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「また? またって一体どういうこと」
「だってお姉さん、わたしのために一緒に転生してくれたんでしょ?」
恐怖から、手を振りほどく。
私はこの子を知っている。
ああ、嘘でしょ。
「いたーい。この前は離さずに最後まで掴んでいてくれていたのに」
クロエがニタリと笑った。
転生した時点で、転生ゲームだと分かった時点で、どうして私は気付かなかったのだろう。
あの時一緒にホームから落ちた子も、転生しているかもしれないということに。
声にならない悲鳴を上げた。
体が小刻みに震えている。
どんな断罪よりも、こんなに恐ろしいことはあるのだろうか。
「わ、私が何をしたと言うの」
「やだなぁ、一目惚れですよ、一目惚れ。ルーシエさまも、ルーシエさまによく似たお姉さんも、クロエだーいすき」
「ちょっと待って。百合エンドなんて、私は望んでない」
「なに言ってるんですかぁ。ヒロインはクロエですょ。選ぶ権利は、ルーシエさまにあるわけないじゃないですか。だって、ゲームってそういうものでしょ」
この子、おかしい。
私は静かに首を横に振った。
「この者を、不敬罪で連れていけ」
リオンの一言で、控えていた兵によってクロエが連行されて行く。
「あははははは。ルーシエさま、すぐに会いに行きますから、ちゃーんと綺麗なままで待っていて下さいね」
「ルーシエ、これはそのだな、俺は騙されていて……だから」
「……慰謝料を請求します。このケガに対してと、名誉棄損、それからお妃教育で時間を無駄にしたことに対して。もちろん、払って下さいますよね」
「それは、その……」
「次期国王であるあなたが、こんなことをして謝罪も賠償もないなんてことは、ありませんよね?」
「そ、それは分かっている。分かってはいるが婚約は、婚約だけは」
「お断りいたします。それに、ここに集まっているご令嬢方、次のお妃候補はあなたたちの誰かですわ。泣いても、寝る時間も自由になる時間も全くない拷問なような日々をプレゼントいたします。誰も助けて下さいませんでしたものね」
辺りを見渡すと、皆は一様に私から目を背けた。
でも、背けたところで誰かが選ばれることに変わりはない。
私はこんな暴力男からも、ストーカー女からも絶対逃げ切ってみせる。
乙女ゲームなんて、もうまっぴらごめんよ。
冗談じゃない。
ここが今の私のリアルでしかないなら、ココから勝手にさせてもらうわ。
「絶対に逃げ切ってみせる!」
もうこれは、ゲームであって、ゲームではない。
誰かの駒になって選択権を与えたりなんてしない。
絶対に私は私として逃げ切ってみせる。
破れたドレスと、傷ついた重たい体を引きずるように会場を後にした。
誰1人、私を止める者はいなかった。
「だってお姉さん、わたしのために一緒に転生してくれたんでしょ?」
恐怖から、手を振りほどく。
私はこの子を知っている。
ああ、嘘でしょ。
「いたーい。この前は離さずに最後まで掴んでいてくれていたのに」
クロエがニタリと笑った。
転生した時点で、転生ゲームだと分かった時点で、どうして私は気付かなかったのだろう。
あの時一緒にホームから落ちた子も、転生しているかもしれないということに。
声にならない悲鳴を上げた。
体が小刻みに震えている。
どんな断罪よりも、こんなに恐ろしいことはあるのだろうか。
「わ、私が何をしたと言うの」
「やだなぁ、一目惚れですよ、一目惚れ。ルーシエさまも、ルーシエさまによく似たお姉さんも、クロエだーいすき」
「ちょっと待って。百合エンドなんて、私は望んでない」
「なに言ってるんですかぁ。ヒロインはクロエですょ。選ぶ権利は、ルーシエさまにあるわけないじゃないですか。だって、ゲームってそういうものでしょ」
この子、おかしい。
私は静かに首を横に振った。
「この者を、不敬罪で連れていけ」
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「あははははは。ルーシエさま、すぐに会いに行きますから、ちゃーんと綺麗なままで待っていて下さいね」
「ルーシエ、これはそのだな、俺は騙されていて……だから」
「……慰謝料を請求します。このケガに対してと、名誉棄損、それからお妃教育で時間を無駄にしたことに対して。もちろん、払って下さいますよね」
「それは、その……」
「次期国王であるあなたが、こんなことをして謝罪も賠償もないなんてことは、ありませんよね?」
「そ、それは分かっている。分かってはいるが婚約は、婚約だけは」
「お断りいたします。それに、ここに集まっているご令嬢方、次のお妃候補はあなたたちの誰かですわ。泣いても、寝る時間も自由になる時間も全くない拷問なような日々をプレゼントいたします。誰も助けて下さいませんでしたものね」
辺りを見渡すと、皆は一様に私から目を背けた。
でも、背けたところで誰かが選ばれることに変わりはない。
私はこんな暴力男からも、ストーカー女からも絶対逃げ切ってみせる。
乙女ゲームなんて、もうまっぴらごめんよ。
冗談じゃない。
ここが今の私のリアルでしかないなら、ココから勝手にさせてもらうわ。
「絶対に逃げ切ってみせる!」
もうこれは、ゲームであって、ゲームではない。
誰かの駒になって選択権を与えたりなんてしない。
絶対に私は私として逃げ切ってみせる。
破れたドレスと、傷ついた重たい体を引きずるように会場を後にした。
誰1人、私を止める者はいなかった。
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