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ユリティスが体を密着させてくる。
距離が近づいた分、逆に足が自由が利くようになったことに気づく。
どうせ泣き叫んでも助けが来ないならば……。
私はユリティスが触る反対の足を高く振り上げ、そのまま踵でユリティスの背骨目がけて振り下ろした。
「ぐはっ!」
さすがに渾身の一撃を背骨に食らい、背中を押さえたユリティスが体を起こす。
私は上体を素早く起こすと、足でユリティスの顎を蹴り上げた。
「ああああ、きさまぁ!」
「そこらの令嬢と一緒にしないでちょうだい。こっちはあんたなんかより、よっぽど長く生きているんだから」
どこが急所かぐらいは、私にも分かる。
ただ、ユリティスを蹴り上げた足が痛い。結局頑張っても、体はひ弱な令嬢ってとこが残念過ぎる。
それでも抵抗しないわけにもいかず、私はベッドから飛び降りた。
「待て!」
立ち上がろうとした瞬間、ユリティスの手が髪を掴んだ。
「いったぁぁぁあい! やだ、離して! 離しなさい!」
「お前みたいなやつを生かしておいたことが間違いだった。ユイナの言う通り、初めから殺しておけばよかったよ」
「ふざけないで! そんな自分たちにだけ都合のいい話、通るわけないでしょう」
髪の根元を持ちダメージ軽減を試みても、ユリティスの手はぐいぐいと力を強め、手繰り寄せる。
「いったーーい。離して!」
「離せと言われて、離すわけがないだろう。いい加減に大人しくしろ。こんな女のどこに、殿下が惹かれたのか、さっぱりわからないな」
「ルド様の悪口は辞めて。それに、自分のコトしか見えない女と、権力のコトしか頭にない馬鹿な奴より、私も十分マシだと思いますけど?」
もうどうせ殺されるなら、言いたいことも言ってやる。
まったく、ホントにこの転生は何なのだろう。
せっかく社畜を卒業したというのに、勘違いヤンデレルートからに入ったと思ったら、権力争いで殺害フラグ?
冗談じゃないわ。前世で何をしたって言うのよ。っていうか、これ運とかの問題だけじゃないでしょう。
ただこんな時ですら願うのは、一目だけでもルドに会いたいという思いだけ。
もっと素直になれていたら選択を間違えなければ、こんなことにはなっていなかったのかな。
そう考えると全てが馬鹿馬鹿しく思えてくる。
受け入れてもらえないことばかり考えて、私はなにもしてこなかったのだから。
「貴様、今すぐ殺してやる」
「ルド……さま……」
会いたいよ。会いたかった……もう一度だけでも。ただ、あなたに。
ユリティスは腰に差していた剣を抜き放った。
目を瞑るしか、私には出来なかった。
切られたら痛いのだろう。などと思いつつも、その瞬間はついには来なかった。
その代わりに、金属と金属の擦れるような甲高い音が部屋の中に響き渡る。
「!?」
恐る恐る目を開けると、視界いっぱいに望んでいた人の背中があった。
「ル……ド様?」
今すぐに抱き着きたくなる気持ちを必死に抑える。
先ほど剣を持っていたユリティスはどうしたのかと肩越しに覗けば、腕を押さえうずくまったユリティスが見える。
ルドも剣を構えているところを見ると、ルドが弾き飛ばしたのだろう。
私、助かったの? もう大丈夫ってと? ルド様が本当に助けに来てくれたの?
