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ドンという体に衝撃が走り、右肩からそのまま倒れ込む。
「っっっつ、痛い」
その瞬間、女の子たちの悲鳴がホールに響き渡った。
私は何が起きたのか分からず、頭の回転が追い付かない。
この日のためにわざわざ仕立てた真新しい薄紅色のドレスは、その衝撃で所々が破れてしまっている。
私はズキズキと痛む肩を押さえながら、なんとか上体を起こした。
見上げたそこには、私を突き飛ばした当人がいる。
私のドレスと同じ色の髪に、黒い瞳。
短い髪をかき上げながら眉間にシワを寄せ、睨みつけている。
人を突き飛ばしたのに、それでも足りないと言わんばかりだ。
なに? 何が起こったの? どうして、こんなことに。
「もうこれ以上、お前には付き合ってらいれない。ルーシア・カルテット、お前との婚約を破棄させてもらう」
「リオン……様?」
リオン様は何を言っているの?
意味がまったく分からないわ。
しかもこんな婚約式の場で、このように暴力を振るわれるなんて。
「とぼけても無駄だ。幾度となく、お前より身分が低いからと言ってこのクロエへ嫌がらせをしたのは分かっているんだぞ。挙句、飲み物に毒を仕込むなど。もうこれ以上黙ってはいられない」
リオンの横にクロエと呼ばれた女性が立っていた。
黒く長い髪をハーフアップにし、大きな紫の瞳。
愛らしく、誰からも慕われるような可憐な存在だ。
あれ? この場面って……。
私はこの場面を何度も見たことがある。
そう、何度も。
でも、いつでも私はクロエ側だった。
断罪する王太子のリオンに寄り添い、しなだれかかり、涙ながらにその光景を見つめるという。
しかし今実際に私はルーシアなのだ。
断罪する側ではなく、断罪される側であり、今まさにそのクライマックスのシーンにいる。
これ、スチール?
いやでも、それにしてはおかしいよね。
なんで私、ルーシアなの。
ズキズキと痛む肩が、これは現実だと教えてくれていた。
「っっっつ、痛い」
その瞬間、女の子たちの悲鳴がホールに響き渡った。
私は何が起きたのか分からず、頭の回転が追い付かない。
この日のためにわざわざ仕立てた真新しい薄紅色のドレスは、その衝撃で所々が破れてしまっている。
私はズキズキと痛む肩を押さえながら、なんとか上体を起こした。
見上げたそこには、私を突き飛ばした当人がいる。
私のドレスと同じ色の髪に、黒い瞳。
短い髪をかき上げながら眉間にシワを寄せ、睨みつけている。
人を突き飛ばしたのに、それでも足りないと言わんばかりだ。
なに? 何が起こったの? どうして、こんなことに。
「もうこれ以上、お前には付き合ってらいれない。ルーシア・カルテット、お前との婚約を破棄させてもらう」
「リオン……様?」
リオン様は何を言っているの?
意味がまったく分からないわ。
しかもこんな婚約式の場で、このように暴力を振るわれるなんて。
「とぼけても無駄だ。幾度となく、お前より身分が低いからと言ってこのクロエへ嫌がらせをしたのは分かっているんだぞ。挙句、飲み物に毒を仕込むなど。もうこれ以上黙ってはいられない」
リオンの横にクロエと呼ばれた女性が立っていた。
黒く長い髪をハーフアップにし、大きな紫の瞳。
愛らしく、誰からも慕われるような可憐な存在だ。
あれ? この場面って……。
私はこの場面を何度も見たことがある。
そう、何度も。
でも、いつでも私はクロエ側だった。
断罪する王太子のリオンに寄り添い、しなだれかかり、涙ながらにその光景を見つめるという。
しかし今実際に私はルーシアなのだ。
断罪する側ではなく、断罪される側であり、今まさにそのクライマックスのシーンにいる。
これ、スチール?
いやでも、それにしてはおかしいよね。
なんで私、ルーシアなの。
ズキズキと痛む肩が、これは現実だと教えてくれていた。
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