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012 秘密の花園ですって

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「突拍子もないというか、ある意味効率が良いやり方だな」

 王宮の中庭で私の隣を歩くクロードは、どこか楽しそうだった。
 今日は本当ならば、私と殿下が顔を合わせてお茶会するという日だった。

 もちろんこの予定は、もう半月以上も前から決まっていたこと。
 しかし今回もまた、不測の事態が起きたらしい。

 はいはいはいはい。って感じだわ。
 もっとやりようがあると思うのに。

「毎回ですからね。それにあの方の性格を考えたら、タイミングはバッチリかと思いますわ」
「あいつは毎回こうなのか?」

 さすがのクロードも呆れたように、その漆黒の髪をかきわけた。
 そう。私との会う予定をキャンセルするのは、毎回のことだった。

「毎回です。これでもお会いする前までは、本当にその嘘を信じていたのですけどね」
「殿下の嘘を、か?」
「そうですね。嘘だなんて、少しも思ったことはありませんでした」

 むしろ病気になったり、怪我をしてしまったり、急な仕事が入った彼の身を心配していた。
 王太子というものは、それほど大変なものなのだろうと。

 あの頃の健気な私を返して欲しいくらいだわ。
 なんで私が、あんなヤツのことを心配なんかしなくちゃいけなかったのよ。

 無駄な時間返せっつーの。
 慰謝料とか、請求できないものなのかしら。
 ほら、婚約破棄の慰謝料。

 それで悠々自適な異世界ライフを満喫したいわ。
 前回分の慰謝料も、結局もらってないし。
 二倍もらったって、足りないぐらいよ。

「こんなに可憐な君の顔を曇らすなど、本当にヤツはグズとしか言いようがないな」
「グズというよりも、ゴミですね」
「粗大ゴミ? あー、大きなという意味か」
「あー。そうです、それです。死ぬほど大きなゴミです」

 いけない。
 記憶が戻ってからというもの、こっちの言葉とあっちの言葉の区別が曖昧になってしまってるのよね。

 粗大ゴミなんて言葉、こっちにはなかったわ。
 大きなという意味じゃなくて、処分するのに有料なゴミって言いたかったんだけど。
 さすがに過去の記憶があると言ったら、変に思われてしまうから、気をつけないと。

「にしても、よく居場所を突き詰めたものだな」
「それは人の戸口……じゃなくて、使用人たちの情報網はバカに出来ないということですわ。使用人たちは皆、私に同情的ですから」

 でもまさか、王宮内では殿下の素行が公然の秘密であったなんてね。
 知らなかったのは私だけ。
 みんな私に気を遣っていたようだけど、出来ればもっと早くに教えて欲しかったというのが本音。

 毎回私との面談をするために開けていた時間を、自分の欲望のために使用していただなんて。
 しかも他の女たちとの面会は、秘密の花園だなんて名前を付けていたらしい。
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