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しおりを挟む時間がない私は、まずレオにお使いを頼むことにした。
簡略でしか書かなかった手紙にレオは嫌な顔をすることなく、私が頼んだものをすぐに用意してくれた。
「お嬢様、レオ様から届いたコレは何なんですか?」
サラが大量に届けられた、小さな可愛らしい小包たちの入った箱を覗き込む。
令嬢たちの数が分からないって書いたら、ずいぶんたくさん送ってくれたのね。
これはありがたいわ。
これ見るまで考えてなかったけど、お金大丈夫だったかな。
あとでレオにちゃんと返してあげないと。
ああでも、私がアーシエのお金を勝手に使ってもいいものかどうかも迷うところなのよね。
私のお金ではないわけだし。
でもアーシエのために使ったお金なら、許されるかな。
「これね。令嬢たちへの賄賂」
「賄賂ですか!?」
素で驚いてくれるサラが本当に可愛い。
「サラにも一個あげるわ、賄賂」
「賄賂なんてもらって大丈夫なのですか。あ、いや、でもわたしはお嬢様の味方なのでいいのかな」
「あはははは。さすがにこんなにはいらないと思うのよね。でもレオが張り切って買ってきてくれたから。だから一個あげるわ」
「えええ。本当にわたしなんかがもらってもいいんですか?」
「ええ、もちろん。サラにはいつもお世話になってるし。とは言っても、大したものじゃないのよ。中身分からないから、好きなの選んで見て」
「あの、本当に……わたしこそ……お嬢様にお仕えすることが出来て幸せです」
「あはははは。コレぐらいで大げさすぎるわよ。今度はもっとちゃんとした物をサラにだけ送ってあげるからね。いつもありがとう」
私の言葉に泣き出しそうになるサラがあまりにも可愛くて、思わずぎゅーっと抱きしめた。
「うん。嫁に来て」
「どーうしたらそうなるんですか、お嬢様」
「え、ダメ?」
「それとこれとは別です。これ開けてもいいですか?」
赤いリボンの付いた小包を、サラは箱から取り出す。
そしてひとしきり上下左右から眺めたあと、目を輝かせながら私に尋ねた。
たぶんそんなに高いものじゃないはずなのに、こんなにも喜んでくれるなら本当にこっちの方がうれしいわね。
この反応が他の令嬢たちからも返ってくるといいんだけど。
中々なぁ。相手は貴族だし、どうなんだろう。
「もちろん、私もまだ中身知らないのよね。むしろ開けて見て欲しいな、中見てみたい」
「はい、お嬢様」
丁寧にリボンを解いていくと、中には小さな箱が入っている。
そして蓋を開けると、そこにはピンク色や鮮やかな赤い色のトッピングの付いたトリュフのようなチョコが四粒。
仕切られた箱の中にきちんと並べられ、見た目がとても華やかだ。
「わーーーーーー。こんなチョコ初めて見ました! すごい、すごーーーーい」
「そう? それなら良かった。レオに一番今流行っているお店で見た目が可愛らしい女の子が好きそうなお菓子を頼んでおいたの」
「あ、ここのお店聞いたことだけはあります。平民区と貴族区の中間にあるお店で、すごく安いお菓子からすごく高いお菓子まであるって」
「それはどうなの?」
「どうとは、えっと、どういう意味でしょうかお嬢様」
「んと、貴族令嬢にあげても喜ぶのかなーって思ってしまって」
貴族のイメージって超高級志向っていうか、平民と同じものなんて食べないイメージなのよね。
なのに平民と貴族の中間のお店ってだけで、貴族令嬢たちは毛嫌いしたりしないのかな。
「それがここのお店、入り口が完全に別なんです。で、とてもお客様思いの店で、平民でもきちんと対応してくれる上に貴族は特別待遇をするから、すごく人気なのですよ」
ああ、ある意味ここの店主はとても頭がいいのね。
入り口と対応を別にすることで差を付けて、特別感や優越感を貴族に抱かせてるんだ。
でもきちんと平民にも差別することなく、丁寧に商売をしている。
商品を分けることで、価格設定も変えてるっていうんだから、相当ね。
「すごく並ぶ上に、貴族側のお店も予約制だったり特注だったりと、中々すんなりは買えなくて」
「そこまで人気のお店なら、大丈夫そうね」
「でも、本当にこんなに高そうなお菓子をいただいてもよろしいのですか?」
「いいのよ。元々、余ったらここの離宮付きの侍女たちにあげようと思ってたから」
「お嬢様は本当にすごいですね」
「何もすごくないわよ~。だって、みんな一生懸命に働いてくれているんだもの。これくらい普通でしょう?」
「そんなことをおっしゃってくれるのは、お嬢様くらいですよ」
「でも考えて、サラ。もらったら、私のためにいーっぱいまた働かなきゃいけないのよ?」
サラの顔を覗き込み、私はいたずらっぽく笑う。
するとサラもつられるように、声を出して笑い出した。
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