの役でしょう? 一番楽じゃないの」
「そ、それはそうだけど」

 確かにどんな状況だって、ボクがやることは変わりはしないけど。
 でも事故になるんじゃないかな。

 そんなことになったら、取り返しがつかなくなる。
 どうするつもりなんだろう。

「これは、スポンサーからの要望だ」

 スポンサーって。
 自分たちは高みの見物なのに、こんな危険なことをさせるなんていい気なもんだよ。

「いつもの企画じゃあ、いい加減見る方たちが飽きて来ているらしいからな」
「それにアタシたちも飽きてきたとこだし、ちょうどいいわ」
「そんなの……」

 本当に昔の企画とかみたいだな。
 だんだん視聴率のために過激になっていくなんて。

 体を張る方は命がけなのに……。
 簡単にやれとか、言わないで欲しいよ。

「いいか、もう一度だけ言うぞ? これは決定事項だ」

 サイラスは更に強く言い放つ。
 これ以上、文句を言うならといった感じだろう。

 決定事項なら、もうそれは従うしかない。
 ボクには拒否権なんてないし。
 そういうのは許されないことだから。

「……うん、分かったよサイラス」
「だが喜べ! その代わりとしては、分け前はいつもより多い。スポンサーが危険手当として、色を付けるとのことだ。それにこの大掛かりな撮影が終わったら、新しい役に昇格してやる」
「うん!」

 ボクの取り分はみんなの半分くらいしかないから、倍とは言っても結局いつものみんながもらう手当と同じになるだけ。

 でも宿代だってばかにならないし、服などもある意味消耗品だ。
 みすぼらしくはならないくらいに、サイラスたちはボクにお金をくれているけど。

 いつでも生活はカツカツだもの。
 好きなものだって買えないし、リーシャにだって何か買ってあげたい。

 それになんといっても、やっと新しい役をもらえる。
 あんな惨めな役じゃなければ、きっとリーシャだってボクを見直してくれるはずだ。

 昨日は……ひどいこと言っちゃったな。
 帰ったらちゃんと謝ろう。
 自分の感情に任せて言っていいことじゃなかったもの。

 そのためにはまず、無事に帰還しないと。
 
 ボクはやや逸る気持ちを押さえ、深呼吸をした。

「これから打合せするぞ」
「うん」
「まず、台本はこうだ。木の実を見つけたルルドが森の茂みに飛び込む。するとそこからモンスターが飛び出してくるというとこから始まり、他のメンバーが苦戦しつつも強いモンスターを倒す」

 基本的にモンスターは、どこからでも飛び出してくる。
 森とはそういうものだ。
 だけどこの撮影の問題点は、何のモンスターが出てくるか分からないということ。

 そう、これは賭けなんだ。
 手頃なモンスターが出てくれば成功。

 だけど、強くても弱くても失敗になってしまう。

 ただそんなことをココでいくら話したところでどうにもならない。
 そう。
 本当にどうにもならないという現実を、ボクたちはこの後、嫌というほど思い知ることになった――


・*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚・*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚

お読みいただけます読者サマに感謝

この度は当作品をお読みいただきまして、大変ありがとうございます。

男性主人公のファンタジーが初挑戦で、ビクビクしながらUPしております。

もしほんの少しでも良いと思っていただけましたなら、

ブクマ・しおり・励まし等の感想等

いただけますと作者泣いて駆け回ります。

最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたしますυ´• ﻌ •`υ
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