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024 突き刺さる視線

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「お二人が優しい方たちで、本当に良かったです」
「ば、な。何だよ、急に」
「思ったことを言っただけですよ」
「まったく君は……」
「んなこと言って、俺たちが本当は悪い奴でルルドのことをこき使うために甘い言葉を言ってたらどうするんだよ」

 頬をやや膨らますガルドが、何とも言えない。
 女の子がやったらかわいいんだろうけど、なんか違う。

「あははははは。だって、ガルドさん、そういう難しそうなの無理そうだしー」

 こらえきれず、ボクは笑い出す。
 するとランタスもつられたように笑っていた。

「確かにな。こいつにそんな策略は無理だ」
「ですよねー」
「何だよ、二人して。俺だって考えることぐらいあるんだからな」
「あはははは。それはわかってますが、さすがに計算高くは合わなさそう」
「間違いない」
「ホント、二人して失礼な奴らだ」

 ランタスと二人でひとしきり笑ったあと、ボクは宿へ向かうガルドを見送った。

 だんだんと日が落ち、あたりは暗くなっていく。
 暖かだった日中とは違い、山から吹く風は冷たい。

「リーシャたち、心配しているだろうな。急がなきゃ」

 足早に駆け出せば、どこかから視線を感じる。

「ん?」

 振り返ってもその影はない。
 
 つけられてる感じはないけど、あんまりいい視線じゃなかった。
 街の入り口には門番さんがいる。
 きっとそこまで走れば、追いかけてはこないだろう。

 ボクは大きく息を吸うと、そのまま全速力で走りだす。
 
「どうした坊主、そんなに急いで。もう日が暮れるのに、街の外に出るのは危険だぞ?」
「門番さん!」

 優しそうなその顔に、ボクはほっと胸を撫でおろす。
 振り返っても、やはり人影はない。
 追いかけてはこなかったみたいだ。

「何かあったか?」

 後ろを気にするボクに、やや険しい声に変わる。
 門番は槍を構えたまま、ボクの後ろへと回った。
 そしてひとしきり気配を確認すると、ボクに視線を合わせる。

「大丈夫かい? 何かあったのなら、ギルドまで送っていくが」
「ううん。もう大丈夫そう」

 ふぅ、っと思わず息を漏らす。
 急に一人になったから、怖くなっただけかもしれない。

 あの街を出てから、一人で行動することなんてなかったからなぁ。
 やっぱり誰かといる方が安心する。

「それならいいが、あんまり無茶したらダメだぞ?」

 門番はまるで子どもにするように、ボクの頭をぽんぽんとした。
 ふふふ。なんか変な感じ。

 人じゃないし、犬の耳も生えてるのに、全然普通に接してくれる。

「うん。街の外に仲間がいるんだ。んと、テイマーでね、モンスターを連れてて」
「ああ、それで街の中に入れないのか」
「うん。そうなの」
「一度ギルドで聞いてみるといい。きちんとした手順を踏めば、街の中に入れても良いって許可をもらえるモンスターもいるからな」
「えー。そうなんだ」
「そうさ。ただまぁ、宿は無理だろうが。広場でテントなど張ることも出来るからな」

 そういう仕組みがあるのはありがたいな。
 あのヒナは、基本的に人を襲う部類のモンスターじゃないって言ってたし。

 もしかしたら許可が下りるかもしれない。
 そうしたら、リーシャと三人で野宿することもないし。

 この病の件が片付いたら、確認してみよう。

「ありがとうございます。すごくいい情報が聞けました」
「いや、いいさ。子ども一人では何かと危ないからな」
「はい」
「仲間が待っているとはいえ、夜の森はとにかく危険だから気を付けるんだぞ」
「はーーーい」

 手を振り、ボクは街を出た。
 そして匂いを頼りに、森の中を進む。

 入口から少し離れた木の上を見上げた。

「おっそーーーーい」

 ヒナの背に乗りながら、リーシャたちが急降下してくる。
 
 言葉を交わさずとも、リーシャの言いたいことがわかるのか、的確に動くヒナ。
 そんな息ぴったっりな二人を見ていると、なんだかボクはほっこりしてしまった。
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