52 / 52
エピローグ ~溺愛ルートは鳥籠の中~
しおりを挟む
「姉上、やっと王妃なったというのに、帰ってきても大丈夫なんですか?」
レオはそんなコトを言いながらも、とてもにこやかな笑顔を浮かべている。
前国王の戴冠式、ルドの即位式、そして私たちの結婚式。
先月には新婚旅行という名の、外遊にも出かけてきた。
目まぐるしく変わる環境の中でもルドは相変わらず、私の元へ帰ってきてくれている。
「いーんじゃないかなー。だってお忍びの里帰りだしー」
「まったく新婚早々、何をしてるのやら。で、今回は何が原因なのですか? 喧嘩でもしたんでしょう」
「ん-。喧嘩って言うかさぁ、陛下が記憶のことを持ち出すから……」
一連の行事が始まる前に、家族にはキチンと自分のアーシエとしての記憶がないことは告げていた。
さすがに、過去の記憶がないことまでは伝えられなかったが。
それでもなにか察することがあるかのように、みんなは私を受け入れてくれたのだ。
今のありのままの私を。
「記憶って言っても、アーシエがアーシエでないことに対して、陛下がなにか言ったわけではないのでしょう?」
「うん……それはそうだけど……。記憶を取り戻したいっていうから」
「それはある意味、義理兄上が姉上のことを思っての提案だったんじゃないんですか?」
「分かっるよ。きっとそうだって……。でもさぁ……」
分かってはいても、そんな些細な言葉で傷つく自分がいる。
それはきっと、ルドが本当に好きだから。
ルドの口から記憶のことを言われると、なんだか記憶がないことがダメなコトのように思えてしまったのだ。
頭では、他意などないことは分かっているのに。
おそらくルドにではなく他の人に言われていたら、なんとも思わなかったのだろうな。
「陛下に……ルド様には言われたくなかったの……」
「まぁ気持ちは分かりますよ。今の自分を否定されたような気がしたんですよね?」
「そうなの、そうなのよレオ。レオなら分かるでしょう」
「分かりますが、そういうのはココで愚痴を言っても始まらないのですよ姉上。言いたいことはちゃんと本人に言わないと」
「……ぅん、わかってるぅ」
「分かってないですよ。もう家族なんだから、そういう会話はきちんとしないと」
「うー。レオが優しくなぁい」
「あんまり姉上を溺愛すると、あとが怖いですからね~」
「えー、なにそれぇ」
レオは立ち上がった後、テーブルに突っ伏す私の頭を撫でた。
「ほらほら、噂をすればなんとかですよ。あとは自分で頑張って下さい姉上」
そう言って、レオは屋敷へと戻ってゆく。
「アーシエすまない! 君がこんなに怒るなんて思わなかったんだ」
「陛下、公務を抜け出してどうするんです」
「僕はただ、君に記憶が戻った方が君がこれからも安心して暮らせるのではないかと思っただけで……」
「知りません」
「アーシエ」
「だって……。記憶がない不完全な私のことが嫌になってしまったのかと……悲しくなってしまったんですもの」
これは本音だ。
あれから日記を読んでも母たちから幼い頃の話を聞いても、思い出の場所に行っても、微かになにかは記憶しているものの、すべてが戻ることはなかった。
それがいつまでも不完全のような気がして、ことあるごとに私を苛める。
私はは私。そう受け入れているはずなのに、ほんの少しのことで揺らいでしまうのだ。
「愛している、君を。たとえ君が誰であっても、なんであっても。この世界でただ一人の、そのままの君を愛しているんだ」
ルドは跪き、私に手を差し伸べる。
「な、な、な。陛下、いけません。国王たるもの、そのような」
ルドの行動に驚いた私は、勢いよく立ち上がった。
「国王であっても何であっても、愛する人のためなら、どんなコトだって僕はいとわないよ。だから機嫌を直しておくれ」
この笑顔に、この行動。もうホントに、反則だわ。こんなコトを言われたら、もうなにも言えなくなってしまう。
「帰ってきてくれるかい? 鳥籠に」
「もぅ」
ぶぅっと頬を膨らませたあと、それでも私はルドの手を取った。
「あなたのいるとことならば、鳥籠でもなんでも入りましょう。だって、あなたが私を愛してくれるなら」
断罪ルートと勘違いしたあの日から、私の心はもうずっととらわれている。
でも幸せだから、そんなことはどうでもいいのだ。
鳥籠は私を守るためのモノだって、もう知っているから。
私はルドの手を取り、二人で歩き出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただいた読者様に激感謝♡
いつもお読みいただきまして大変ありがとうごさいます。
感謝しかありません。
もしよろしければ、ブクマ・しおり・感想いただけますと今後の励みとなりますので、よろしくお願いいたします。
また新しく短編も二本ほど完成いたしましたので、もしよろしければ読みに来ていただけますと作者は泣いて喜びます(ᴗ̤ .̮ ᴗ̤ )₎₎ෆ
レオはそんなコトを言いながらも、とてもにこやかな笑顔を浮かべている。
前国王の戴冠式、ルドの即位式、そして私たちの結婚式。
先月には新婚旅行という名の、外遊にも出かけてきた。
目まぐるしく変わる環境の中でもルドは相変わらず、私の元へ帰ってきてくれている。
「いーんじゃないかなー。だってお忍びの里帰りだしー」
「まったく新婚早々、何をしてるのやら。で、今回は何が原因なのですか? 喧嘩でもしたんでしょう」
「ん-。喧嘩って言うかさぁ、陛下が記憶のことを持ち出すから……」
一連の行事が始まる前に、家族にはキチンと自分のアーシエとしての記憶がないことは告げていた。
さすがに、過去の記憶がないことまでは伝えられなかったが。
それでもなにか察することがあるかのように、みんなは私を受け入れてくれたのだ。
今のありのままの私を。
「記憶って言っても、アーシエがアーシエでないことに対して、陛下がなにか言ったわけではないのでしょう?」
「うん……それはそうだけど……。記憶を取り戻したいっていうから」
「それはある意味、義理兄上が姉上のことを思っての提案だったんじゃないんですか?」
「分かっるよ。きっとそうだって……。でもさぁ……」
分かってはいても、そんな些細な言葉で傷つく自分がいる。
それはきっと、ルドが本当に好きだから。
ルドの口から記憶のことを言われると、なんだか記憶がないことがダメなコトのように思えてしまったのだ。
頭では、他意などないことは分かっているのに。
おそらくルドにではなく他の人に言われていたら、なんとも思わなかったのだろうな。
「陛下に……ルド様には言われたくなかったの……」
「まぁ気持ちは分かりますよ。今の自分を否定されたような気がしたんですよね?」
「そうなの、そうなのよレオ。レオなら分かるでしょう」
「分かりますが、そういうのはココで愚痴を言っても始まらないのですよ姉上。言いたいことはちゃんと本人に言わないと」
「……ぅん、わかってるぅ」
「分かってないですよ。もう家族なんだから、そういう会話はきちんとしないと」
「うー。レオが優しくなぁい」
「あんまり姉上を溺愛すると、あとが怖いですからね~」
「えー、なにそれぇ」
レオは立ち上がった後、テーブルに突っ伏す私の頭を撫でた。
「ほらほら、噂をすればなんとかですよ。あとは自分で頑張って下さい姉上」
そう言って、レオは屋敷へと戻ってゆく。
「アーシエすまない! 君がこんなに怒るなんて思わなかったんだ」
「陛下、公務を抜け出してどうするんです」
「僕はただ、君に記憶が戻った方が君がこれからも安心して暮らせるのではないかと思っただけで……」
「知りません」
「アーシエ」
「だって……。記憶がない不完全な私のことが嫌になってしまったのかと……悲しくなってしまったんですもの」
これは本音だ。
あれから日記を読んでも母たちから幼い頃の話を聞いても、思い出の場所に行っても、微かになにかは記憶しているものの、すべてが戻ることはなかった。
それがいつまでも不完全のような気がして、ことあるごとに私を苛める。
私はは私。そう受け入れているはずなのに、ほんの少しのことで揺らいでしまうのだ。
「愛している、君を。たとえ君が誰であっても、なんであっても。この世界でただ一人の、そのままの君を愛しているんだ」
ルドは跪き、私に手を差し伸べる。
「な、な、な。陛下、いけません。国王たるもの、そのような」
ルドの行動に驚いた私は、勢いよく立ち上がった。
「国王であっても何であっても、愛する人のためなら、どんなコトだって僕はいとわないよ。だから機嫌を直しておくれ」
この笑顔に、この行動。もうホントに、反則だわ。こんなコトを言われたら、もうなにも言えなくなってしまう。
「帰ってきてくれるかい? 鳥籠に」
「もぅ」
ぶぅっと頬を膨らませたあと、それでも私はルドの手を取った。
「あなたのいるとことならば、鳥籠でもなんでも入りましょう。だって、あなたが私を愛してくれるなら」
断罪ルートと勘違いしたあの日から、私の心はもうずっととらわれている。
でも幸せだから、そんなことはどうでもいいのだ。
鳥籠は私を守るためのモノだって、もう知っているから。
私はルドの手を取り、二人で歩き出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただいた読者様に激感謝♡
いつもお読みいただきまして大変ありがとうごさいます。
感謝しかありません。
もしよろしければ、ブクマ・しおり・感想いただけますと今後の励みとなりますので、よろしくお願いいたします。
また新しく短編も二本ほど完成いたしましたので、もしよろしければ読みに来ていただけますと作者は泣いて喜びます(ᴗ̤ .̮ ᴗ̤ )₎₎ෆ
55
お気に入りに追加
876
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢、猛省中!!
***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」
――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。
処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。
今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!?
己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?!
襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、
誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、
誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。
今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~
甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。
その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。
そんな折、気がついた。
「悪役令嬢になればいいじゃない?」
悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。
貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。
よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。
これで万事解決。
……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの?
※全12話で完結です。
死んだはずの悪役聖女はなぜか逆行し、ヤンデレた周囲から溺愛されてます!
夕立悠理
恋愛
10歳の時、ロイゼ・グランヴェールはここは乙女ゲームの世界で、自分は悪役聖女だと思い出した。そんなロイゼは、悪役聖女らしく、周囲にトラウマを植え付け、何者かに鈍器で殴られ、シナリオ通り、死んだ……はずだった。
しかし、目を覚ますと、ロイゼは10歳の姿になっており、さらには周囲の攻略対象者たちが、みんなヤンデレ化してしまっているようで――……。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
殺されたくない転生悪女は、ヤンデレ婚約者と婚約を破棄したい!!
夕立悠理
恋愛
楽しみにしていた魔法学園の入学式で、私は前世の記憶を思い出した。前世の記憶によると、ここは乙女ゲームの世界で、私はヤンデレな攻略対象者たちから様々な方法で殺される悪役令嬢だった! って、殺されるとか無理だから! 婚約者にベタ惚れで、イエスマンな私は今日でやめます!! そして婚約破棄を目指します!! でも、あれ? なんだか、婚約者が私を溺愛してくるんですが……?
※カクヨム様小説家になろう様でも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
テンポ良くハラハラドキドキ感がすごい。
ヤンデレはもう少し強くても良かったかも。
アーシエが可愛いかったから、楽しかったです。