37 / 52
037
しおりを挟む
「な、なんなんですの?」
「だってほら、お席がないなら増やさないとダメじゃないですか~」
「だからと言って、これはわたくしのお茶会なのですよ! 非常識ではないですか」
「えー。知ってますよ? さすがにアーシエでもそれくらい分かりますわ。非常識って言われても、ユイナ令嬢のお茶会の規模を大きくしてあげただけですもん。親切心ですわ」
それでも十分すぎるほど、失礼なのはもちろん知ってますよ?
でもね、失礼には更なる失礼を~だよ、ユイナ令嬢。私はやられてらちゃんと倍返しするような性格なの、ごめんねー。
同じテーブルに同じお茶セット、全て同じものというトコがミソなのよ。
ちゃんとリサーチしたんだもの。
表向きは本当に規模の拡大だからね。これではなんにも言えないでしょう?
「そーだ。皆さまにお土産も持ってきたのですよ。ささ、そーんな顔せずに皆さん座って下さいな」
私とユイナ令嬢の顔色を窺うように、令嬢たちは交互に見合わせていた。
どちらについた方が得なのか。
みんなそんなことを考えているのだろう。
「ああ、大丈夫ですよ。ちゃぁんと皆様の分はありますから、どちらに座っても私は何とも思わないですからね」
ユイナ令嬢と違って、私はそんなに心は狭くないもの。
だからちゃんと自分たちで選んでね。
どっちの味方になるのか。
申し訳ないけど、こっちにだって選ぶ権利はあるんだから。
「なんなのよ、本当に!」
「そんなに怒ったお顔なさらずに楽しいお茶会、始めましょう?」
対照的な私たちの顔色を伺いながらも、令嬢たちは恐る恐る席に着いた。
私の席が、私を入れて五名で、ユイナ令嬢の席が全部で六名かぁ。
自分が勝ったとばかりにドヤ顔をしているユイナ嬢を私は華麗にスルーする。
別に数なんて興味ないのよね。
誰が座ってくれるのかが大事なだけで。数なんて興味はないの。まったく子どもね、ユイナ令嬢は。
まぁ、ある意味分かりやすいから扱いやすいけどね。これで本当に黒幕なのかしらって思うわ。
アーシエにはこんな子どもからの嫌がらせでも苦労していたのかな。なんか思ったより簡単にやっつけられそうなものだけど……。
やっぱりレオの件があったからかな。
「ああ、お土産、お土産。持ってきてちょうだい」
私は侍女たちに合図をして、レオからの包みを全ての令嬢たちに手渡した。
そしてその反応を見つつ、自分の席の令嬢たちをサラに目もメモするように小さく言づけた。
なにせ、令嬢たちの名前すら思い出せないから。私ではどうにもならないのよね。
「あの、これは……」
私の席に座った一人の令嬢が、嬉しさを隠しながらも声を上げた。
こっちの席のコたちは、表情もいいし、スパイっぽいコはいなさそうね。
「弟が今日のお茶会に参加する令嬢たちにって用意してくれたのですわ」
「まぁ、アーシエ令嬢の弟君が」
「ここってすごく有名なお店ですわよね」
「ええ。確か予約しても中々買えないから大変だって」
「……うれしい」
令嬢たちからは口々に高評価が飛ぶ。
レオが選んでくれたお菓子は大正解みたいね。
賄賂って分かってても、純粋に喜んでくれる辺りはやっぱりうれしい。
アーシエはこういう駆け引きもせず、ただじっとユイナ嬢からの攻撃に耐えて来たみたいだし。
今から全部挽回して楽しい人生やり直ししないとね。
「ああ、もちろんユイナ嬢にもありますよ?」
侍女に合図をして、一番大きな包装のプレゼントをユイナ嬢に差し出してもらう。
しかし怖い顔をこちらに向けたまま、受け取ろうとはしない。
お菓子に罪はないんだけど、プライドが高いから受け取りはしないと初めから予想はしてたのよね。
「本当にあなた何なのですの? 人のお茶会に来てこんな風に邪魔をするだなんて」
「邪魔? 何に対する邪魔なんですの?」
私をいじめるための、だなんて言えないわよねユイナ令嬢。
でもね、ココにいるみんながきっと分かっているわよ。
このお茶会の目的も意味も。
ただ誰もあなたが怖いから言及もせずに大人しく従っていただけで。
「いい加減に!」
「まぁまぁ、楽しそうなお茶会をなさっているのね」
ユイナ嬢が大きな声を上げ、立ち上がると同時にその声は少し遠くから聞こえてくる。
私はたちはその涼やかな声に、やや顔をこわばらせながら一斉に立ち上がった。
「だってほら、お席がないなら増やさないとダメじゃないですか~」
「だからと言って、これはわたくしのお茶会なのですよ! 非常識ではないですか」
「えー。知ってますよ? さすがにアーシエでもそれくらい分かりますわ。非常識って言われても、ユイナ令嬢のお茶会の規模を大きくしてあげただけですもん。親切心ですわ」
それでも十分すぎるほど、失礼なのはもちろん知ってますよ?