これ、都合のいい夢じゃないよね。
体中から感じる痛みは、確かに現実を伴っている。
そっか、これも現実なんだ。なんだ……そこまで私、運に見放されてなかったのかな。
ふふふ。ルド様だ……。ちゃんと私の目の前にいる。
この瞬間を待っていたかのように、数名の騎士たちも部屋になだれ込んで来た。
「アーシエ!」
「ルド様……会いたかった……」
ルドの声が遠くから聞こえた。
そしてその温かな腕に抱きとめられる。
「ああ、よかった。アーシエ、君が無事で」
もう離れたくない。
そんな思いの中、私は意識の糸を手放した。
距離が近づいた分、逆に足が自由が利くようになったことに気づく。
どうせ泣き叫んでも助けが来ないならば……。
私はユリティスが触る反対の足を高く振り上げ、そのまま踵でユリティスの背骨目がけて振り下ろした。
「ぐはっ!」
さすがに渾身の一撃を背骨に食らい、背中を押さえたユリティスが体を起こす。
私は上体を素早く起こすと、足でユリティスの顎を蹴り上げた。
「ああああ、きさまぁ!」
「そこらの令嬢と一緒にしないでちょうだい。こっちはあんたなんかより、よっぽど長く生きているんだから」
どこが急所かぐらいは、私にも分かる。
ただ、ユリティスを蹴り上げた足が痛い。結局頑張っても、体はひ弱な令嬢ってとこが残念過ぎる。
それでも抵抗しないわけにもいかず、私はベッドから飛び降りた。
「待て!」
立ち上がろうとした瞬間、ユリティスの手が髪を掴んだ。
「いったぁぁぁあい! やだ、離して! 離しなさい!」
「お前みたいなやつを生かしておいたことが間違いだった。ユイナの言う通り、初めから殺しておけばよかったよ」
「ふざけないで! そんな自分たちにだけ都合のいい話、通るわけないでしょう」
髪の根元を持ちダメージ軽減を試みても、ユリティスの手はぐいぐいと力を強め、手繰り寄せる。
「いったーーい。離して!」
「離せと言われて、離すわけがないだろう。いい加減に大人しくしろ。こんな女のどこに、殿下が惹かれたのか、さっぱりわからないな」
「ルド様の悪口は辞めて。それに、自分のコトしか見えない女と、権力のコトしか頭にない馬鹿な奴より、私も十分マシだと思いますけど?」
もうどうせ殺されるなら、言いたいことも言ってやる。
まったく、ホントにこの転生は何なのだろう。
せっかく社畜を卒業したというのに、勘違いヤンデレルートからに入ったと思ったら、権力争いで殺害フラグ?
冗談じゃないわ。前世で何をしたって言うのよ。っていうか、これ運とかの問題だけじゃないでしょう。
ただこんな時ですら願うのは、一目だけでもルドに会いたいという思いだけ。
もっと素直になれていたら選択を間違えなければ、こんなことにはなっていなかったのかな。
そう考えると全てが馬鹿馬鹿しく思えてくる。
受け入れてもらえないことばかり考えて、私はなにもしてこなかったのだから。
「貴様、今すぐ殺してやる」
「ルド……さま……」
会いたいよ。会いたかった……もう一度だけでも。ただ、あなたに。
ユリティスは腰に差していた剣を抜き放った。
目を瞑るしか、私には出来なかった。
切られたら痛いのだろう。などと思いつつも、その瞬間はついには来なかった。
その代わりに、金属と金属の擦れるような甲高い音が部屋の中に響き渡る。
「!?」
恐る恐る目を開けると、視界いっぱいに望んでいた人の背中があった。
「ル……ド様?」
今すぐに抱き着きたくなる気持ちを必死に抑える。
先ほど剣を持っていたユリティスはどうしたのかと肩越しに覗けば、腕を押さえうずくまったユリティスが見える。
ルドも剣を構えているところを見ると、ルドが弾き飛ばしたのだろう。
私、助かったの? もう大丈夫ってと? ルド様が本当に助けに来てくれたの?
これ、都合のいい夢じゃないよね。
体中から感じる痛みは、確かに現実を伴っている。
そっか、これも現実なんだ。なんだ……そこまで私、運に見放されてなかったのかな。
ふふふ。ルド様だ……。ちゃんと私の目の前にいる。
この瞬間を待っていたかのように、数名の騎士たちも部屋になだれ込んで来た。
「アーシエ!」
「ルド様……会いたかった……」
ルドの声が遠くから聞こえた。
そしてその温かな腕に抱きとめられる。
「ああ、よかった。アーシエ、君が無事で」
もう離れたくない。
そんな思いの中、私は意識の糸を手放した。
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