でもね、失礼には更なる失礼を~だよ、ユイナ令嬢。私はやられてらちゃんと倍返しするような性格なの、ごめんねー。
同じテーブルに同じお茶セット、全て同じものというトコがミソなのよ。
ちゃんとリサーチしたんだもの。
表向きは本当に規模の拡大だからね。これではなんにも言えないでしょう?
「そーだ。皆さまにお土産も持ってきたのですよ。ささ、そーんな顔せずに皆さん座って下さいな」
私とユイナ令嬢の顔色を窺うように、令嬢たちは交互に見合わせていた。
どちらについた方が得なのか。
みんなそんなことを考えているのだろう。
「ああ、大丈夫ですよ。ちゃぁんと皆様の分はありますから、どちらに座っても私は何とも思わないですからね」
ユイナ令嬢と違って、私はそんなに心は狭くないもの。
だからちゃんと自分たちで選んでね。
どっちの味方になるのか。
申し訳ないけど、こっちにだって選ぶ権利はあるんだから。
「なんなのよ、本当に!」
「そんなに怒ったお顔なさらずに楽しいお茶会、始めましょう?」
対照的な私たちの顔色を伺いながらも、令嬢たちは恐る恐る席に着いた。
私の席が、私を入れて五名で、ユイナ令嬢の席が全部で六名かぁ。
自分が勝ったとばかりにドヤ顔をしているユイナ嬢を私は華麗にスルーする。
別に数なんて興味ないのよね。
誰が座ってくれるのかが大事なだけで。数なんて興味はないの。まったく子どもね、ユイナ令嬢は。
まぁ、ある意味分かりやすいから扱いやすいけどね。これで本当に黒幕なのかしらって思うわ。
アーシエにはこんな子どもからの嫌がらせでも苦労していたのかな。なんか思ったより簡単にやっつけられそうなものだけど……。
やっぱりレオの件があったからかな。
「ああ、お土産、お土産。持ってきてちょうだい」
私は侍女たちに合図をして、レオからの包みを全ての令嬢たちに手渡した。
そしてその反応を見つつ、自分の席の令嬢たちをサラに目もメモするように小さく言づけた。
なにせ、令嬢たちの名前すら思い出せないから。私ではどうにもならないのよね。
「あの、これは……」
私の席に座った一人の令嬢が、嬉しさを隠しながらも声を上げた。
こっちの席のコたちは、表情もいいし、スパイっぽいコはいなさそうね。
「弟が今日のお茶会に参加する令嬢たちにって用意してくれたのですわ」
「まぁ、アーシエ令嬢の弟君が」
「ここってすごく有名なお店ですわよね」
「ええ。確か予約しても中々買えないから大変だって」
「……うれしい」
令嬢たちからは口々に高評価が飛ぶ。
レオが選んでくれたお菓子は大正解みたいね。
賄賂って分かってても、純粋に喜んでくれる辺りはやっぱりうれしい。
アーシエはこういう駆け引きもせず、ただじっとユイナ嬢からの攻撃に耐えて来たみたいだし。
今から全部挽回して楽しい人生やり直ししないとね。
「ああ、もちろんユイナ嬢にもありますよ?」
侍女に合図をして、一番大きな包装のプレゼントをユイナ嬢に差し出してもらう。
しかし怖い顔をこちらに向けたまま、受け取ろうとはしない。
お菓子に罪はないんだけど、プライドが高いから受け取りはしないと初めから予想はしてたのよね。
「本当にあなた何なのですの? 人のお茶会に来てこんな風に邪魔をするだなんて」
「邪魔? 何に対する邪魔なんですの?」
私をいじめるための、だなんて言えないわよねユイナ令嬢。
でもね、ココにいるみんながきっと分かっているわよ。
このお茶会の目的も意味も。
ただ誰もあなたが怖いから言及もせずに大人しく従っていただけで。
「いい加減に!」
「まぁまぁ、楽しそうなお茶会をなさっているのね」
ユイナ嬢が大きな声を上げ、立ち上がると同時にその声は少し遠くから聞こえてくる。
私はたちはその涼やかな声に、やや顔をこわばらせながら一斉に立ち上がった。
1
お気に入りに追加
876
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢を演じて婚約破棄して貰い、私は幸せになりました。
シグマ
恋愛
伯爵家の長女であるソフィ・フェルンストレームは成人年齢である十五歳になり、父親の尽力で第二王子であるジャイアヌス・グスタフと婚約を結ぶことになった。
それはこの世界の誰もが羨む話でありソフィも誇らしく思っていたのだが、ある日を境にそうは思えなくなってしまう。
これはそんなソフィが婚約破棄から幸せになるまでの物語。
※感想欄はネタバレを解放していますので注意して下さい。
※R-15は保険として付けています。
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています
婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~
甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。
その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。
そんな折、気がついた。
「悪役令嬢になればいいじゃない?」
悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。
貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。
よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。
これで万事解決。
……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの?
※全12話で完結です。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる